文具で楽しいひととき
CATEGORY / ペン
「ケリー」がここ数年再び人気を集めている。「ケリー」と言えば、1971年発売の、年齢にして47歳という今やどちらかと言うとベテランなシャープペンである。カチンとキャップを付け外しする「ひと手間」がノック式全盛の中、新鮮に感じるのかもしれない。その「ケリー」がクラフトデザインテクノロジーによってリデザインされ、この度発売された。キャップはシルバー。もともとケリーにもシルバーカラーはあるが、それよりもホワイト具合がわずかに強い印象。キャップを外すとグリップ部分そしてペン単体の後軸はスッキリとしたホワイト。そして、最大の違いは中央のメタルパーツだ。本家ケリーは立体感のあるスクエアパターンだったが、今回はシンプルなラインだけで構成されている。このパターンは、クラフトデザインテクノロジーのトレードパターンである「真田紐」をモチーフにしたものだ。ケリーの中でもデザインのポイントになっている部分なので、印象の違いが際立つ。白は膨張色なのだが、このケリーはとてもスッキリとした印象に見えるのは、このシンプルリングのせいのような気がする。
*クラフトデザインテクノロジー シャープペンシル 038W(CDTケリー)2,500円+Tax
手前がCDTケリー、奥がぺんてるのケリー
真田紐をモチーフにしたというメタルパーツ
CATEGORY / ペン
自分の持っている万年筆を見ると、これはいつ頃どんな経緯で買ったのか、ということが思い出されます。万年筆はなんとなく買うというタイプのアイテムではなく、私にとって悩んで買うというものです。ですので、一本一本エピソードがあります。
このペリカン トラディショナルは、私がまだ社会人数年目の時に急遽買ったものです。急遽ということで記憶にクッキリと残っています。その頃、モンブランの164という細みの万年筆(バーガンディ)を常に胸ポケットに入れて仕事をしていました。あるとき、出張に行く時いつも携帯しているそのモンブランの万年筆をうっかり会社のデスクの引き出しに入れっぱなしにしてしまったのです。あるべき胸ポケットにいつもの万年筆がないというのは、なんとも心細いものがありました。下着を着けずに外出してしまったようなとでもいいましょうか。。とても不安な心持ちでした。そこで急遽近くのデパートに行って、買ったのがこのペリカンの万年筆だったのです。さすがに、同じモンブランの万年筆を買うお金は持っていませんでした。その時に買える、そして所有欲が満たされる万年筆として選んだのが、ペリカンのトラディショナルだったのです。値段はたしか8,000円くらいだったと思います。スチールペン先のわりにしなやかさがあって、気持ちよい書き味を楽しめる一本です。あとで気づいたのですが、ボディに「W.-GERMANY」と刻印されていました。当時、東西ドイツが統一して数年だったこともあり、西ドイツバージョンがまだ流通していたようです。
すっかりとペン先のメッキもはがれていますが、今も手放せない一本です。
CATEGORY / ペン
フリーアナウンサー堤信子さんがプロデュースした万年筆「レコルト」。三越伊勢丹「百年百貨」×サントリービール「~ザ・プレミアム・モルツ~ マスターズドリーム」×プラチナ万年筆のコラボによるものだ。万年筆のベースはプラチナ万年筆の「#3776 センチュリー」。
センチュリーでも数々のスケルトンボディをラインナップしているが、今回はブラウンスケルトン。キャップがややダークスケルトンという2トーンカラー。パイロット「カスタム823」のブラウンスケルトンと比べると、やや明るめの印象がある。そして、その明るさを引き立てているのがボディにちりばめられたラメだ。当初「ラメ」と聞いて、50歳目前の男性の私の手には合わないかもと感じていた。しかし、実物を手にすると意外とOKだった。とても細かいラメであるので、それほど主張してこない。あくまで持ち手だけが楽しめるくらいである。常にキラキラする訳ではなく、ふとした光の具合で輝くくらいの奥ゆかしさだ。
この「レコルト」には、「回り止め」というものが付いている。クリップの位置にあるものだ。一見クリップのようだが、クリップとしては使えないそうだ。あくまでも転がり防止のストッパー。そのためか、この「回り止め」パーツは限りなくボディに寄り添っていて、大きく出っ張っていない。ペン先はビールの麦の穂とホップをデザインしたオリジナル。デザインはハート穴周辺にまとまっていて、ペン先側には刻印がなくスルッとしている。個人的にはこうしたシンプルなペン先は好きだ。ペン先のしなりをより生み出すためにペン先の刻印をなくすことがあると、聞いたことがある。この「レコルト」もそうした効果があるかもしれないと、通常の「#3776 センチュリー」と書き比べてみたが、残念ながらしなりはいつものと同じだった。セットされているブラウンインクは、ボディとほぼ同じ色合い。濃淡がしっかり味わえる。
こうした限定万年筆というのは、日常使いがしづらかったりするものもあるが、これは、装飾としてのラメや回り止めはあるものの書き手の思考を邪魔させないバランスに整えられている。
*レコルト 37,000円+tax
CATEGORY / 展示会レポート
青山のPaul Smith SPACE GALLERYで開催されている「THE SECRET LIFE OF PENCIL」。ポール・スミス氏や坂本龍一氏が愛用している鉛筆の展示会だと聞いて勇んで行ってきた。てっきり、実物の鉛筆とそれによって描かれたスケッチなどもあるのかなと期待していたが、残念ながら愛用の鉛筆の写真だけだった。とは言え、色々な鉛筆との関わり方が垣間見えて楽しい展示だった。鉛筆削りでキレイに削っている方もいれば、ナイフでザクザクとオブジェのようにしている人もいたりと様々だった。一番の収穫はプロダクトデザイナーのフィリップ・スタルク氏がぺんてるのスマッシュ0.9mmシャープペンを愛用しているということ。またシャープペン派はもう二方いた。ダイソンのSir JAMES DYSONは、ロットリングの0.7mm、原研哉氏はカヴェコ スペシャルペンシル0.5mmだった。それから坂本龍一氏は三菱鉛筆のユニスターのBだという。ハイユニでないところがなんとも素敵だなと思ってしまった。
ギャラリー入り口の挨拶文にはこうあった。
「控えめで、常に縁の下の力持ちとして出しゃばらず、iPadの0.02%のコストでありながらこの誠実な友人は最新鋭テクノロジーと並んで沢山の物の誕生を密やかに牽引し、それでいてクリエーターたちの創造の中心を担っています」
黒鉛芯への愛情がいっそう深まる展示だった。
「THE SECRET LIFE OF THE PENCIL」
会期:2016年10月6日(木)〜11月13日(日)
Paul Smith SPACE GALLERY
公式サイト
坂本龍一 三菱鉛筆 ユニスターB
NICK PARK BEROL VENUS 4B
Sir PAUL SMITH EVERSHARP GOLD SEAL
PHILIPPE STARCK ぺんてる スマッシュ0.9mm
Sir JAMES DYSON ロットリング0.7mm
原研哉 カヴェコ スペシャルペンシル0.5mm
KEIICHI TANAAMI BEROL EAGLE COLOR
TOM DIXON REXEL BLACK EDGE
CATEGORY / ペン
11月21日に発売される新しいデルガード「Type-ER」。筆圧を強めると芯が引っ込み、ガイドパイプもスライドして二段構えで芯折れを防いでくれる「デルガードシステム」。今回のモデルでは、それに加え「デルイレーサー」という新たな機能が搭載されている。シャープペンに内蔵された消しゴムで消す時の動きにまったく無駄がないのだ。ノックボタンを取りはずす必要もなく、ノックボタンをクルクルとツイストして繰り出すことすらしなくていい。ただただ消しゴムで消そうと構えればいいのだ。ノックボタンの側を握って下に向けると、スルリと消しゴムが出てくる。いったん出てきた消しゴムはゴシゴシこすっても引っ込んだりしない(回転もしない)。消し終わって再び筆記体勢に入れば、私の役目は終わりとばかりに消しゴムは何もなかったようにスルリとノックボタンに収まっていく。この消しゴムの出た時だけ固定され、引っ込むべき時は引っ込むという動き、一体どんなメカニズムになっているのか。それを司っているのが、振り子と呼ばれる外側の銀色のパーツの内側にある小さな玉。それが下に降りきった時だけ受け皿に収まって固定される。これ以上言葉で説明してもどんどん分からなくなってしまいそうなので、ここまでにしておく。仕組みはともかく使う時に消しゴムが自然に出て固定され、使わない時は自然にしまわれるということなのだ。消しゴムが出て、ガードされたように固定されるという意味で、「デルガード」な消しゴムとも言える。個人的にはクリップがないのは少々残念だ。
*ゼブラ デルガード Type-ER 700円+Tax(替えの消しゴムが2個付き)
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トンボ鉛筆のシャープペン「モノグラフ」に超極細消しゴム(直径2.3mm)の「モノグラフ ゼロ」が登場した。従来の「モノグラフ」はクリップをノックする方式だったが、今回の「モノグラフ ゼロ」では、ノックボタンを押すスタイル。しかもそのノックボタンがふつうのシャープペンのようなスリムさ。見た目には消しゴムが内蔵されているようには思えない静けさがある。消しゴムは、そのノックボタンをツイストすると、極細消しゴムがグングンと出てくる。ためしに全部出し切ってみると、昔のロボットの手のようなパーツでわしづかみされているのがわかる。このように消しゴムをガッチリつかんでくれているので、消す時に消しゴムがクルクル回ってしまうこともなく安定の消し心地。消しゴムはほどよい硬さがあり、2〜3mmほど繰り出しして使うのがちょどよい印象。ちなみに、消しゴムを出したままノックをすると、少々指が痛いというくらいの硬さがある。
主役の消しゴムに目がいきがちだが、シャープペンの作りもなかなか。メタルグリップは細かなギザギザ加工があり、たしかなグリップが得られる。口金・グリップ共にメタル製のため、かなりの低重心設計。長時間筆記も快適。細かく消すことを得意としているので、手帳用などにもよさそうだ。
*トンボ鉛筆 「モノグラフ ゼロ」600円+Tax (シャープペンは0.5mmと0.3mmがあります)
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ペン先を繰り出す方法と言えば、ノックをするかボディをツイストするのが一般的。これはペン先にある大きなネジをひねって、ペン先を下に向けてスルスルと出してちょうど良い長さにしてネジを固定するというもの。書く時に邪魔じゃないのだろうかと心配してしまう。だけど、なんとも言えぬ魅力も感じてしまう不思議さがある。黒鉛芯タイプだけでなく、なんとボールペンタイプもある。
*パラフェルナリア Neri 8,000円+Tax
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グリップを取り外して好きな素材に着せ替えられる「ラミーアクセント」。一時期は日本で廃盤になっていたが、アルミボディで復活した。ボディがマットなシルバーと落ちついているので、用意されたグリップもウッドやブラックラバーなどシックなものが多い。これはリミテッドエディションのカラフルなグリップ。艶やかな光沢があってマットボディとの対比も美しい。アクセントのグリップは、よーく見ないと分からないレベルだが、わずかに樽状フォルムをしている。微妙なグリップポジションが選べる。これは多機能ペン。黒・赤・青のボールペンと0.7mmペンシル。シャープペンが0.7mmというところがうれしい。
*「ラミー アクセント」コラム
*「ラミー アクセント AL」公式ページ
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2016年1月21日に発売されるゼブラ「デルガード タイプLx」。一足先にサンプルをお送り頂いたので、インプレッションを。ボディはレギュラータイプよりも1cmほど長い。どこが長くなったかというと、それを特定するのが少々難しい。と言うのもノックボタンも長くなっているし、グリップ部分、そしてペン先も少しばかり長くなっている。それらの合わせ技で全体として1cm長くなっている。
一番の特長は、メタルグリップになったこと。ボディ全体がメタルっぽい雰囲気があるが、後軸は樹脂製。そのため重心はセンターよりもペン先側に来ており、ややというか結構しっかりとした低重心になっている。書いていて感じたのが、グリップの握り心地の良さ。グリップはレギュラータイプより少しばかり太くなっていてしっかりと握れる。しかもそのグリップが長いときている。先端側には幅の違う3つの緩やかな凹みがある。レギュラータイプでも同じ凹みはあるが、グリップが透明だったので、3段グリップのフォルムを目で捉えるのが難しかった。ブラックグリップだとそのシルエットがクッキリと表れる。その凹みひとつひとつに指先が気持ちよくフットして、グリップ位置の調整もしやすい。見えているものをしっかりと操作している安心感があった。さらにグリップの後軸側はフラットになっていて、かなりペンを寝かすライティングポジションになるが、この部分を握っても書ける。
最後に少々気になった点を。それはノックの「押ししろ」。「押ししろ」とはノックを押した時にスライドするところ。ここが6mmほどと結構な長さがある。なのにノックすると全部押しこめない。1/3くらいしかスライドできない。ならば、最初から短めにした方がよかったのではないかと個人的には思ってしまう。ちょうどセンターにシルバーのリングがあるが、それと同じくらいの幅にした方がバランス的にもよかったのではと感じた。それと、このノックキャップが引っ張るとすぐに外れてしまう。なにかの拍子にはずれやしなかと心配になってしまった。
色々と書いたが、ボディの質感と握り心地はとてもいいものがあった。上質さが味わえる「デルガード」だ。
* ゼブラ「デルガード タイプLx」1,000円+Tax
* オールアバウト 「デルガード」コラム