文具で楽しいひととき
ぺんてる
グラフギア500 0.9mm
このペンシルは、あまり好きではなかった。ペン先のフォルムがどうしても好きになれなかった。ローレットグリップまではいい。その先がなんだかはっきりしないなぁと。いったん凹んでさらに膨らんで、最後には細いテーパーになっている。グラフ1000のようなカクカクとした規則性があると見ていて安心感がある。でもこれは何か唐突感がある。というか唐突感しかない。なのでずっと私の手はこのペンシルに伸びることはなかった。
あるとき、YouTubeを見ていてこのグラフギア500を手にノートを書いている姿が映し出された。YouTubeでもTMCMでもペンが登場すると私の文具アンテナが激しく反応して、そのペンがなんであるかを探りたくなる。少しだけ見えているノック部分だったりクリップやペン先から、あぁあのペンだなと判別していく。
そのときはあの独特なペン先フォルムからグラフギア500だとわかった。0.5mmを手にしていた。最初はハスに構えて見ていたが、だんだん気になってきた。その人の書き姿がとても心地好さよさそうだったのだ。ずっとそのペンシルを使っているというペンと手のしっくりとした関係性が画面からにじみ出ていた。ハスに構えていた私は前かがみになった。そんなに書き心地がいいのなら、ひとつ私も試してみようかと思いはじめた。
そしていつものホームセンターに行った時に、フックに吊るされているそのペンシルをカゴに入れた。
■ それほど大袈裟でない低重心グリップ
このペンシルの最大の特徴は握った時にペン先が自然に下を向く低重心である。でも実際にノートの上で書き始めて数日経ったところで、その特徴である低重心を私は不思議と感じていないことに気づいた。書くのをいったんやめて、手の中でやじろべいのように重心を調べてみた。確かにペン先側に重心はあった。なのに書くとその存在が消える。
これはどうしてか?
と同時にふつうに書きやすいぞ。それまで使っていたP209から試しにこのグラフギア500に持ち替えてみた。ほんの試しのつもりで。しかし、グラフギア500で書く日々が一週間、二週間とどんどん長くなっていった。
自分の手がグラフギア500を気に入り始めていた。
■ 適切な低重心
書いていて感じるのは、ペン先をスバヤク走り回せる心地よさだった。そこに重さというものは全く感じなかった。思考のスピードに合わせて軽快にペン先を走らせることができた。もたつくことはなかった。
低重心だからペン先が重いはずなのに、ペン先を走らせやすいとは一体どういうことなのか。きつねにつままれているような気持ちになった(表現が古い)。
よくよくそのグリップからペン先にかけたメタルパーツを観察した。私の目はグリップの先の凹みに目がとまった。私の嫌いなフォルムだ。
ここから先はあくまでも私の憶測となる。
低重心を司っているのはグリップがメインなのだろう。グラフ1000あたりと比べてもこのグリップは明らかに太い。しかもフルメタル。私が書いていて感じるペン先の軽快さはその先のペン先の軽量化によるものだと思う。グリップの先はいったん凹み、その先は再び膨らむ。短いながらもテーパーがかかっている。最後のペン先も細いテーパーという具合だ。
私が毛嫌いしていたペン先のフォルムがペン先を走らせやすくする軽量化に繋がっていたのだろう。たぶん。。
そう思えた途端、このフォルムが好きになれた。
ローレットグリップからペン先に至るまで一つのパーツで作られている(ガイドパイプは除く)。書いていて安心感があるのは、この一体感というのも影響していると思う。
*
グラフギア500を買ってから、それまでずっと使っていたP209をいったんペンケースにしまった。ちょっと試しに使うくらいの軽い気持ちでグラフギア500を手にしはじめた。それがどんどん長引いていき、今もまだグラフギア500を手に仕事を続けている。さらにはもう一本買った。
ペンケースに収まったP209の視線を背中に強く感じている。
ぺんてる グラフギア500 0.9mm
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