2021.11.02(493)

「ホームオフィスの茶室化」

ホームオフィス テレワーク

11年ほど使ってきた事務所をやめて、自宅に仕事場を本格的に移した。つまり、ホームオフィスを作ってみた。ちなみに事務所をやめることにした一番の理由はコロナ禍で来客やMTGがほとんどなくなってしまったから。MTGのほとんどはzoomなどで行いリアルで対面することがすっかり減ってしまった。すると、事務所の役割は黙々と一人で仕事をすることだけの空間になっていった。それならば自宅でも十分できるではないか、そう強く思うようになった。ホームオフィスで働き始めて既に7ヶ月ほどが経った。何か不便なことがあるかと言うと、自転車通勤がなくなり日々の消費カロリーが減ったくらいだろうか。それ以外は今のところ全くなく、とても快適に仕事をできている。

そのホームオフィスを作り上げていく上で、私が一つ強く意識したことがある。それは「茶室」の考えを取り入れたことだ。

ホームオフィス テレワーク元々は子供部屋だったところを子供達が巣立ったことでホームオフィスに

■ 一つのことに向き合う茶室

茶の本

私が理想とする茶室はとてもコンパクトなスペース。コンパクトであるのに全く小ささを感じさせない落ち着いた空間が茶室には展開されている。たとえば、床の間には花や掛け軸といった客をもてなすものが一つだけ飾られている。色々なものではなく、あくまでも一つだけだ。

「茶の本」(岡倉天心著・立木智子訳)の中にこういうことが書かれている。

『異なった音楽を同時に聞くことはできないように、美を本当に理解するにはある一つの主題に集中しなければなりません。ですから茶室のインテリアは西洋のそれとは違います。』

一度に一つのものしか鑑賞できない。だから床の間にはひとつのものだけを飾る。さらに言うならば、茶室という空間はお茶そのものを楽しむという、ただただそのためだけの目的に絞られている。

■ デスクの茶室化

ホームオフィス テレワーク

茶室と仕事場との間には共通点を見出すことができる。私たちの仕事も一度にひとつのことしかできない。マルチタスクというワークスタイルもあるのだろうが、私はシングルタスク派。色々なことを同時にやるのではなく、ひとつの仕事にじっくりと向き合い取り組んだ方が結局のところ効率がいい。そして何よりその方が集中できる。また、一度に一本のペンしか握れないということもそうだ。

そこで、デスクをひとつひとつの仕事に集中して取り組める空間にしてみた。実はとても簡単なことで、仕事に必要なものだけをデスクに配置して、不必要なものを一切置かないようにした。「何もない空間」をデスクにタップリと設けてみた訳だ。

たくさんの仕事道具があった方が一見能率が上がりそうだが、私はそうは思わない。これはあくまでも私特有な考え方かもしれないが、私はこう思う。

ひとつひとつのモノからは何かが発せられているように感じるのだ。モノがたくさんデスクにあると、気にしないつもりでいても、そのモノが気になってしまう。そのモノから知らず知らずのうちに影響を受けてしまうからなのだろう。ひょっとすると、モノが何かを発しているのではなく、私の方がモノがそこにあると、それに反応してしまっているのかもしれない。考えてみると私たちの生活や仕事というものは、何らかの刺激を受けて、そしてなんらかの反応をし続けている。MTGで決まったことを受けて次の行動に進んだり、ネットで何かの情報を見て何かを感じたり、その繰り返しである。だから刺激を受けるモノが周りにたくさんあると、どうしてもその影響を受けてしまう。以前、テレビで見てハッとしたことがあった。とある舞台の裏方さんが話していたことだった。ある演劇でとても大切なシーンで照明を落とすという仕事をその人が担当していた。決して間違えてはいけないので、照明を消すスイッチだけを残して、それ以外のスイッチをテープでもはや操作できないように隠してしまっていた。こうすれば、その時にどんなに慌てていても目の前に一つのスイッチしかないので間違えようがない。そんな話だったと記憶している。たくさんのものが目の前にあると私たちは、ほんのわずかであっても影響を受けてしまうとつくづく思った。茶室には何もないので、目の前の人、そしてお茶に集中できる。

それをデスクの上で実現している。茶室を取り入れる言っても、何も床の間を設けるとかそういうことではない。何もない空間に身を置いてひとつのことに向き合う、そういうことである。

■ では仕事道具はどうするか

ホームオフィス テレワーク

デスクの上には、PANTAというブックエンドにノートや書類を置き、その手前にポスタルコのツールボックスを横にして開いたままにしている。この中に日々の仕事で必要なペン類を最小限に絞って入れている。そこから今の仕事に使うペンを木のトレイに置いてスタンバイさせている。あとは、ギブソンホルダーにフレームマンスリー手帳を立てて、iMacの左下にはその日の予定を書き込んだ「時計式ToDo管理ふせん」を貼ってスケジュールがすぐにチェックできるようにしている。基本それだけだ。余計なものがないおかげでキーボードの手間にはたっぷりとまっさらな空間が広がっている。ここで仕事をすれば、余計なものは一切目に入らない。

ホームオフィス テレワーク

では、それ以外の仕事道具はどうしているのかと、疑問に思われるかもしれない。たとえば、ハサミやホチキス、大きなふせんやテープなどだ。それらはデスクから3mほど離れたところにある本棚に置いている。ホチキスをする書類があれば、3mほど離れた本棚にトコトコ歩いて行きカチャリとホチキスを綴じてデスクに戻る。ハサミもテープも同じように本棚にその都度行って行なっている。わざわざそんなことをしなくてもと思うかもしれない。でも、それによりデスクにはたまにしか使わないモノであふれかえることがなくなるのだ。

ホームオフィス テレワーク

ホームオフィス テレワーク



日々の仕事で必要となる道具は人それぞれだ。本当に必要なものだけをデスクに置いて、それ以外は仕事中の視界から排除してしまう。

デスクは物の置き場所ではなく、仕事に集中して取り組む場所である。そう考えたならば、そのために特化した空間にしたほうがいい。デスクをひとつのモノ・コトに向き合える空間にしていくのだ。

茶の本
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