2012.10.23(266-3)

「PWチャイナ2012 3」

ペーパーワールドチャイナ

2012 展示会レポート

■ 日本未上陸のデザイン手帳

午前中から会場を歩きはじめたホール1も夕方16:00頃となり、残すところあと通路2本だけとなった。私の計画では初日には、このホール1は全てに見終えておきたかった。ひとホールだけとはいえ、展示会場を1日ずっと歩いていると、さすがに疲れてくる。午前中は軽やかだった足もすっかりと重くなり、この時間になるとよっこらしょと持ち上げつつ歩いているという状態。

そんな中でスタンドに収納されたカラフルな手帳が目に飛び込んできた。それを見たとたん足は急に軽くなり、足早に駆け寄った。「PLUSFILE」というブランドの手帳シリーズ。

ペーパーワールド チャイナ 2012 展示会レポート

手の平サイズと大きなサイズがある。カバーはレッドやパープルなど色の種類としてはカラフルなのだが、その一つひとつは落ち着いた色合いになっている。

ペーパーワールド・チャイナ2012 レポート

ますます気になる。聞けば、この手帳はイギリスブランドのもので、このシリーズはまだできたてホヤホヤだという。こうしたはじめて見る文具は、取材の疲れを一掃してくれる力がある。ポケットサイズを手にすると MOLESKINE よりもややスリムで縦に長い印象がある。

まずまず高級感のある合皮カバーを開いてみると、ヨーロッパの手帳でよく見かけるプラスチック製のリング綴じなっている。つまり、中の手帳は差し込み式。紙面は目次ページから始まり、その後に続く紙面にはページが全てふってある。

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このリング綴じを差し込むタイプは、「ニュートン」という。中にはニュートンのしおりが付属されていた。

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それとは別のPU 素材のソフトタッチなカバーの方は表面には細かな凸凹がある立体感のある作り。こちらは先ほどのものと違って差し替えができない綴じ手帳スタイル。

ペーパーワールド チャイナ 2012 展示会レポート

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この小さい方のサイズは「アインシュタイン」と言うそうだ。やはり、しおりが付いていてその写真は「アインシュタイン」になっている。

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そのラージサイズが「ダーウィン」。紙面は無地、横罫線、方眼そしてドット罫があり、カバーにはペンホルダーも付いていて機能性も考えられている。

ペーパーワールド チャイナ 2012 展示会レポート

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カタログで確認したところによるとはじめに紹介したリング綴じの「ニュートン」だけは無地のみの展開となっていた。個人的にはこのリング綴じなっているレッドタイプが特に気に入った。価格を聞いたらかなりお手頃な値段だった。

海外の展示会で値段を聞くと、ほとんどのメーカーは、卸値の値段を言ってくる。いやいやそうではなく、ショップで販売してる値段は?と聞いても多くのメーカーはその価格についてはわからないという返事が返ってくる。日本ではあまり考えられないことだ。その卸値を聞いた範囲だが、たぶん最終価格は比較的リーズナブルなのではと感じた。日本でもぜひ展開して欲しい手帳だ。

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■ 日本出展社も頑張っていた

反日デモという時期ではあったが日本の文具メーカーもしっかりと出展していた。

しかし、その数は昨年に比べとやはり少なかった。ブースには日本人の方もいたので、色々とお話を聞きしてみた。異国の地で特にこうした緊張状態のタイミングで、日本の人と話すのは、心励まされるものがある。開口一番双方の口から出てきたことは、「大丈夫でしたか?」という言葉だった。つまりそれは、この反日デモの中上海にやってきて大丈夫でしたか?という意味である。

日本で報道されているよりも、実際の上海はあまり危険な印象ないということで私たちの意見は一致した。しかし、自己防衛策として「夜は一人では決して出歩かない」、「街中で日本語はできるだけ話さない」、「日本人だと少わかるようなスーツやネクタイ姿で外出しない」など自らの身を守る行動はとっているとのことだった。

さて、その中の一社、プラチナ万年筆では、日本でも展開している様々な筆記具がズラリと並べられていた。中でもここ数年低価格の万年筆「プレピー」が中国で人気が高まっているという。

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中国はもともとボールペンというと、油性ではなく水性やゲルインクタイプが一般的。そのため同じ水性インクの万年筆も馴染みやすいのだという。

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以前にも聞いたことがあるが、中国の一部小学校では万年筆を使って書き方を教えるというところもあるそうだ。

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また、5,000円くらいの「いたち」の毛を使った高級筆ペンも人気だという。ちなみに、この筆ペンは販売時には、特殊な液体を入れたカートリッジがセットされている。これは毛筆を保湿させておくためのものだという。

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買って使う時は、それを外して専用のインクカートリッジをセットする。

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カール事務器ではつい先日の ISOT で発表していた個人情報保護ツール「切り取~る」が早くも展示されていた。

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中国でも個人情報保護の意識が徐々に高まっており、すでに会社ではかなりシュレッダーが普及し始めている。

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個人レベルでは、ダイレクトメールはまだ手で破るだけということが一般的だそうだ。「切り取~る」のような商品によってそうした潜在ニーズを堀り起こしていく狙いがあるという。

■ 寒い冬には助かるアイテム

通路を歩いていると、デスクマットを専門にしているらしきブースが見えてきた。

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ブースの壁にはデスクマットと一緒になぜか麻雀卓のマットまであった。通訳の姚さんに看板の文字を訳してもらったら、暖かくなるデスクマットの専門会社ということだった。

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なるほど、デスクマットの端っこからはコードが出ている。「ホットカーペット」ならぬ「ホット デスクマット」という訳だ。デスクマットに手を触れると、確かにほんわかと暖かい。

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中国は地域によっては冬はとても寒い。寒い中で勉強や仕事する時に、これを机の上に敷いて使うのだという。勉強や仕事をする時は、確かに手は机の上に置かれている。ノートに何かを書く時、はたまたキーボードを打つ時に手をじんわりと暖めてくれる。寒さで手がかじかんでうまく動かせない状態だと、効率も上がらない。

先ほどの麻雀卓のマットもやはり暖かくなるようになっている。寒い冬には確かにこうしたデスクマットは便利かもしれない。この「暖かくする」ということでひとつ思い出したことがある。

以前、通訳の人にこんな話を聞いた。中国の人は健康のために体を温める、つまり、体を冷やさないということをとても大切にしているという。だから、中華料理のほとんどは暖かいものばかりだと話していた。日本のようにざるそばなど、冷えたもの食べるという習慣はあまりない。そういえば、中国でビールを頼むと日本のようにキンキンに冷えていることは滅多にない。

そういう意味でも、この手を暖める「ホットデスクマット」は中国らしい商品といえそうだ。実際、昨年中国広州で11万枚も売れる大ヒットになったという。

■ ダブルクリップの進化形

展示会場の通路をひたすらクネクネと歩き続け、いよいよ2ホール目の最後の通路となった。ペーパーワールドチャイナの過去の例から言って、この最後の通路には意外な掘り出し物があることが多い。ゴール間近ということで、ラストスパートでついつい足早になりそうなところをじっくりと歩みを進め、両サイドのブースに細心の注意を向けてみた。

すると、男性が1人椅子に座っているやや地味なブースがあった。展示台の上にはダブルクリップだけが静かに並べられている。直感的に何かを感じ、近寄ってみた。そのダブルクリップが、私たちが普段見るのと違うスタイルをしている。

ダブルクリップというと、黒い鉄の面があるものだが、これにはそれがない。指でつまむワイヤーフレームの部分のように、紙を挟むところもフレームだけで形作られている。

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なぜこのような形にしているのかと聞くと、その男性はよくぞ聞いてくれたと椅子から立ち上がり説明をし始めた。彼はパンフレットにそのダブルクリップをとめて、それを私の前に出した。留め具がワイヤーになっていることで、んだ書類の文字を隠さない。これこそがこのクリップの最大のメリットだと力説した。なるほど確かにこの発想は面白い。

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商品名は「スケルトンクリップ」という。すでに中国、アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港で特許を取得しているという。紙を挟む部分が面から線になったことで、挟む力が弱くなっているのではと思って実際に私も書類を挟んで試してみた。

フレーム構造になっているとはいえ、それらをつなぐ中央部分にはバネ効果を生み出すパーツが付いている。ほんのわずだが、弱くなっている気がした。だが、クリップとしては十分な強度にはなっているようだった。

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やはりペーパーワールドチャイナの最後の通路はあなどれない。

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