2008.01.08(146)

「そぎ落として本質で勝負」

ミドリ

MDノート

デザインフィル ミドリ MDノート 

■「MD」とはミドリダイアリー用紙

紙製品の中で最も重要なもの、それはなんと言っても、中に使われる紙だろう。ミドリは、その紙質にこだわる中で、どうしても既製の紙では満足できず、特別に紙を抄いてオリジナルを作ることに行き着く。そして40年ほど前に同社を誇る紙「MD用紙」が生まれた。MDとは、ミドリダイアリー用紙という意味。

インクがにじまず、筆跡が裏面に透けないなど書くための紙としての本質的な部分に磨きをかけたものになっている。以来、このMD用紙は、ダイアリーを中心に様々な紙製品に使われ、同社の紙製品をずっと影で支え続けている。

色々な商品に使われながらも、これまで、MD用紙はどちらかというと黒子的存在で、あまり表に出ることはなかった。しかし、トラベラーズノートでMD用紙が使われた頃からだろうか、その書き味の良さが多くの人たちに知られるようになり、MD用紙が一挙に表舞台に出るようになってきた。

そんな中、MD用紙を前面に打ち出したノートがこの程発売されることになった。その名も「MDノート」である。

デザインフィル ミドリ MDノート 

今回の主役は、あくまでも中のMD用紙であることを心得た表紙は一歩と言うか、数歩引き下がり、引き立て役に徹しているようだ。クリームの表紙には何も印刷されておらず、控えめに「MD PAPER made in Japan」とあるだけ。

デザインフィル ミドリ MDノート 

このシンプルな外観には、ノートとしては珍しくパラフィン紙でくるまれている。パラフィン紙とは、よく古本屋さんで豪華な本をくるんでいる半透明のシャカシャカとした紙のこと。

デザインフィル ミドリ MDノート 

このカバーがあることで、ちょうどオブラートに包まれたように中の無垢らしさが透けて見えるようになっている。引き立て役とは言え、シンプルになりすぎない、程よい演出だ。このオブラート効果を使って、内側にステッカーを貼ったり、名前を書くというのもいい。

あまりはっきりと見えるよりも、こうして、ほのかに見えるという方がむしろ素敵だと思う。

デザインフィル ミドリ MDノート 

サイズは、文庫サイズ、新書サイズ、A5サイズの3タイプ。先ほどのパラフィンカバーの演出もあって、ノートでありながらより本らしいスタイルになっている。

デザインフィル ミドリ MDノート 

同時に、本のサイズは手にしっくりとくるので、普段から持ち歩くノートとしてもバッチリ。本らしいということで言えばもうひとつ。このノートには、ひものしおりが付いている。「付いている」と言う表現はまさにこのためにあるのだろうという感じで、まさに背表紙にペタッと付いているだけ。

と言っても、本来のノートや本のしおりもこの様に付けられているそうだ。普通は、その上にカバーが貼られているので、普段私たちが目にすることはない。こうして露わになったしおりは、今回のようなまっさらな外観の中で唯一の色となって、ひときわよく映えている。

デザインフィル ミドリ MDノート 

デザインフィル ミドリ MDノート 

背表紙も、メッシュ状の製本シールが露わになったままだ。こうした無垢なスタイル自体はとてもスッキリとしていていいのだが、困るのは、背表紙に書き込みが出来ないこと。しかし、付属品として、背表紙に貼り付けられるインデックスシールが用意されている。これを付ければOK。

デザインフィル ミドリ MDノート 

また、このインデックスシールは、しおりをしっかりと固定しておくという役割もある。しおりを頻繁に使うという方は、念のため、貼っておいたほうがいいかもしれない。

デザインフィル ミドリ MDノート 

表紙はほどよい厚みがあり、ノートとしてのしっかり感とページのめくりやすさのちょうどいいところに落ち着いている。ページをめくると、見開き性の良さに驚かされる。

デザインフィル ミドリ MDノート 

ページをめくっているというよりも、箱の扉をひとつひとつ開けているような感じで、ページの根元からしっかりと広がりだす。

デザインフィル ミドリ MDノート 

これは、糸かがり綴じという製本式によるもので、どのページを開いてもとじ込みの部分が必要以上に丸くふくれあがらず、フラットになってくれる。

■ 見開き性が大変良い

このフラットな見開きは、今回、余計なカバーを付けなかったことも、どうやら功を奏しているようだ。ページを開いた時の背表紙を見てみると、完全に折り込まれているのがわかる。

デザインフィル ミドリ MDノート 

デザインフィル ミドリ MDノート 

実際に書くにあたってはこのフラットさ、とりわけ万年筆でその良さが味わえる。そもそも万年筆は、ペン先と紙のあたる角度ひとつでその書き心地は微妙にかわってしまう。特にノートでは、綴じ部分の凹凸があまりにも大きいと、万年筆を持つ手が書き進めるたび、そこを上がったり下がったりするので、どうしてもペン先の角度にも影響が出てきてしまう。

そういう点で言うと、私は、万年筆の書き心地をたっぷり味わえる紙は机の上で完全にフラットになる原稿用紙だと思っている。さすがにそこまでとは行かないが、このMDノートはかなり近い状態を作り出してくれる。

デザインフィル ミドリ MDノート 

今回用意されている紙面は、横罫線タイプと無地の2種類。シンプルな外観にあわせて中も無地で楽しみたいところだが、横罫タイプも捨てがたい。

この横罫は、一般のものと違って、ちょうど真ん中の罫線だけがひときわ太く印刷されている。

デザインフィル ミドリ MDノート 

見開き性の良さを活かして、2ページで4分割に、または上下で横長に2分割と分けたりと、単なる罫線ということを超えて色々と違った使い方ができそうだ。

次にMD用紙の実力の程を改めて見てみることにしよう。手持ちの色々なインクで書いてみたが、書いたままの筆跡を気持ちよく残すことができる。太字の万年筆で書いても、にじみは見られない。

デザインフィル ミドリ MDノート 

デザインフィル ミドリ MDノート 

書いた裏面を見てみても、かすかに見えるくらいで裏面筆記の際に、気になることはほとんどない。

この文字の透けずらさは、紙の不透明度というものだそうで、試しに太めの万年筆で塗り絵でもするように、ゴシゴシと同じ所を塗ってみたが、結果はやはり大丈夫だった。

デザインフィル ミドリ MDノート 

デザインフィル ミドリ MDノート 

これなら、太字好きの方でも気兼ねなく使うことができそうだ。真っ白な純真無垢な表紙は、見ていてとても心が洗われるものがある。しかし、使っていくとどうしても汚れてしまう。また、パラフィン紙は大変弱い紙なので、破れてしまう可能性もあり得る。

そうしたものも、使い込んだ味と見ることもできるが、どうしても気になるという方のために、オプションで透明のビニールカバーが用意されている。

デザインフィル ミドリ MDノート 

せっかくなので、パラフィンで包まれた上からこのカバーを付けると、無機質なビニールの風合いがやや和らげられる。

デザインフィル ミドリ MDノート 

【パラフィンなしで、ビニールカバーをした状態】

デザインフィル ミドリ MDノート 

【パラフィンの上に、ビニールカバーを付けた状態】

しかし、私は、当面はパラフィンだけの味わいをたっぷりと満喫して、その後で、カバーへとステップアップしていこうかと考えている。ミドリが誇る書き味にこだわったMD用紙を使った、今回のMDノート。

デザインフィル ミドリ MDノート 

主役は中身とばかりに、外観は極限までシンプルに徹して作られている。昨今のデザインノートを見慣れてきているせいか、とても新鮮に映る。

何より、こうした上質な紙のノートが1,000円を切る価格で手に入るのは、とてもうれしい。普段使いのノートとして気兼ねなく使うことができる。いい書き味というものは、なにも特別な時だけでなく、普段の仕事や生活の中でももっと楽しむべきなのだと思う。

そんな書くことの楽しさを改めて感じさせてくれるノートだ。

* ミドリ MDノート
文庫サイズ 600円、新書サイズ 700円、A5サイズ 800円(いずれも+Tax)
□ MDノート[A5] 横罫は、こちらで販売されています。
MDペーパープロダクト

*記事作成後記 2009年3月3日
しばらく、MDノートを使っていて感じたのですが、パイロットの万年筆ブルーインクは、ほんのわずかにインクが裏面に抜けることがありました。

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