2025.11.18(595)

「ペンシル芯、HB or B ?」

ぺんてる

アイン0.9mm BLACK

シャープペン 芯 0.9mm

好きな文具というものはある。それを言葉で説明するのは難しく、ざっくりと言うならば、このpen-infoで紹介してきたものということになるだろうか。好きということで最近こんなことも感じている。それは好きな文具の細かな仕様が時とともに移り変わるということなのだ。具体的に言うと、たとえば万年筆の字幅がそうだ。昔はMから使い始め、ある時からなめらかな書き味を求めてBばかりを選んでいた。実際所有している万年筆のB率がやや高めだ。そして今はFが好きになっている。字幅という波を泳いできた。



そして黒鉛芯でも移り変わりがある。鉛筆は2B→B→F→HBという流れを辿っている。なめらかさから硬さへという波だ。今、鉛筆はHARD BLACK(HB)に落ち着いている。09ペンシルの芯もほぼ同じような流れを辿ってHARD BLACKにしていたが、今BLACK(B)という新たな波に乗っている。

鉛筆 硬度 比較

今回は私が仕事で常用している09ペンシルの硬度について書いてみたいと思う。

■ 09ペンシルは濃さを優先

同じHARD BLACKなのに鉛筆と09ペンシル芯とでは書いた筆跡の印象が違う。鉛筆に比べ09ペンシル芯の方がやや薄目であった。書いた文字が自分に訴えかけてくるインパクトというか、刺激が少し弱いと感じるようになってきた。私は09ペンシルをノートに書くときに使っている。商品企画を考えたり、YouTubeで話す構成を練ったりと主に考えるときに手にしている。書いたものが薄いと考えるという行為まで薄ぼんやりしてしまう。

鉛筆 シャープペン 芯 0.9mm 硬度 比較

鉛筆のHARD BLACKは今の私にもちょうど良いのに、なぜか09ペンシルだと薄く感じるのだろうか。それは多分鉛筆芯とペンシル芯の素性の違いのためだろう。鉛筆芯は基本的に黒鉛と粘土で作られている。一方ペンシル芯は上記に加えて合成樹脂が含まれている。細くても折れづらくするためだ。これが入っているから鉛筆とは少し違うと私は勝手に想像している。

スナップパッド HB 0.9mm
0.9mm HARD BLACKで書いた紙面

■ 09BLACK生活

シャープペン 芯 0.9mm 硬度比較

そこで09ペンシルは一段階濃いめのBLACK(B)の芯を入れることにした。筆跡がやや太く、そして何より黒くなった。BはBLACKであるとつくづく感じる。書き味も幾分なめらかさがある。こう書くとBLACKはいい事ずくめと思われるかもしれない。でもそうとも言い切れないものがある。なめらかで太く書けるということは、もう一方で細かな文字が少し書きづらくもなる。たまに細かく注釈を入れることもある。その時はやっぱりHARD BLACKがいい。なので私はHARD BLACK芯を入れた09ペンシルも別に用意することにした。パッと見た目でわかるように、P209にHARD BLACK芯を入れている。そしてグラフギア500の方にはBLACKを入れ、硬度表示をBに切り替えた。

鉛筆は2BLACKから始めて、だんだん硬い方へ行きHARD BLACKで落ち着いた。09ペンシルについてはHARD BLACKまでたどり着いたが、BLACKに後戻りした感じだ。一見無駄な流れのようにも思えるが、私には大切なステップだったと思っている。日々の仕事でHARD BLACKを09ペンシルに入れて書いて、数ヶ月にわたって手と脳で感じてきた。その上でこれはちょっと違うかも。。。と私は判断した。遠回りのようだが、この工程が文具を納得して使っていく上では大切なことだと考えている。実際に使って自分で決めていく。人の意見や評判に左右されずに自分の実体験を頼りにしていくのだ。一番頼りになるのは自分の感覚だけだ。

スナップパッド 0.9mm B
0.9mm BLACKで書いた紙面。明らかに筆跡の濃さが違う

シャープペン 芯 0.9mm



今はこんな感じで09ペンシルにはBLACKを、鉛筆はHARD BLACKで落ち着いている。これもあくまでも今の私にちょうど良い仕様にすぎない。今後このやり方も変わっていくことだろう。以前はよく私にはこれだ!と妙に力を入れて決めつけすぎていた。自分の定番を決めることに目くじらを立てていたのかもしれない。でも、あまり決めつけすぎると、自分と文具との関係が窮屈なものになってしまう。変えてもいいし、変えなくてもいい、その時にちょうど良いものを探っていけばいいと今はおおらかに考えている。波に揺られるようにゆったりと向き合っていけばいいのだ。

ぺんてる アイン 09芯 BLACK
ぺんてる グラフギア500
ポスタルコ スナップパッド

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