2022.03.01(501)

「カートリッジインクはどれくらいで使い切れるか」

パイロット

カートリッジインク ブルー

パイロット カートリッジインク ブルー

文具を使っていく上で、自分なりの目安があるとうまく付き合っていける。

ここで言う目安とは、その文具を私はどれくらいで使いきっているのかということである。文具を使い切ると小さな喜びがある。誰に自慢する訳でもなく、自分の中だけでひっそりと、そしてじんわりと味わう喜びだ。使い切った時にいつも考えるのが、どれくらいで使い切ったのだろうかと。以来、私は新しい文具を使い始める時にはその日付をつけるようになった。すると身の回りの文具を使い切る期間が徐々に見えてきた。たとえば、「すぐログ」は早いと1ヶ月半くらいで使い終わり、少しゆっくりした場合は2〜3ヶ月というときもある。つまり1〜3ヶ月。1本の鉛筆はおよそ6ヶ月くらいだった。スナップパッド式のノートは1ヶ月ほどというペース。なんとなく想像していたより意外と早いなとか、ゆっくりだなという新鮮な驚きがある。そして、今使っている文具は大体これくらいで使いきるから、そろそろ補充を考えていこうという「文具計画」を立てていくこともできるようになった。

■ カートリッジインクはどれくらいで使いきっているのか

パイロット カートリッジインク ブルー

最近「瞬記」を書いていることは、このpen-infoでも何度なく触れてきた。パイロット743 EFを育てるべく、日々使っている。それまで使っていたコンバーターは一旦外して、今はカートリッジインクを入れて使っている。たくさん持っているカートリッジインクをひとまず使い切ってしまいたいと思ったかったからである。何本ものカートリッジインクを立て続けて使っていく中で、1本のカートリッジインクを私はどれくらいで使いきっているのかがやっぱり気になってきた。

パイロット カートリッジインク ブルー

そこで、調べてみた。

まずはスタートラインを決める必要がある。日々「瞬記」を書いている中で、カートリッジインクを完全に使い切るところで新しいカートリッジインクを入れていく。ちなみにボディを分解して外から見たところではカートリッジの中には全くインクは残っていないように見えて、まだ書けるという状態がある。これはペン芯の方にまだインクが残っているからなのだろう。私は文字がかすれて書けなくなるまで完全に使いきり、その上で新しいカートリッジインクをセットするようにした。ここをスタートラインとする。

パイロット カートリッジインク ブルー

「瞬記」には、ここでカートリッジインクを補充したと明記しておく。かすれて薄くなった筆跡が一気に濃いブルーに変わっていくので、筆跡の色の変化を見ただけでここがスタートラインであることが比較的簡単にわかる。

■ ひたすら書いていく

パイロット カートリッジインク ブルー

あとはひたすら書いていく。この時に私が使っていたのは、Touch&FlowのB6ノート。毎日8ページの「瞬記」を書いていった。数ページ書いてはボディをクルクル分解してカートリッジを照明にかざして残量をチェックしていく。私が使っているEFは線香花火のように繊細な筆跡なのでそんなにインクは減りはしないだろう、そう思っていた。でもチェックしてみると、みるみるとまではいかないが、あれ?さっきより少し減ったかなと思えるぐらいだった。一気呵成に4ページくらい書き、再び確認してみるとインクの減りと同時にカートリッジの中に気泡みたいなものがいくつも生まれていることがよくあった。万年筆は書いていくことでカートリッジからペン芯、ペン先を通じてインクが出てくる。それに合わせて、同じ分だけ空気を取り込んでいる。それを司っているのがペン芯にある「空気溝」。一気に書くことでその空気が取り込まれたのだろうか。そんなことを見られるのも楽しい。

パイロット カートリッジインク ブルー

来る日も来る日も書いてはカートリッジを確認するということを続けていった。そしていよいよ近づいてきた。カートリッジの中にはもはやインクが見えない状態が。カートリッジの側を下に向けても、インクがたら〜と垂れてくることもない。それでもまだ文字は書いていける。743のペン芯はインク保持力が結構あるようで、この状態でも余裕で数ページは書いていける。

パイロット カートリッジインク ブルー

そして、使い切る瞬間が本当にやってきた。筆跡が所々かすれてきた。よし、ここをゴールとしよう。そして、ページを遡ってスタートラインを調べてみる。書き始めた日付から使い切った日を計算すると9日間だった。ページ数は56ページ。あれ?1日8ページだから計算が合わないぞと調べてみると、中には1ページしか書いていない日もあったりした。とにかく56ページかかったということが分かった。私は1行に大体23文字くらい書いている。1ページに25行あるので、23×25で575文字。56ページを掛けると、32,200文字ということになる。

つまり、私は1本のカートリッジインクで32,200文字を書いた訳だ。32,200文字と言われても、他の基準を持っていないので、これが多いのか少ないのかよく分からない。とにかく3万字ちょっとということを自分の中にひとまずインストールした。

パイロット カートリッジインク ブルー



今回の調査では、EFという極細で書いていった。字幅が違えばきっと文字数も変わってくるだろう。ノートの罫線の幅がもう少し広くなれば書く文字も大きくなるので、また結果が違ってくるに違いない。書く人間が違ってもやはり違うのだろう。あくまでも私の場合の目安である。いずれにせよカートリッジインクを見る目は、この数字を知った日以降大きく変わった。

このカートリッジインクの中には、32,200文字のEFの文字が詰まっていると。

パイロット カートリッジインク ブルー

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YouTube「pen-info」チャンネルでも紹介しています。(プラチナ万年筆のカートリッジインク)

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