2007.11.19(143)

「システム手帳 再デビュー」

ファイロファックス

クラシック クロス

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

前回のコラムで、来年のスケジュール帳はクオバディスのビソプランにすると言っていたのに、その舌の根の乾かぬうちにシステム手帳を使うとは何事か!と、思われた方もいるかも知れない。。違うのである。来年のスケジュール帳は、ビソプランを使っていくことに変わりはない。

では、なにゆえシステム手帳を使うのか。それは、ノートとして。スケジュール帳としてではなく、あくまでもノートとして使ってみようと、思ったのだ。私は、システム手帳を使わなくなって、かなりの年月が経っている。

そんな私が久しぶりにシステム手帳を手にしてみようと思ったきっかけは、ノート&ダイアリースタイルブックVol.1の中にあった一枚の写真だった。お持ちの方はぜひご覧頂ければと思うが、32ページに1930年当時の古いファイロファックスの写真が掲載されている。

これはもう、システム手帳の一番美しい姿と言ってもいいくらいのすばらしい年季の入り具合。その使い込まれた姿にすっかり一目惚れしてしまった。

しかし、私も今年で40歳のいい大人だ。ただ格好いいと言うだけでシステム手帳を使うというのもどうかと思う。やはりそこには、大人としてちゃんと使うべき理由が伴っていないといけない。

と思っていたら、同誌70ページにシステム手帳を「旅手帳」に活用する、という提案があった。ホテルの連絡先や現地で訪ねる場所の情報などを綴じ込んでガイドブック兼ノートとして使うというもの。これだ!と思った。

■ システム手帳を用途に特化して手帳に

折しも、近々中国に出張に行くことになっていたので、これはちょうどよい。いっちょ、海外取材手帳をシステム手帳で作ってみようではないかと、思った次第なのである。

これまで、私の頭の中には「システム手帳=スケジュール管理」という確固たる図式があり、私のような既に他のスケジュール帳を使っているものは、決して手を出してはならぬぞ、と誰に言われた訳でもないのだが、そう思いこんでいた節があった。

しかし、そもそも、ファイロファックスは、その誕生当初には兵士が機械や科学、医療といった様々な情報を綴じておくというものだったそうだ。なにもシステム手帳はスケジュール管理のためだけに存在する訳ではない、ということに、はたと気がついた。

という訳で、すでにスケジュール帳を持っている私も諸々のしがらみから解き放たれて、晴れて再びシステム手帳を持ってみることにした。そんな私が手に入れたのが、このファイロファックス クラシック(クロス)。

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

今回の出張手帳では、ある時はガイドブック代わりに、またある時は取材ノートとして広範な活躍が求められる。つまり、あまり大きすぎても携帯性が悪くなってしまい、かといって、小さすぎると書くスペースが少なくなってしまう。

そこで、バイブルサイズのリフィルが使え、カバーが普通のバイブルサイズよりもスリムな「スリム コンパクト」というサイズにした。

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

このサイズは、コンパクトさと引き換えに、リング径が大変小さい。つまり、綴じられるリフィルの枚数がそれほど多くできないと言う弱点がある。しかし、私はスケジュール系のリフィルは一切入れずにノートに徹して使おうとしているので、この点は問題にならなかった。

このリング径の小ささは、もうひとつ私にとって重要な意味がある。それは、筆記するときにリングが邪魔になりづらいということ。

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

大きめなリングだと、特に左側のページを書く際一行書くたび、ペンを握る手がリングを登っては降りていく。これが気になってしょうがなかった。根本的な解決ではないのだが、小径リングなら、その登り降りの高低差も少ない分あまり気にならなくなる。表紙には、商品名にもなっているクロスのステッチがある。

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

表情があまりないシステム手帳が多い中、私はこの顔が気に入った。このクロスステッチはおもて面にしかないため、裏表が瞬時にわかるという良さもある。というのも、これにはシステム手帳ではお馴染みのベルトが付いてない。

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

■ ベルトもないシンプルなデザイン

私は、あのベルトをあまり好ましく思っていなかった。何故かというと、いざ手帳を開いて書こうとするときに、先ほどのリング同様、ベルトが手に当たってしまうことがあるから。気になると言えば、ペンホルダーもそう。幸いこのクロスでは、ペンホルダーが左側についているので、筆記の時に気にならないのが大変ありがたい。

この様にこのクロスは、私の細かなニーズにピッタリだった。システム手帳を使うにあたっては、バインダー同様、中に綴じるリフィルにもしっかりとこだわりたい。ノートとして使おうと思っているので、筆記具はいつもの万年筆でいってみようと考えている。

そうなると、万年筆に相応しいものをセットしないといけない。色々と探してみたら、まさに万年筆にうってつけのリフィルがあった。銀座書斎倶楽部オリジナルの「銀座書斎倶楽部×満寿屋 365日リフィル」だ。

満寿屋 バイブル リフィル

これは満寿屋の紙を使ったバイブルサイズのリフィル。もともとは、365日リフィルとあるように日記を書くためのものだが、体裁は罫線スタイルなのでノートとして使ってもバッチリ。満寿屋と言えば、川端康成や三島由紀夫をはじめ数々の文豪に愛された原稿用紙メーカー。その同じ紙が使われているのだから、当然、万年筆の相性は抜群。

一般に手帳に使う万年筆は細字と大体相場が決まっているものだが、うれしいのは、罫線の幅がかなりゆったり目の9mmとなっている。一般のノートが6~7mmがいい所なので、これはかなり太い。これなら、BやMと言った太めの万年筆でも気兼ねなく書くことができる。

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

満寿屋の紙はインクの吸収がよいほうだが、さすがに書いてすぐに手帳を閉じれば、多少はインクが反対側のページに移ってしまうこともある。その対策にとしては、私は吸い取り紙を程よい大きさにカットしてバインダーの内ポケットに忍ばせている。

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

あとは、ホテルや訪問先、取材先の情報を綴じ込んでおけば、私の取材用システム手帳は完成となる。

当初の予定どおり、スケジュール管理は、別にビソプランを持てばいい。とも思っていたのだが、不意にいいアイデアを思いついた。それは、システム手帳とビソプランをドッキングしてしまうということ。上手い具合に、バインダーの内側に大きめなポケットがあり、カバーを外したビソプランをスッポリ入れておける。

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

こうしておけば、これまでずっと書き込んだきたビソプランの情報も活かせる。なお、これは、あくまでも出張などの緊急対応で、普段は、いつものスタンド式であることに変わりはない。

思い起こせば、はじめてシステム手帳を使い始めた頃、形から入り、そして形で使っていたからだろう。いつしか、自分とシステム手帳との間には大きな溝が生まれ、しだいに疎遠になってしまった。

今回も、はじめこそ格好から入ったが、その頃とは違い、自分の用途をしっかりと見極めて、自分に合うサイズやリフィルも吟味してみた。きっと、今回の再デビューは、うまくいくのではないかと期待している。

ファイロファックス クロス スリムコンパクト

それでは、このシステム手帳を携えて中国に行ってきます!

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