文具で楽しいひととき
 「ジャパン クラシック シャープペン」 ぺんてる グラフペンシル 840円


 


□文具メーカー各社から毎年出てくる数々の新製品。

 新たな機能、そして使い心地があって、
 それはそれでとっても魅力的。

 その一方で、
 昔から販売され続けているロングセラー文具。

 新製品のような目立ったところはないかもしれないが、
 長い時代を渡り歩いてきた年季と言おうか
 存在自体に説得力というものがある。

 そうしたロングセラーの中でも、
 これは、「古い」を通り超して
 もはや「クラシカル」な雰囲気まで漂わせている。

 というのも、
 39年という超ロングセラー。

 このクラシカルなペンが
 今も現行品として新品で買えてしまうというのは、
 ある意味とても幸せなことだと思う。


□ぺんてるのグラフペンシル。


 


 ぺんてるで、
 現在販売されている製図用シャープペンの中で一番の古株。

 「グラフシリーズ」というと、
 「グラフ1000」があるが、
 ロングセラー歴は25年なので、
 グラフペンシルの方が遥かに大先輩にあたる。

 と言っても
 「グラフペンシル」が
 「グラフシリーズ」の一番最初のモデルということではない。

 ここで、
 ぺんてるにおけるシャープペンの歴史を
 少しばかりひもといてみたい。

 というのも
 現在、主流となっている0.5mmシャープペンを語る上で
 ぺんてるは欠かせない存在。

 そもそも今の0.5mm シャープペンの芯を
 世界で初めて作ったのはぺんてる。

 それまでは鉛筆と同じ製法で芯を作っていたので、
 細くしたくても
 1.5mm や1.0mm が限界だった。

 その中で芯に樹脂を配合することで
 0.5mm という細さ、
 そして強度をあわせ持った芯の開発に成功した。

 そして1962年に
 ぺんてるが世界初の0.5mm シャープ芯「ハイポリマー芯」を作り出した。

 それに合わせて
 これも世界初の0.5mm 芯が入る
 シャープペン、「ぺんてるシャープ」も販売された。

 こうして今に続く0.5mm シャープペンの歴史はスタートした。

 この0.5mm シャープペンは、
 細く正確な線を引く製図をする人たちに使われるようになり、
 より製図に適した「グラフペンシル PG 」というものが発売された。

 これが
 ぺんてるの「グラフシリーズ」のスタートモデルということになる。

 これは、
 今の「グラフペンシル」と限りなく似ているものだったという。

 つまり
 「グラフペンシル」は
 ぺんてるの製図用シャープの DNA を受け継ぐ
 モデルであるとも言える。

 ちなみに
 当時の「グラフペンシルPG 」の
 ペン先の芯を出すスリーブというパイプの長さは、
 この時からすでに4mm になっていた。

 これは細い0.5mm という芯を安定して支え、
 同時に細かな図面を引くときに、
 ペン先まわりの視界を良くするためだ。

 ぺんてるの製図シャープペンは、
 全部この4mm スリーブ。

 さらにいうと、
 他社の製図シャープペンも
 ほとんどこの4mm スリーブを採用している。

 ぺんてるが製図シャープペンの
 基準を作ったという訳である。


 


 この「グラフペンシル PG 」の後、
 いくつかのモデルを経て
 1972年に「グラフペンシル」は誕生することになる。


□「グラフペンシル」を手にすると、とても軽快。


 


 「グラフ1000」と持ち比べてみるとよくわかるが、
 これが結構軽い。

 軽いと言っても、
 その軽さの中にも「バランスの良さ」、
 別の言い方をするならば、
 「考えられた軽さ」というものが
 とても感じられる。

 それは「グラフ1000」の時のような
 低重心とはひと味違う。

 実際、
 「グラフペンシル」の重心を調べてみると、
 ほぼ真ん中に位置していた。


 


 「グラフペンシル」から感じるのは
 ただ単に軽いというだけではなく、取り回しの良さという点である。

 ペン先を空中で動かしてみるとよくわかるが、
 実に軽やか。

 これはきっと、
 ノック先端部分もペン先のようにだんだんと細くなっている、
 つまり、左右対称をフォルムにしているためだと思う。


 


 


□グリップ部分には、
 幾重もの行方もの細かな溝が彫り込まれている。


 


 そこに指先を添えると、ピタリと固定できる。

 そのグリップの上側は多面体になっている。


 


 これはペンの中央あたりを握って書く時の
 グリップのためということなのだろう。

 しかし、
 この多面体はノック部分のギリギリ手前まで来ている。

 さすがにここまで上の方は握らない。

 では、
 なぜこんなところにまで
 多面体の加工がされているのだろうか。

 実はこれ、
 製図シャープペンならではとも言える部分である。

 製図で最も重要な仕事は
 一定の太さの線を引くということ。

 シャープペンは、同じ向きで書き続けていると、
 どうしても芯先の偏減りというものが起こり得る。
 ちょうど刀で竹を切ったのように。

 そのため、
 線を引きながら
 自らの手でそれを補正すべく、
 ペン自体を回転させなくてはならない。

 実際に製図では、
 一定の線を引くとき、
 書きながらペン軸をコロコロと回転させるという
 技があるという。

 その書きながらコロコロをやりやすくするために
 先程の多面体ボディは役立つ。

 ペンを握った時に親指と人差し指のつけ根に
 先程の部分がちょうどもたれかかってくる。


 


 ここも多面体であるため、
 コロコロがしやすくなるという訳。

 この時クリップが邪魔になってしまうので、
 クリップは取り外しできるようになっている。


 


 ちなみに
 ぺんてるのその他すべての
 製図シャープペンでもクリップは、
 取り外せる、あるいは収納できるようになっている。


□次にシャープペンの中で
 私が最も楽しみにしている
 ノックの感触について紹介してみたい。

 全神経を親指の指紋の中央部分に集中させ、
 「グラフペンシル」のノックボタンに指をかけてみる。


 


 「グラフペンシル」のノックボタンは他に比べて、
 やや細いので
 指の腹にめり込んでくる。

 そのまま押し込むと、
 ぺんてるの製図シャープペン独特の
 やや重みのある押し心地がやってくる。


 


 ノックボタンがやや長めに出ている割に
 「押ししろ」は浅め。

 その浅めの中にも「カチッ」というメカニカルな音、
 そして押し心地はしっかりと味わえる。

 「グラフ1000」の時のノック音はやや重く、
 くぐもった音だったのに対し、
 「グラフペンシル」は少しばかり甲高い音。


□3回ノックして芯を出した時の姿が
 4mmスリーブとあいまってとてもバランスが良い。


 


 紙の上にそのペン先を添えてみる。


 


 いつもの「グラフ1000」の時とは
 まるで眺めが違う。

 グリップそして口金にかけてスゥッと細くなって、
 4mmスリーブ、さらには芯へと繋がるラインは
 繊細さに溢れている。

 「グラフ1000」の時は
 ガクンガクンと大胆に細くなっていたので、
 力強さみたいなものを感じていたが、
 「グラフペンシル」ではほっそりとした印象。

 心なしか
 私の方まで繊細な性格の持ち主になったような
 錯覚を覚える。


□ただ
 この「グラフペンシル」で
 一つ残念なのは、
 現在0.5mm 芯タイプのみの設定となっている点。

 0.7mm 芯タイプは、
 すでに廃番になってしまったという。

 この軽快さで
 0.7mm 芯でも一度書いてみたかった。



■ 記事作成後記 その1

 芯の硬度表示の切り替えは
 ノックボタン下にあるアルミ製パーツをゆるめて行います。


  


 芯の交換もこのアルミ製パーツを外してからでないと
 できないようになっています。

 


■ 記事作成後記 その2

 「グラフペンシル PG 」から「グラフペンシル」に至るまでの間には
 いくつかのシャーペンが存在したと触れましたが、
 その中にはかなりユニークなものもありました。

 たとえば、この「メカニカ」というタイプ。


 


 シャーペンは英語で「メカニカルペンシル」というように、
 そもそもの構造がメカニカルですが、
 この「メカニカ」は
 さらに一歩進んだメカニカル感があるのです。


 


 メタル製のグリップとペン先の間から
 なんと、
 パイプみたいなものがスライドして出てくるのです。


 

   


 これは
 ペン先の細くなっているスリップを保護するためです。

 また、
 シャツのポケットに入れた時にも便利そうです。

 限定ということでもいいので、
 ぜひ一度復刻してもらいたいものです。


□また、私の新刊本「文具の流儀」では、
 どのような経緯でぺんてるが0.5mm シャープ芯を開発したのか、
 といったことや、
 そもそもなぜ、0.5mm という細さにしたのかという
 裏話なども紹介しています。

 ぜひご覧いただければうれしいです。


 (2011年12月6日作成)



  ■ グラフペンシル は、こちらで販売されています。


  ■ 本 「文具の流儀  ロングセラーとなりえた哲学」





■ 関連リンク

 ■ 「ロングセラーのシャープペン」 ぺんてるグラフ1000

 ■ 「モバイル シャープペン」 ぺんてる ケリー 

 ■ 「使うほどにわかる計算しつくされたデザイン」 ラミー2000 ペンシル

 ■ 「メカニカルなシャープペン」 オート スーパープロメカ

 ■ 「芯の出具合いを調整できるシャープペン」 ステッドラー REG 925 85−05


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