2016.04.26(354)

「クラシカルデザインを新品で味わう」

ペリカン

スーベレーンD400

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

またシャープペンシルを買ってしまった。しかも15,000円+taxもするやつを。すでに愛用しているシャープペンはいくつもあるというのに。ぺんてる グラフ1000やラミー2000 、カランダッシュ エクリドールなどなど。人(たぶん自分だけかも)は、なぜシャープペンシルを買うのか?それは、そこに山があるがごとく、そこにシャープペンシルがあるからに他ならない。

ぺんてる グラフ1000 カランダッシュ エクリドール ペリカン D400 シャープペンシル 0.7mm

考えてみれば、シャープペンシルの芯はいつも使っているBや2Bで同じものだ。それを支え、握りやすく、書きやすくするためのボディがある。そのボディなどなんでもいいではないかと世間の人は言うかもしれない。実際、妻に15,000円のシャープペンシルを買ったと伝えたら、目を丸くして驚かれた。世間の人たちの反応もおおかた同じものだろう。シャープペンシルを手にして書く時に指先で触れるボディによって実際の書き味、そしてこれがとても大事だと私は思っているのだが、「心で感じる書き味」は違うんだな〜これが。(遠い目。。。)

■ 当初嫌いだったD400

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

D400はペリカン スーベレーンシリーズのひとつ。ブラックと縞模様というスーベレーンスタイル。ちなみに、私は緑縞を選んだ。私はこのスーベレーンシリーズを見るたび、燕尾服を着た紳士を思い浮かべる。このD400も、その燕尾服になっているが、頭にちょこんとノックボタンが飛び出ているのが、とって付けた感があってあまり好きではなかった。いやハッキリ言うと嫌いなデザインだった。それが一体どうしてなのか自分でもわからないのだが、ある時、その嫌いが好きになってしまったのだ。実は最近、嫌いだったものがあるときを契機に急に好きになるということがいくつもあった。靴が多いのだが、たとえばLL BeanのBeanブーツやビルケンシュトックなどがそうだ。Beanブーツはつま先がカモノハシみたいだし、レザーとラバーがつなぎ合わされていて、なんだが変だなと思っていたし、ビルケンシュトックについても、つま先が万歳したみたいに広がっていて、ちょっとやりすぎじゃない、、と思っていた。それがある時を境に急にステキに見えて、私はこの2足を買い、今ではもうこれらの靴しかないというくらいに惚れ込んでいる。以前気になっていたところは、今やすっかり大好きなポイントになっている。。これは一体どうしたことなのだろうか。。。

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

D400については「趣味の文具箱」33号をなんとなくパラパラと見ていて、ペリカンのアンティークペンが紹介されているページ(P64〜65)に目がとまった。それを見たとたん、急に格好良く感じだしたのだ。キライというのは、たとえネガティブではあるにせよ、その対象にとにかくある一定の意識が注がれている。それは、あるきっかけで全く逆に針が振れる危険性をはらんでいるということなのだろうか。とにかく、D400が急に気になり出し、横浜の伊東屋さんに走って買いに行った。

■ 安心感のある指触り

親指とひとさし指でボディをつまみ、中指で下から支える。言葉にするとまどろっこしいが、つまりペンを握ってみた。まず、感じるのがいつもの指触りということ。普段、愛用しているペリカン M800と同じ質感が指先の指紋を伝わって脳に情報がやってきた。基本はなめらか。しかし、ツルツルしすぎることなく指先にあるわずかな油のせいか、まったりとまとわりついてくる。それがちょうどよいグリップになる。これが15,000円の握り心地だと左脳がそろばんをはじいた。ボディは重くなく、軽くもない。あまりたとえようのないごくごく普通な重量。重心はどこあたりだろうと探ってみると、中央よりやや後側になった。後重心なのに、握った時の印象はいたって自然。たぶん、それはボディが短めだからなのかもしれない。グラフ1000と比べると、ショートサイズだ。この短さは、シャープペンシルにおいては有効かもしれない。書いていて芯をもう少し出そうとノックする時、このショートサイズだと、サッと親指がかけやすい。

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

ノックは製図シャープペンのような重みはなくライトなタッチ。カチカチと2回ノックすると、芯自体の長さは、ちょっと出過ぎかなという印象になる。しかし、少し視線を離して眺めてみると、これがむしろちょうどよい。というのも、このD400は口金が一般のシャープペンシルに比べてやや長めになっている。その口金の長さと2回ノックした芯の長さがちょうどいいバランスで決まるのだ。もちろん、私がシャープペンシルで最も気にかけるペン先のアウトラインが芯先にかけてスッと美しいラインで結ばれてもいる。0.5mmシャープペンシルならば、この芯の長さは少々不安になるものだが、0.7mm芯なので心配はいらない。

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

ぺんてる グラフ1000 カランダッシュ エクリドール ペリカン D400 シャープペンシル 0.7mm



こうしたブランド筆記具の王道シャープペンシルを手にするのは、思い返してみれば社会人時代のモンブラン マイスターシュテュック以来かもしれない。最近では、もっぱら製図用シャープペンシルなどを使っていたが、そのステップを踏んだ上で、再び王道系に今回戻ってきた形になる。ペン選びというものには、これで「アガリ」というものがない。大きな周期をグルグルと回っているように思う。私の場合は20年くらいかけてグルリと一周回ってきた。いっときは究極の一本を選ぼうと血眼になっていたこともあったが、今はその時に手にしっくりとくるものを手にすればいいじゃないかと、流れに逆らわずに身を任せられるようになった。

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

ペリカン D400 ノック式シャープペンシル 0.7mm

ペリカン スーベレーン D400

*今は大好きな靴となったL.L. Bean Beanブーツとビルケンシュトック ロンドン。

 

L.L. Bean Beanブーツ ビルケンシュトック ロンドン

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