2014.11.04(317)

「文字という立体物」

e+m

ワークマン 2.0mm

私は文字を書くというのは、文字という立体物を作っていると考えている。

とりわけ鉛筆やシャープペンといった黒鉛芯で書く時はその感覚が強い。紙は一見したところでは平面だが、ミクロの世界では凸凹している。その凸凹の上に黒鉛芯で書くと、黒鉛が凸凹によって削られその粒が文字の筆跡となる。ボールペンのインクは紙に染みこんでいくが、黒鉛芯は紙の上にのっかっている状態だ。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

とってもミクロな世界での話だが、黒鉛芯の文字は立体であると私は常々感じている。

■ 立体物は脳に刺激を与えてくれる

では、立体であるとなにがいいのか?それは立体の方が脳への刺激が大きくなるというのがある。パソコンのモニターに表示されているだけの文字より立体的な方が断然伝わってくるものが違う。

それは特に「考える」時に効果を発揮する。私は「考える」時黒鉛芯系のペンを手にとり脳の中に生まれたイメージや言葉を次々に紙の上に書き出していく。それを見て、刺激を受けてさらなるイメージや言葉が脳の中にひらめきそれらも書いていく。この繰り返しを行う。

この「考える」→「書く」→「刺激を受けてさらに考える」というサイクルを回す時に脳にビンビンと刺激を与えてくれる方がいい。その理由で立体感のある文字が描ける黒鉛芯系のペンを手にしている。その黒鉛芯系のペンの新たな仲間としてe+m ワークマン2.0mmを買った。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

e+mは、ドイツのペンブランドで主にウッド軸のペンを製造している。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

どれも手のぬくもりを感じさせる暖かみがある。e+mと初めて出会ったのはドイツの文具展示会「ペーパーワールド」でのことだった。以来、ブースを訪れるたび毎回快く取材に対応して頂いている。

せわしない展示会場の中にあってもいつもゆっくりとお話ししてくださりe+mのブースだけは時間の流れ方が違うのをいつも感じていた。そんなこともあってe+mのペンを手にするとじんわりと体の内側に暖かさを覚える。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

■ ボディは直径にして1.5cmもある太軸

製材所で作られたばかりというくらいに潔いほどのまっすぐボディ。ただ、よくよくボディに指先を這わせてみるとペン先側だけほんの少しだけ細く仕上げられている。全長は、12cm弱のショートボディ。この太く短いボディを手の中に迎入れてみると意外なほどにしっくりと収まる。

書いた印象は「手で書いている」というのをすごく感じる。そもそも全てのペンは手で書いている訳だが、この感覚は他とはちょっと違う。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

たとえるなら子供の頃にろう石や石ころで地面にらくがきをしていたあの頃の感覚に近い。芯はノックボタンをカチカチとノックするたび少しずつ出てくるタイプ。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

芯はシャープペンの0.5mmや0.7mmより2倍くらい太いはずなのに不思議とそんな印象があまりない。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

ボディがあまりに太いので2mm芯がむしろ細く見えるほどだ。芯はやや硬質なタッチでHBくらいだろうか。筆跡も濃すぎることなくごくごく普通に書いていける。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

■ 書いていることすら感じない

書いていて、もう一つ感じることがあった。厳密に言うと、「感じる」というよりも「感じなかった」と言うべきかも知れない。

木目のナチュラルボディは書いている時に手の肌の色とほぼ同化してペンの存在がスゥッと消えていくような感覚があった。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

これはいいと思った。私は最近、理想の道具は使っている時に使っていることすら感じさせないものが最良だと考えている。ペンを持って書く時ペンに意識を向かわせずに意識の全ては「書くこと」しいては「考える」ことだけに集中させたい。

もはや自分がペンで書いていることすら忘れさせてくれるくらいに自然さに溢れるペンがいいのだ。その意味でこのペンはいい具合に存在を消してくれる。私にとっての脳に直結したペンとして使っていこうと思う。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

■ 記事作成後記

替え芯は、ボディの全長とほぼ同じくくらいのタップリとした長さがあります。

e+m ワークマン 2.0mm ペンシル

どうやら芯はボディに一本ずつしか入らないようです。交換方法は、ペン先から入れるようです。この点の使い心地はあまり自然にとはいかないようです。。

□ e+m ワークマンは、こちらで販売されています。
□ 5.5mm芯タイプ

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