2013.01.08(271)

「太は細を兼ねるペンシル」

ラミー

スクリブル 3.15mm ペンシル

■ 書かず嫌いだったペン

食わず嫌いというものは誰しもある。

食べもしないのに、自分の口にあいそうにないと勝手に思いこんで、なんとなく食べないというもの。私の場合は柿。たぶん生まれてからほとんど食べたことはないと思う。果物なのか野菜なのか、微妙な感じがして食べる機会を失い続け今に至っている。

ペンにも「書かず嫌い」というのもある。これもちょっと私に合いそうもないだろうとなんとなく敬遠し続けているペン。私の場合ラミーのスクリブル3.15mm 芯がそれにあたる。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

どうだ参ったか!というくらいに太い3.15mm 芯に私は怖じ気づいてしまっていた。ラミーらしいデザインには惹かれるものの、その太い芯を使いこなせる自信がなかった。

私の中には「太い芯=太い筆跡」という確固たる公式がある。しかし、とある文具ユーザー会(文房具朝食会)でこのラミー スクリブル 3.15mm を使ってる人がいて、ものは試しと書かせていただいた。

すると、これはいいじゃないか…、すごくいいじゃないか、私にも十分使いこなせそうだと、手の平をクルリと返して気に入ってしまった。ということで、今回はラミー スクリブル3.15mm ペンシルのお話。

スクリブルは0.7mm シャープペンを、私はかねてより愛用している。同じスクリブル兄弟でありながら、この3.15mm はいろんな意味で別物。もちろんベースとなるものは同じだが、細かな点で大きく違っている。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

■ フラットさがある太軸ボディ

まずボディデザインで目を引くのは、クルリと3ヶ所、ボディがそぎ落とされているところ。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

まるでナイフでも使ってスパッとカットしたような削ぎたてホヤホヤ感がある。この「スパッとカット」、なぜ3.15mmタイプだけにあって、0.7mmにはないのだろうと以前から不思議だった。このことは後でわかることになる。

ノックボタンはすり鉢状に優しく凹んでいてそこに親指を添えて押し込む。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

すると獲物でも捕らえようとするかの様に、ペン先が前に飛び出しつつ口がグワッと大きく広がる。その中央から3.15mm の芯がスルスルと出てくる。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

シャープペンの様にカチカチと出てくるのではなく、一気にスルリと出てきてしまうので注意が必要だ。おっっとっと、、と親指を添えて芯を止める。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

頃合いのいいところで芯を固定する訳だが、どこらへんにすべきか悩むところだ。短め、長めと色々と試してみたが、私の場合は芯を6mmくらい出したあたりがベストポジションだった。

■ 3.15mmという太い芯がよく似合う

このくらいに芯を出しペン先を眺めてみると、ペン先から芯先へとつながるラインがほぼ一本の線でビシッと結ばれる。つまり、見た目が美しく、見ていてバランスがいい。書いている時は、このペン先の部分が常に視界に入ってくる。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

心地よい眺めで気分がよくなり、それによって心地よい文字を生み出され、ひいてはいいアウトプットが作り出される、そんな効果があると私は信じている。

■ 3.15mmらしからぬ自然な書き味

次にこの3.15mm 芯を書いてみよう。自分の中にある「ペンモード」を3.15mm 芯モードにカチカチと、まぁここらへんだろうと切り換える。そして、紙の上に芯先を滑らせる。私としては太い3.15mm 芯モードのはずなのに、出来上がっていく筆跡はそれよりもずっと細い。

まるで2mm芯のふつうの鉛筆で書いているようだ。このラミー スクリブルに搭載されている3.15mm 芯は硬度は4B となっている。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

なのに、濃さも書いた時のタッチも4Bらしくない。感覚的にはHB くらいだろうか。つまり、普通に使えるというペンなのである。太い芯先から思っていたよりも細い筆跡が生み出されるというのは書いていてちょっと落ち着かない。私の中の「ペンモード」もどうしていいかわからず困ってしまっている。

ただ、しばらくすると、これはこれで普通に書けていいじゃないか、難しく考えることはないと、しだいに思うようになってくる。しかも、このやや硬めの太い芯は芸達者な一面も併せ持っている。たとえば、より細い筆跡にしたい場合はグリップの先端を握ってペン先をやや立てて書けばいい。

■ 多機能に使える

ふつうのポジションでは中字くらいが書け、7~8mmの極太の筆跡にしたいなら軸の中央あたりを握って思いっきりペンを寝かせる。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

この様にグリップの位置、そして芯の寝かせ具合を変えることで一本で細字から中字、太字、さらには極太まで書ける、実は多機能ペンでもあったのだ。もちろん鉛筆でも同じようにできるが、3.15mmの硬めの芯というのがより表現力を豊かにしてくれる。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

私のベストポジションは、カットされた部分のややペン先側を握るというものだ。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

そもそもこの独特なグリップは、あくまでフラットになっているだけ。つまり、ラミー サファリの様に深く凹んでいる訳ではない。これによりグリップのいろんなところが自由に握れ、微調整が効きやすい。スクリブル3.15mm芯タイプにだけこの「スパッとカット」があるのは、この太い芯を操りやすくするためなのだろう。

硬めの芯とは言っても芯先はずっと同じ向きで書いていると片側だけ減ってしまうので、さながら「人力クルトガ」の様に自ら軸を回転させてあげる必要がある。この時にクリップが邪魔になると思いきやそうでもなかった。そのためスクリブルはクリップをとり外せるようになっている。

しかし、私の握り方でいくと特にクリップをはずす必要は感じなかった。はじめはクリップを上向きにして書く。

次にグリップをひとカット分だけ回転させる。するとうまい具合にひと差し指のつけ根にクリップが接する。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

クリップの先端は緩やかにカーブを描いていて、そのカーブが人差し指のつけ根にピッタリと優しくフィットしてくれる。さらに回転させると今度はクリップが完全に下側を向く。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

この繰り返しなので、クリップは意外と邪魔にならない。ただ芯先については、いずれは丸くなっていってしまう。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

つまり芯を削らなくてはならない。このスクリブルには芯研器は付属されていない実は昨年ドイツに出張した時に、「ラミーABC」用の芯研器を偶然買っておいた。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

これがうまい具合にこのラミー スクリブル3.15mmにも使える。スクリブルの芯を少し長めに繰り出し、サイコロ状の芯研器にさしてクルクルと回していくと削れていく。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

このラミー スクリブルの場合は、あまりキリリと尖らせず7~8割くらいでとどめておくのが合っている。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

そうそうこのスクリブル3.15mm はノックボタンが外れない。つまり、消しゴムは付属されていない。「スクリブル」とは「落書き」という意味だ。落書きは消したりしないということなのだろう。書かず嫌いだったラミー スクリブル3.15mm 、すっかりお気に入りのペンになってしまった。

この勢いで食べず嫌いだった「柿」にもチャレンジしてみようかなぁとも思っている。

■ 記事作成後記
ラミーにはこのスクリブル用の替え芯も別途販売されています。太い芯のため1ケースに3本しか入っていません。

ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

* ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル

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