2015.01.20(322-2)

「台湾文具の旅 2」

2014 レポート

台湾文具の旅 2015

■「世界でもっとも美しい書店」にも選ばれたVVG something

せっかく台湾に来たので、手帳総選挙の合間を縫って地元のショップ巡りも楽しんできた。台湾に行ったらまずここを訪れようと決めていたのが「VVG something」。「VVG」とはvery very good という意味。まさに、とってもとっても素敵なショップだった。基本は本屋さん、ただ店構えは全くそんなそぶりがしない。まるでアンティーク雑貨店のよう。

このショップのことは編集者から教えてもらっていた。というのも、ここには私の本「文具の流儀」が置いてあるのだ。「世界で最も美しい書店 20店」にも選ばれているショップに本を置いていただけるなんて実に光栄なことだ。店内に入ると、奥に繋がる長いテーブルがあり、その上に本が平積みされている。料理の本、デザインの本など、ジャンルごとに山が出来ていた。

台湾文具の旅 2014 レポート

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一見雑然としているが、見えない糸でピーンとつながっているかのようで、しっかりとした統一感があった。その本を並べたテーブルの両側の壁側にはステーショナリー、食器、ドアノブやフックなどの金具類などがある。新品なのか、はたしてアンティークなのかわからないが、それがまた面白い。

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事務所のドアにちょうど良さそうなメタル製のナンバーと、マニラフォルダーをとめておくと素敵そうな洗濯ばさみを買った。

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会計をする時に思い切って「文具の流儀」のお礼をお伝えしてみた。「え!これ、あなたが書いた本なの?!」ととても喜んでくれた。

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この本は、どこから仕入れたんですか?と聞いてみた。というのもこの本は台湾語に翻訳されている訳ではなく、日本語のままで販売されていた。スタッフの方によると、台湾の出版社から仕入れたとのことだった。たしかに、私の本以外にも日本語の本が結構並んでいた。本にサインをして欲しいと頼まれ、喜んで!と鞄から万年筆を出して書かせていただいた。

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VVG somethingのお店のある一角には、同じ系列のカフェ、レストラン、ソーイング用品などを集めたショップなどが軒を連ねていた。

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地下鉄MRT「忠孝敦化」駅から徒歩で5分ほどの路地に入ったところにひっそりとある。

■ Plain STATIONERY & HOMEWARE

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地下鉄MRTの台電大楼駅の一番出口を出て180度クルリと向きを変え大きな交差点を右折して渡って、最初の路地を右に入る。

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以下写真の小さな緑色の看板が見えたら左折。

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すると、虹色の旗が右手に見えてくる。

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ちなみにこの虹色の旗はセクシャル・マイノリティの象徴とも言われているそうだ。その旗に挟まれるようにあるのが「Plain STATIONERY & HOMEWARE」。

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「文具病」という文具ブログで20,000名を超えるフォロワーを持つ、Tiger Shenさんが2014年にオープンしたショップだ。数年前に日本の文具イベントでお会いして以来仲良くさせて頂いている。通常は14:00からのオープンのところを特別に午前中から開けていただき貸し切り状態で店内を堪能させていただいた。

古きよきアメリカを感じさせるショップのサインが出迎えてくれる。このサインを見ただけでこのショップには何かがある!と思わせるものがある。視線を左に向けると、右手でペンを持った突き出し看板もあった。

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裏側から見てみると、ちゃんと反対側も描かれていた。

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近くには台湾大学があり、学生もお店の常連さんだという。学生の間では、この看板のペン先を触るとテストがうまくいくという噂が広まり、1年足らずで、すでにペンの塗装がはげ、錆びはじめていた。地元の人たちにすっかりと愛されているようだ。

店内に入る前にもうひとつ目にとまったものがあった。ボールペンがディスプレイされた、なにやら不思議なメタル製の箱。

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Shenさんによるとこれはアメリカのアンティークのボールペン自動販売機だという。ちなみに、これは非売品。店内に足を踏み入れると、決して広くはない空間だが、そこにはShenさんの目で選び抜かれたステーショナリーを中心とする様々なアイテムが静かに、それでいて活き活きと並んでいた。

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ショップのコンセプトは、使いやすい文具だけを集めるというもの。Shenさん自身、派手なものは好きではない。何年経っても流行に左右されず、ずっと使い続けられるものだけをセレクトしている。そのコンセプトを代表するアイテムとして、プラチナ万年筆の「プレスマン」、ぺんてるの「ケリー」をShenさんはあげた。

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まさに2本とも時代に流されず今も愛され続けているペンだ。アメリカやヨーロッパのものもあるが、かなりの割合で日本文具が占めていた。おそらく店内の半分くらいは私も知っているものなのだが、不思議と新鮮な印象を受けた。たぶんそれはディスプレイの工夫のせいなのだろう。

店内にはメーカーから支給される什器はひとつもなく、ウッド製の棚などで構成されている。たとえば、鉛筆が美しく収まった木製のディスプレイケースがあった。

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内側が小分けされているが、その寸法が新品の鉛筆ピッタリになっていた。そのあまりのピッタリ加減に不思議に思い、聞いてみると、これはShenさんによる手作りだという。

これ以外にもカランダッシュのフタ付きボックス、そしてギザギザに加工されたペントレーなどもShenさんの手作りディスプレイだ。

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全体に感じる統一感はこうした細部にわたるこだわりのためだったのだ。先ほどメーカー什器はないと言ったが、厳密には少しだけある。それは、はるか昔のアンティーク什器だ。たとえば、アメリカの鉛筆ブランド「ヴィーナス」の木製什器。

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これはイーベイで落札したものだという。硬度別に収納スペースが細かく分けられている。その硬度の中で見慣れない「t4」、「t3」、「t2」、「t1」というものがあった。

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これはトレーシングペーパーに書き込むためのものだそうだ。(残念ながら、鉛筆も含めてこちらも非売品)ガラスショーケースには、見かけたことがない淡いブルーのカランダッシュ849ボールペンがあった。

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これは、台湾限定タイプだという。Shenさんによると、台湾の野党のカラーはグリーン、そして与党はブルー。その中間的な淡いブルーを表しているのだという。

Shenさんは、かねてよりこうした自分でセレクトしたショップを持ちたいと考えていた。ただ、いきなりショップを開店したところできっと失敗してしまうだろうという思いがあった。そこでまず、ブログで情報発信を行い、その上でショップをオープンさせる計画を立てた。そして、2009年に「文具病」をスタートさせた。その当時台湾でも文具を好きな人たちは、すでにたくさんいた。

しかし、ほとんどの人たちはキャラクターなどのいわゆるカワイイ系のものばかりに注目していた。文具は見た目だけでなく、中身が重要だとShenさんは以前から感じていた。そうした文具の中身をじっくりと紹介しようと「文具病」でひとつひとつの文具を取り上げていった。

スタートしたばかりの頃は読者の反応はほとんどなかったという。それでも更新を続けていくと少しずつShenさんの文具に対する考えに共感してくれる人たちが増えていき、20,000万名を超えるフォロワーを持つまでになっていった。そして、満を持してショップをオープンさせた。

Shenさんの文具に対する熱く真摯な思いがつめ込まれたショップ、台北に行く機会があったら、ぜひ立ち寄ってみてほしい。いつも見慣れた日本文具が違う表情で店頭に並んでいるのを見ることができるはずだ。

私が買ったものは、パイロットのまっ白なボールペン、「PALOMINO」の鉛筆 2B、そしてBICYCLEのロボット柄のトランプ。

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包装紙にもShenさんの楽しい工夫がある。

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溶けはじめている氷の上にいるシロクマの隣では鉛筆が新しい氷を描いている。もうひとつは、原発を消している消しゴムの絵。

Shenさん、そしてショップを担当している奥様と共に

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■ 素朴な紙製品が集まった「品墨良行」

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Shenさんのオススメショップをいくつか案内して頂いた。その一つが永康街エリアにある「品墨良行」。

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店内にはオリジナルのノートや手帳、メモなどが所狭しと並んでいた。

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少々ザラザラとした風合いの素朴な紙が使われている。地下には、「紙的工作室」となっており、ここでは自分の好きな紙を選んで中綴じのノートを作ることができる。

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中央には作業スペースがあり、作業は各自が行うことになっているという。壁という壁には様々な紙が収まっていた。紙好きには楽園のような空間だ。このショップで私が買ったのは、横長のメモ。

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表面がザラザラとしていて裏面はツルツルしていた。罫線などないシンプルな無地紙面なので、ミニ一筆箋にいいかもと購入した。万年筆の書き味はどうだろうと思っているとスタッフの方が試し書き用紙を差し出してくれた。にじみ、裏抜けはなく良好だった。もうひとつは、装丁する前の様なまるはだかのノート。

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表紙もなく、ただただ本文紙だけで出来ている。糸かがり綴じ製本もそのまま目で見て、直接手にふれることもできるむき出し状態。

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表紙がない分、見開き性がすこぶるいい。

■ 取材後記

□金石堂のイベント会場に併設されたカフェ。一角のテーブルが日本手帖の会 台湾支部状態になっていた。例の一件から立ち直ってすっかり元気を取り戻した間辺事務局長。

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今回の台湾でのイベントをとりまとめていただいたチェンさん。チェンさんも台湾で手帳を何冊も出されている。

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□地下鉄MRTの券売機。20台湾ドルで、かなりのエリアまで行ける。お金を入れるとキップではなく、プラスチック製のコイン(トークン)が出てくる。これを改札でタッチして、出るときに回収される。

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□間辺事務局長と金石堂の楊社長。

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□Tiger Shenさんご夫妻と共にランチ。前菜は、ガラスケースに入っていて店員さんにコレとコレくださいとお願いするシステム。

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□町中でよく見かけるオレンジの自転車。この自転車は、30分間無料で使える。町中には専用のスタンドが結構あった。

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□台湾ショップ巡りをご一緒いただいた日本手帖の会 西日本支部の北川さん。(スターフルーツを撮影中)

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□品墨良行のショップカードは、型抜きになっていた。

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□華山文化園というアートギャラリーのエリアにあったショップ VVG thinking。VVG somethingよりもかなり大きな売り場だった。

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VVG thinkingで見かけたボディがコンクリートで作られたペン。台湾のデザイナーによるものだという。見た目どうりの少々ザラザラとした握り心地だった。

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□みんなで食事に行く途中に地下鉄車内で記念撮影。。ちなみに、台湾の地下鉄車内では飲食が禁止されている。そのせいか、車内がとてもキレイだった。

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□台湾名物の夜市に連れていって頂いた。いろんな食事がその場で作られ、売られている。いろんな食事のにおいが渾然一体となっていた。懐かしいゲームもあったり。。

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現地の大学生通訳の方々に連れて行っていただいた若者に人気のスイーツショップ。右側のスイーツは豆腐が入っていた。杏仁豆腐ではなく、後味がしっかり豆腐だったのがユニークだった。

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□台北には、和民や白木屋など日本の居酒屋も結構あった。滞在中の2次会はいつもこうした居酒屋さんだった。深夜になると、絶好調になる間辺事務局長。

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