2012.10.23(266-1)

「PWチャイナ2012 1」

ペーパーワールド チャイナ

2012 展示会レポート

成田空港には朝8:30に着いた。

成田エクスプレスの車窓から見た時はスカッとした青空だったのになんだか私の気分を表すように今の空はどんよりした雲が垂れ込めている。上海に出発する日はタイミング悪く満州事変の9月18日。折しも中国各地で反日デモが行われている最中だ。上海行き搭乗口にある待合スペースにはビジネスマンらしき人たちが何人かいた。彼らも私と一緒でこうした中、中国に行くようだ。

一様に不安な表情がある。その中の何人もの人たちが会社からの電話を受けている。どうやら現地の最新情報を聞きいているようだ。「十分に気をつけて行ってきます」とあまり元気のない声で答えてるのが聞こえくる。また、こんな人もいた。やはり会社からの電話なのだろう。開口一番「中止になりましたか?」と聞いていた。

できれば行きたくないのだろう。そのすぐ後「はぁ、わかりました。気をつけて行ってきます」とがっくりと肩を落としている様子が、背中越しに聞いているだけでも十分伝わってくる。いつもなら搭乗10分前にもなると長い列ができるが、今回ばかりは列を作ることなくスイスイと飛行機に乗り込んでいけた。

機内には観光客らしき人は一人もいない。きっと今回の状況を見てキャンセルしたのだろう。実は私も今回の上海出張は行くべきかどうか正直迷った。TVの報道だけを見ているとこれは行かない方がいいのでは、、、という思いが強くなってくる。しかし、実際のところはどうなのだろうと、知り合いを通じて現地の状況を聞いてみた。

それによると上海の町中では特に混乱はなく、日本人観光客らしき人も見かけたとのことだった。デモが行われている日本領事館のエリアに近づかなければまず問題はないだろうという。TVの報道と知り合いを通じて聞いた現地の情報とを総合して最終的に私は行ってみようと決心した。ただ、十分に自分の身を守る対策はとろうと同時にこちらも決心した。

飛行機に乗り込むと、やはり空席が目立つ。私の隣も空席だった。満席ではないのに機内には、「不安」という空気で充満していた。



飛行機を降り入国審査を受ける。

今回の上海出張でここが初めて接する中国人となる。入国審査官にありがちな淡々とした中にも少しばかり優しさみたいなものを私は感じた。パスポートにポンとスタンプをおしてくれ手渡すときにかすかに笑顔を浮かべ「バーイ」と言ってくれた。パスポートを出しているので当然、私が日本人であることはわかっている。なんだかすこしうれしくなった。

旅行というものは最後に思い出した時「よかったこと」そして「ちょっと嫌だった」ことを総合評価して、「よかったこと」の方が多かったらその旅行は楽しかったものになる。まずは出だしで「よかったこと貯金」がすこしだけできた気がした。

スーツケースを受け取りそれを転がしながら出口を出ると「TADASHI TSUCHIHASHI」というプレートを持った男性が待っていてくれた。実は出発の前日にペーパーワールド・チャイナの主催者から電話があった。この時期に日本人が一人タクシーに乗るのはちょっと危険なので空港からホテルまでは車を用意してくれたという。

いつもは、リニアモーターカー、そしてタクシーと乗り継いでホテルに向かっていた。私もタクシーで乗車拒否されたら、どうしようと思っていたのでこの申し出は大変うれしかった。用意された車に乗り込み一路ホテルへ。

30分ほど走ると窓を流れる景色がビル群にだんだんと変わっていく。てっきり中国の町中のあちこちで反日デモが行われていると思っていたが、ホテルへの移動中一度も目にすることはなかった。道路にはトヨタ、日産、中にはレクサスなど日本の車も平然と走っている。ちなみに私を迎えにきてくれた車は気を利かせたのかドイツのアウディだった。



ホテルでチェックインしていると、私の後ろには日本人らしい4~5人のグループがこれからチェックインするために待っている。なんだか自分が一人だけでないという安心感を覚えた。よっぽど話しかけようかと思ったが、やめておくことにした。

まだまだ上海出張は始まったばかり、一人でやらなくてはならないことは多い。里心ではないが、そういうものは断ち切っておいた方がいい。いつもならホテルに着くやいなや上海の中心街「南京東路」に行き「福州路」という文具街にいくのだが、今回はさすがに控えることにした。

18日は、上海でも人民広場でデモが行われているという人民広場は南京東路と目の鼻の先。しかも一人で動くのはちょっと危険かもしれない。おとなしく、ホテルにこもることにした。夕食もホテルで済ますつもりでいた。ホテルの窓から外を眺めてみると反日デモはまったくなく、平穏な中国生活がながれているだけだった。

ペーパーワールド チャイナ 2012 展示会レポート

部屋で、いたずらに時間だけ過ごしても不安ばかり募ってしまうので気晴らしに一階ロビーのラウンジでコーヒーをのみながら原稿チェックをすることにした。

ペーパーワールド チャイナ 2012 展示会レポート

一階ロビーということでガラス越しに外の様子がよく見える。道路にはタクシーやバスなどがひっきりなしに走り、私の知っているいつもの中国の風景があった。

ペーパーワールド チャイナ 2012 展示会レポート

道路の向こうには「ファミリーマート」があるではないか。中国では「ファミリーマート」と「ローソン」が幅をきかせている。後でミネラルウォーターでも買いに行こう。一人で町中を歩くのは危険とは言え、歩道橋を渡ったところに行くだけなら問題はないだろう。

原稿チェックも一段落して、コンビニに向かうことにした。歩道橋を上ろうとした瞬間、ふと反対側を見ると大きなショッピングモールがあった。距離にして300mといったところ。これくらいの距離なら大丈夫なのではと思い、コンビニに行く前に行ってみることにした。はじめはコンビニだけと思っていただけなのにもう少し足を伸ばし、今はショッピングモールに向かっている。

調子に乗って、こんどは地下鉄にでも乗ってとなっていきそうな自分を思いっきり押さえ込み今日はショッピングモールだけと言い聞かせた。

ショッピングモールは若者向けに出来ているようで女性・男性の洋服やアクセサリーのショップ色々と入っていた。地下にはフードコートがあったので降りてみた。そこには中国のレストランの他日本系の牛丼の「すき家」やラーメン屋さんの「味千」などもあった。

フードコートというところは作っているところと食べるところにほとんど仕切りがないので歩いているだけでいいにおいがしてくる。当初はホテルで食べようと思っていたが、いかんせん、ホテルは高い。さっきのコーヒーだって1杯600円もした。夕ご飯をたべたら4~5,000円くらいは平気でするだろう。まだ4:30と時間的はかなり早かったが逆に中国の人たちで混んでいる時よりもむしろいいだろうと、ラーメン屋さんの「味千」で食べることにした。

「味千」は日本の熊本が本拠のラーメン屋さん。メニューには日本語も併記されている。考えてみたらこの時期に日本系レストランに日本人一人で入るのはかなり危険かもしれなかった。店内をぐるりと見回すと中国の人たちが黙々と自分のラーメンを食べている。ふと入り口の壁を見ると、そこにはA5サイズくらいの小さな中国国旗が掲げられていた。

反日デモ対策なのかしれない。今回の出張で初めて目にする反日デモ系のものがそれだった。チャーシュー麺、餃子、さらにはビール(キリン一番絞り瓶)という、もうこれは間違いなく日本的なセットを注文してしまった。店員さんは中国語で話しかけてくれたのでどうやら雰囲気に馴染んでいたようだと少しばかり安心した。「日本人ほろ酔いセット」(私が勝手に名付けたものです)は、しめて49元。つまり590円くらいといったところ。

さっきのホテルのコーヒー1杯より安いではないか。。トラブルもなくホテルに帰り、明日から始まる展示会出張の準備をして早々に床についた。こうして、今回6年目となる上海出張はいつもと違う趣でスタートしていった。

次ページへ >>