文具で楽しいひととき

■ 「ペーパーワールド チャイナ 2009 レポート」   (3/6ページ)


■ キラリと光る個性を持つ中国ステーショナリー

 日本の企業の取材もおおかた終わったところで、
 中国企業のエリアに入ってみることにした。

 この展示会では
 インターナショナルとは言え、その中心はやはり中国出展社。

 私の個人的な印象だが、
 中国の出展社は大きなブースを構えているところよりも
 一小間くらいの小さなブースの方が
 キラリと光るアイテムを持っているところがあるように思う。

 これはあくまでも私の勝手な見解ではあるが・・・。

 だから一小間のブースがズラリと並んでいる通路も
 一つとして見逃すわけにはいかない。

 体中を目にして、両サイドに立ちはだかるブースの商品に注意を傾ける。

 そうは言ってもキラリと光るものを見つけるのはそう簡単なことではない。

 一本の通路を端から端まで、
 くまなく見ても一つも見つからないことだってある。



■ ユニークな紙製ファイル


  


 そうした通路を何本か回ったところで、一つのファイルに目が止まった。

 私が以前から欲しいと思っていたマニラフォルダーが展示されていた。


  


 マニラフォルダーとは、日本でいう個別ファイルのこと。

 日本のものは、その多くが厚めの紙で作られている。

 それはそれで頑丈で良いのだが、どこか事務っぽさが残る。

 一方で、エセルテなどが以前出していたものは、
 ペラペラと紙が薄いのだが、
 アメリカの映画等にも出てくることが多く、
 私にとっては、憧れの存在でもあった。


  


 残念ながら日本ではエセルテがその取り扱いを中止してしまい、
 途方に暮れていたところだったので、
 仕事そっちのけでマニラフォルダーに駆け寄ってしまった。

 このブースは、中国の温州にある
 WENZHOU YATONG STATIONERY&GIFT CO LTDという文具メーカー。

 2年前に設立されたばかりで、
 主に紙を使ったファイルを得意としている。

 別にマニラフォルダーが専門という訳ではなく、
 あくまでも一つのアイテムに過ぎない。

 そのマニラフォルダーをきっかけにしてブースの奥まで入ってみると
 さらに面白いものが展示されていた。

 これは今年の新作だという。

 一見したところでは、
 女性用のやや大きめのハンドバックのようだ。


  

  


 ユニークなのは
 中がアコーディオンファイルになっているのだ。


  


 外のカバーは中国風の漢字をあしらったものや
 レザー風のものまでいろいろと揃っていた。

 ポケットは全部で19個とたっぷり。

 広げると、
 アコーディオンファイルというよりかは
 本物のアコーディオンのように大きく広がり出す。


   


 日本にはまだ輸出しておらず、
 主にイタリアやアメリカなどと取引をしているという。

 ちなみにマニラフォルダーを買わせて欲しいと
 あまりにも私が必死に頼みこんでいたら、
 ひとつサンプルとしてプレゼントしてくれることになった。

 マニラフォルダを欲しがっていた日本人は
 彼女の目にどんなふうに映っていたのだろうか。

 例えて言うなら、
 海外の方から、
 私たちに日本人にとってごくごく普通のクリアフォルダーを見て感激して、
 ぜひ欲しいと懇願されているようなものかもしれない。



■ つけペンとシーリングワックスセット


  


 いい取材ができると不思議なもので、
 またすぐいいブースと出会うことができる。

 その同じ通路で今となっては懐かしい
 つけペンのギフトセットを展示しているブースがあった。


  


 台湾から出展していたTAIWAN KENTAUR CORP.という会社。

 ボールペンや万年筆を中心にしたメーカーだが、
 今回は、アンティーク調のつけペンセットをズラリと並べていた。

 輸出先は主にヨーロッパだそうだ。

 木製の軸が1本、それにつける字幅が違うペン先が3〜4個セットされている。


  

  

  


 木製の軸以外に羽のものもあった。

 これは本物のガチョウの羽が使われているという。

 以前読んだ文具に関する歴史の本によると、
 その当時から羽ペンにはガチョウのものが使われていたそうだ。

 そういう意味で、
 これは正当派 羽ペンと言えるかも知れない。


□ペン先はスチール製で、
 もともとはスチールならではの銀色なものを
 あえてアンティーク風にやや落ち着いた曇った金色にしているという。

 使い方はペン先をボトルインクに浸して書くというもの。
 インクがなくなれば、再びペン先をインクに浸す。

 ペン先にとどまっているインクにより
 便せん1枚くらいは書けるそうだ。


    


 ボトルインク、そしてシーリングワックスもセットされているタイプもあった。

 ヨーロッパでは、10ユーロくらいで販売されている。

 日本でも販売して欲しいものだ。



■ アイデアに感心してしまったペン

 先程小さなブースにキラリと光る商品が多いと申し上げたが、
 早速、例外が出てきた。


  


 このFLOMOはメイン通路沿いにやや大きなブースを構えていた。

 専門は筆記具と消しゴム。

 たくさんのペンが展示されている中で
 思わず目をとめてしまったものがあった。

 中国のメーカーはディスプレイを漢字で表記しているので、
 私にもその特徴がおおかたわかる。

 しかし、このネーミングには驚いてしまった。

 何せ、「液体鉛筆」とあるのだから。


  


 文具好きならずとも、これは放っておけない。

 ディスプレイから1本、
 その「液体鉛筆」とやらを手に取ってみる。


  


 「液体鉛筆」と言ってはいるが
 これはどこから見てもボールペンではないか。

 と、通訳のジャンさんに私はやや不満げに話しかけた。

 すると後ろから営業マンらしき人が
 そこにある紙に書いてみてください、と言ってきた。(もちろん中国語で)

 その言葉に促され、私はそのペンで紙に書いてみることにした。

 まるでゲルインクボールペンのような軽い書き味。

 紙の上に生み出された筆跡は何とグレー色をしている。


  


 このインクの色が鉛筆なのだという。

 なるほどそういうことか。

 それではこれは、「液体鉛筆」というよりかは
 「グレーのボールペン」じゃないかと。
 私は日本語でポツリとつぶやく。

 それを聞きとったのか、
 中国の担当者は隣に展示してあった
 自前の消しゴムのパッケージをビリビリと破いて、消してみてください、と
 差し出してくれた。

 それを受け取り、消しゴムを軽く擦ってみると、
 みるみる消えていくではないか。


  


 その消し心地は実に軽い。
 鉛筆を消すときの比ではない。

 この消しゴムはこの「液体鉛筆」専用の特殊な鉛筆ですか?と聞くと、
 普通のものだという。

 なるほど、普通の消しゴムで消せるならば、
 「液体鉛筆」という名もあながち嘘ではない。

 しかし、わざわざこの「液体鉛筆」を持たなくても
 普通の鉛筆を持てばいいような気もする。

 これもボールペン愛用者の多い中国ならではなのだろう。



      >> 次ページに続く


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