2020.06.23(459)

「紫が美しくきらめくボディ」

プラチナ万年筆

#3776 センチュリー 富士旬景シリーズ 紫雲

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

富士の四季折々の美しい風景をイメージして創作されている「富士旬景シリーズ」。早くも4作目を数える。前回の「六花」ではこれまでにない大胆かつ繊細なカットで万年筆界隈を大いに賑わせた。大胆かつ繊細という意味では、今回もその流れを感じさせる。ただ、全く違うアプローチになっている。

■ 富士のまわりを染めあげる紫色の雲

紫の夜明

今回も富士を専門にする写真家ロッキー・田中氏の写真がモチーフになっている。「紫の夜明け」というその写真は、これから日が昇っていく一瞬を捉えたものだ。古来から紫色の雲は吉兆とされている。何か良いことが始まりそうな予感に満ちている。

その美しい紫色がそのまま今回のボディで表現されている。まるで写真から飛び出してきたという感じである。

■ 大きくきらめくボディ

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

表現として適切かどうかわからないが、はじめて手にし目にした時、まるで彫刻刀で慎重に削ったような加工だという印象を受けた。ひとつひとつの彫りが大きく、手にするとよくわかるが、指先でしっかりと感じられるくらい緩やかにくぼんでいる。これまでの「富士五湖シリーズ」「富士旬景シリーズ」では、こうした指先の広い面でくぼみが感じられるものはなかったように思う。どちらかと言うとライン状の溝による凹凸が中心だった。その意味で、今回はかなり新鮮だ。

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

それらのくぼみ加工を仔細に見ていくと、微妙に色々な形が混じっているのがわかる。クッキリとしたひし形をはじめ、中には楕円があったり、はたまた片側が楕円で反対側がひし形といった涙っぽい形のものある。大きさもそれぞれ違う。そうした様々な彫り加工がボディにちりばめられている。所々ほんのわずかではあるが、彫り加工がされていない部分もあり表面は変化に富んでいる。

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲今回のこのカットは「精密レンズカット」という

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

この加工は「六花」でも採用されたダイヤモンド刃を使った精密切削加工によるものだ。今回の加工では、ひとつのくぼみあたり6回ほど繰り返して少しずつ切削されていったそうだ。くぼみ加工の表面はツルツルとしていたので、てっきり仕上げに研磨をしているのかと思った。しかし、あくまでも切削だけで研磨は一切行っていないという。研磨をしてしまうと、凹凸のきわ(エッジ)が丸みを帯びてしまい、せっかくのきらめきが弱まってしまうからなのだそうだ。

目に近づけていたボディを少し離してみる。そしてそれをクルクルとゆっくりと回転させると、それらのくぼみ加工がキラキラと光を反射する。裏側のカットの反射も重なり美しくきらめく。手前の大きなきらめき、そして裏側の細かなきらめきが重なってなかなかの見応えだ。付属のコンバーターをセットする前に、まずはこのきらめきをタップリと楽しむのもいいと思う。

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

■ レンズカットを感じる握り心地

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

さて、見て楽しい大胆なカットは握り心地にどう影響してくるのか、気になるところだ。キャップをカプリと尻軸に優しくかぶせて、握ってみる。

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

大きなレンズカットは指先にしっかりと感じられる。自分のホームポジションを指先で探っていくと、人差し指はうまい具合にレンズカットのくぼみに吸い込まれるように収まった。親指はカットとカットの境目の出っ張ったエッジにきた。これはあくまでも私の場合であって、握り方や手の大きさで違ってくる。いずれにせよレンズカットを程よく感じられる握り心地だった。凹凸が気になると思ったが、独特さはあるものの意外と普通に握れる感触だった。とりわけ「六花」で大胆なボディ加工を経験された方にはすんなり馴染むことができると思う。ただ個人的な意見として、ギュッと力を込めて握るよりも7〜8割くらいの優しい心持ちで握る方がこのレンズカットを気持ちよく味わえると思う。

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

そうそうレギュラー版の#3776センチュリーと握り比べると、わずかではあるが「紫雲」の方が少し細い感じがした。レギュラー版はグリップのあたりにほんのわずかに膨らみを感じるが、「紫雲」ではその膨らみが指先に伝わってこなかった。やはり大胆にカットされたレンズカットのせいだろうか。



字幅は、EF・F・M・Bの4種類のみ。コアファンのいる中軟はラインナップされていない。限定本数は世界で3776本。日本にどれくらい割り当てられるかは未定とのこと。この美しい紫ボディにどんな色のインクを入れるか、それを思案するのも楽しい悩みになりそうだ。

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲プラチナ万年筆 ミクサブルインク「シルキーパープル」で書いてみた

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 紫雲

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 富士旬景シリーズ 紫雲  35,000円+Tax
2020年7月1日発売予定

協力:プラチナ万年筆

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