2020.04.14(454)

「この長さには意味がある」

プラチナ万年筆

キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆から発売されたノック式万年筆「キュリダス」。パイロットのキャップレス、ラミーのダイアログ3ともちょっと違うポジショニングの万年筆となっている。まだ手にして間もないが、ファーストインプレッションとしての使い心地をあれこれとレポートしてみたいと思う。

プラチナ万年筆 キュリダス

■ ロングボディ

第一印象として、まず感じるのがボディが長いことだ。ダーク系のスケルトンボディなので、その存在感はやや和らいでいるものの、それでも結構な長さがある。プラチナ万年筆の#3776 センチュリー、プロシオンそして私の中で大ぶり万年筆の代表格であるペリカンM800と並べてもひときわ長い。この長さは好き嫌いがあると思う。後ほど詳しく紹介していくが私はこの長さには好感を持っている。

プラチナ万年筆 キュリダス

そして、ボディも太い。M800あたりと比べてもほぼ同じくらい、キャップを内蔵している訳だし、それに伴い色々な機構を備えている関係でどうしても太くなってしまうのだろう。そして、ノックボタンも長い。当然ノックする時の「押ししろ」も長くなる。ただ押し心地としてはキャップレス(デシモ)と比べると少しばかり軽い印象。ノックをすると先ほどの長さは一気に息を潜める。

プラチナ万年筆 キュリダス

■ 気密性がアップしているらしい

今回の「キュリダス」は、いずれもスケルトン系のボディというラインナップ。そしてペン先の口が大きく開かれているので、ノックしてペン先が繰り出される細かな動きをじっくりと見ることができる。ペン先を横から見ると、その内部にペン先を覆い隠しているグレーの円柱形のパーツがある。その先端はスパッと斜めにカットされたようになっている。ノックを押すと、その先端のキャップというかフタ状のものがパカッと開く。注意深くその動きを観察してみると、まずフタが開いてから、おもむろに大御所登場といった感じでペン先が繰り出されてくる。つまり、ペン先はフタに一切触れないのだ。

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ社の説明によると、このフタはエラストマーという軟質樹脂で出来ているという。これによりフタの気密性がアップしているらしい。加えて、そもそもこのグレーのパーツの内部空間が狭く作られており、これも気密性アップにつながっているそうだ。私はまだ使って間もないのでわからないが、インクが乾きにくいのだという。この点は今後じっくりと確かめていきたいと思う。

プラチナ万年筆 キュリダス

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■ レギュラーサイズのコンバーターが使える

「キュリダス」はカートリッジインク、そしてコンバーターが使える。なお、コンバーターは別売りだ。使えるコンバーターは#3776 センチュリーと同じレギュラーサイズのものとなっている。これが個人的にとてもうれしい。キャップレス デシモでは「CON-40」という容量の小さなコンバーターだった。「キュリダス」ではタップリとインクを入れることができる。

そのコンバーターないしカートリッジインクを含めて、取り付け方が少々変わっている。と言っても難しいことはなく、ふた手間ほど多いだけだ。まず、ボディを分解する。ふつうならこれでコンバーターやカートリッジインクを差し込める訳だが、「キュリダス」の場合、さらに分解する必要がある(ちなみに他のノック式万年筆でもこの分解は必要)。中に収まっているペン先ユニット一式を取り出していく。外す時にちょっとコツがいる。ふつう外す時は引っぱるものだが、これは先にグイと前に押し込む。バネにの負荷を感じつつ、つなぎ目のところを見る。そこにコの字型の溝ができている。そのロックを解除すべく、溝を進めるように回していく、すると中に収まっていたペン先ユニット一式がスルリと取り外せる。

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

こうすると、いわゆるペン先ユニットが現れる。さらにもうひと分解が必要だ。後ろのメタルパーツを外していく。今度はバネの負荷はなくL字の溝に沿って回転させてロックを解除する。こうしてようやくコンバーターなりカートリッジインクをセットできるようになる。

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

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あとは先ほどの逆の要領でそれぞれの後パーツを取り付けていけばいい。コンバーターについて言えば、コンバーターにメタルパーツをかぶせた状態でインクの吸入ができる。うまい具合にコンバーターのクルクルと回すところが露出されている。なお、カートリッジインク交換の場合は、そのメタルパーツもその都度外さないといけない。

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダスメタルパーツにスリットがあるので、ボディ越しからでもインクの残量が確認できる

■ 書き味インプレッション

ノックして繰り出されたペン先は、ほぼその全体像が見えるくらいタップリと出ている。細長いペン先はステンレス製。どことなく「プロシオン」のペン先をコンパクトにした印象がある。

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

書いてみる。少し筆圧を加えてみるとクイクイとわずかにしなりが味わえる。これも「プロシオン」っぽい。ペン先がしっかりと出た状態で書いていける安心感がある。私の万年筆におけるホームポジションは、ペン先より少し上ぎみをやさしく握るというものだ。クリップはやや中央よりに付いており、そこを親指とひとさし指で沿わせる恰好となる。このクリップは取り外すこともできるそうだ。(付属の専用パーツで取り外す)私の場合は、このままでいいかなと感じた。

プラチナ万年筆 キュリダス

プラチナ万年筆 キュリダス

もし、ホームポジションがペン先側を握る方だと、ペン先下にある突起が指に触れてしまうかもしれない。



冒頭で長い長いとその点を強調したが、いざ書きはじめてみるとその長さはあまり気にならなくなった。ノックした状態だと#3776 センチュリーやプロシオンをキャップを尻軸にセットした状態に比べても、少し短いくらいだ。そのためだろう、自然な握り心地がある。リーズナブルでそして軽量なノック式万年筆として、新たな選択肢になると思う。

プラチナ万年筆 キュリダス

記事作成後記
長さでひとつだけ注意すべきことが個人的にあった。私のペンケースでは「キュリダス」を奥までしっかりと入れようとすると、ノックを少し押した状態になってしまった。それにより内部のフタが少し開いてしまうのだ。せっかくの気密性を台無しにしてしまう危険性がある。あまり奥までは入れないように注意が必要だと感じた。

プラチナ万年筆 キュリダス

1965年にプラチナ万年筆では「ノック」という万年筆を販売されていたそうです。

プラチナ ノック

プラチナ ノック

プラチナ万年筆 キュリダス  7,000円+Tax
公式キュリダスサイト

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