2016.01.05(346)

「バランスのよい書き味」

パイロット

コクーン ボールペン

パイロット コクーン ボールペン

私は「転がす」より「こする」の方が好きだ。

なんのことかと言うと、ボールペンより万年筆や黒鉛芯の方が好きということ。さらに分かりにくかったかもしれない。。ボールペンで書くというのは、紙の上でペン先のボールを転がしている。一方の万年筆やシャープペン、鉛筆といった黒鉛芯は、紙の上でペン先をこすっている。私はふだん、万年筆や黒鉛芯ばかりを使っている。つまり、こすってばかりいる。たまに転がすこともありますけどね。

私はこすって書く時、そしてころがして書く時で、使用シーンが明確に違う。

■「こすって書く」のは自分に伝えるため

こすって書くのは、「自分に伝える」ためというのが多い。たとえば、万年筆で原稿を書く、ノートに0.7mmシャープペンや鉛筆でアイデアを書く。さらには、0.5mmシャープペンで手帳に予定を書くというのもそうだ。いずれも、今以降の自分に伝えるために書いている。

■「転がして書く」のは情報を伝えている

では、転がす時はどうなのか。これは、誰かに伝えるためというのが多い。なにかの申込書に記入する、宅急便の伝票に書くなど。。転がす時は、どちらかと言うと、情報そのものを正確に書いている気がする。転がす時は情報を伝えているという意味で言うと、こする時は感情を書き表しているように思う。

普段こすってばかりなので、たまには転がしてみようではないかと、「OKB」に参加してみた。

昨年末にNAGASAWA神戸煉瓦倉庫店で行われていた「手帳総選挙」会場で「OKB」も同時開催されていた。「OKB」とは、「お気に入りのボールペン48」の頭文字をとったものだそうだ。自分のお気に入りのボールペンに投票するというイベントである。

48本全てを転がした中で、このペンの転がし心地、もとい「書き心地」が手の中に残った。

■ パイロット コクーン

パイロット コクーン ボールペン

パイロットのなめらか油性ボールペン「アクロインキ」リフィルを搭載したメタルボディタイプである。

アクロボールの書き心地は、これまであまり私の手に残らなかった。正直なところ、言うほどなめらかさを私は感じなかった。発売当初に書いてそう感じて以来、ずっと手にしてこなかった。

それが「OKB」で書いてみると、違う印象だった。以前よりずっとなめらかに感じた。アクロインクが進化したのか、私の手が変化したのかはわからない。「OKB」では、マルマンのニーモシネが試し書き用紙として用意されていた。そのすべらかな紙の上での転がし心地がとてもよかった。スルスル、スルスルと転がっていった。

私は、アクロボールを見直してしまった。

■ 隙のないデザイン

コクーンもその存在は知っていた。売り場でいつも遠目に眺めていた。

手にして間近で見てみると、デザインしすぎていないデザインがなかなかよい。ややでっぷりとした太軸なのに、中央にベルト状のアクセントがあるせいか、太い印象を和らげている。

パイロット コクーン ボールペン

その部分の段差もほとんどもなくスラッとしている。

正面から見たクリップもシュッとしたラインでボディによく馴染んでいる。ただ、横から見た時に付け根のところがやや取って付けた間があるのは少々残念。

パイロット コクーン ボールペン

パイロット コクーン ボールペン

パイロット コクーン ボールペン

■ バランスのいい書き味

スムースなボディラインは手の中にすんなり収まる。メタルボディ特有の程よい重さがある。

パイロット コクーン ボールペン

ライティングモードに入るための心のスイッチを入れ(私にはそういうスイッチがあるんです)、筆記体勢に入る。すぐに感じるのがバランスのよさ。やじろべいのようにしてバランスを調べてみた。すると、重心はほぼ中央にあった。

パイロット コクーン ボールペン

ボディのボリューム感でいったら、ペン先側より、後軸側の方がでっぷりしているので、てっきり後重心かと思っていたので意外だった。ボディをスルリと半回転させてペン先を繰り出す。なかなかなめらかなツイスト具合。

パイロット コクーン ボールペン

ノックにせよ、ツイストにせよペンの書き味は、このペンの繰り出しから始まっていると思っている。期待感を高めてくれるスムースだ。

再び、ライティングモードスイッチをオンにして(書かずにしばらく経つとオートオフになるんです)、書いてみる。こんどは「安定感」があった。それは、口金とペン先のがたつきの少なさ。

パイロット コクーン ボールペン

パイロット コクーン ボールペン

パイロット コクーン ボールペン

パイロット コクーン ボールペン

せっかくのなめらかなボールペンも、ここがグラグラしていたら台無しとなる。ボディを分解してみると、リフィルを挿入するところがリフィルとほぼ同じスペースに作られていた。

パイロット コクーン ボールペン

パイロット コクーン ボールペン

パイロット コクーン ボールペン

これもがたつき防止に一役買っているのかもしれない。と当時に、先ほど感じた重心の良さは、このつくりのせいだったのだろうか。

■ ペンにはバランスが大切

以前、好きな書き味のリフィルと好きなデザインのボディを無理矢理組み合わせて使っていたことがあった。ひとつひとつは好きなのに、あわせてみると、その好きは2倍になっていなかった。

たぶん、バランスが悪かったのだろう。ピザと刺身が好きだからと言って、まぜるとおいしくない。例えはおかしいかも知れないけど、それに近いものを感じる。

コクーンは、そのために作られたボディということもあり、アクロインクのパフォーマンスをしっかりと導き出しているように感じた。

パイロット コクーン ボールペン

パイロット コクーン ボールペン

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