2013.04.06(extra)

「スリムな多機能ペン」

トンボ

Zoom414

一本でボールペンやシャープペンが使える多機能ペンは、ボディがどうしても太いものという印象があった。何種類ものペンが中に入っているので、これはもうどうしようもないことと、なかばあきらめかけていた。しかし、諦めなくてもいいのだ。

このトンボZoom414は、まるで単機能ペンのようなスリムなボディをしている。しかも、そんな細い体の中に、シャープペン、黒ボールペン、赤ボールペンという必要にして十分な構成になっている。

トンボ鉛筆 ZOOM414 多機能ペン

その細さを実際に計ってみると95mmと確かにスリム。しかし、それ以上に細く見せているのが、ボディの上半身がさらに一段ガクンと細くなっている点だ。

トンボ鉛筆 Zoom414

実は、この部分を細くするというのは、多機能ペンにとっては、並大抵のことではない。その点を詳しくご説明しよう。一般の多機能ペンでは、それぞれのペンを繰り出すためのメカが搭載されている。そのメカがどこにあるかと言えば、ペンの上半身の中なのである。その関係で多機能ペンはどうしても太くならざるを得なかった。

そこで、Zoom414では、そのメカ自体のスリム化という難題に取り組み、見事、開発に成功した。そうして、この多機能ペンらしからぬスリム化をなし得たのだ。人間の場合もそうだが、スリムになるのは、並大抵の努力ではできないということなのだろう。

さらに注目すべきは、そのデザイン性の高さ。これまでの多機能ペンは、たしかに多機能ではあったけれど、デザイン性という点が置いてきぼりにされてきたように感じる。Zoom414ではスリムさを活かして、シンプルなデザインになっている。その中で目を引くのが角ばったクリップ。

丸みを帯びたボディと対象的にこのクリップが全体の印象をカチッと引き締めてくれている。スリムなボディでありながら、手にしてみるとずしりと程よい重量感がある。これは、真鍮で出来ているためだ。

■ 多機能なのにほどよい低重心バランス

筆記体勢に入ってみると、この重みが単なる重みではないことに気付かされる。「低重心」になっているのだ。どういうことかと言うと、ペン先側がやや重くなっているということ。なぜ、ペン先側をあえて重くしているか。それは、このほうが、手にしたときにペン先が自然に下側を向き、ペンの運びが行いやすくなるからだ。

見たところ、ペン先側が重くなるような加工は見当たらない。実は、スリムなボディを保つため、外側ではなくペン先の内側を二重構造にしている。

3種類のペンは、ボディをツイストすることで順番に繰り出される。これまでの色の付いたノックボタンを押し込むというのに慣れていると、ちょっとまどろっこしいと感じるかもしれない。このツイストはエンドレスに回転し、しかも逆回転も可能なので、慣れると、出したいペンが瞬時起動できるようになる。

多機能とスリムさという相反することを見事に実現したZoom414、色々なペンが使える便利さに、快適さということも同時に味合わせてくれるペンだ。

トンボ鉛筆 ZOOM414 多機能ペン

*このコラムは、神奈川新聞での連載「至福の文具」を加筆修正したもです。

□ ZOOM414の後継モデルZOOM L104はこちらで販売されています。

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