2007.03.27(127)

「日本語の美しさを味わう万年筆」

セーラー万年筆

プロフィット21梨地 長刀研ぎ

セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ

日本語が一番美しく書ける筆記具、それは、筆であろう。日本語が生まれた当時から使われているのだろうから当たり前と言えば、当たり前だ。筆の様に、とまではいかないが、美しい日本語が書ける万年筆がある。セーラー万年筆の長刀(なぎなた)研ぎだ。

セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ

先日、日本橋三越で開催された「世界の万年筆祭」で長原幸夫さんによるペンクリニックが行われており、そこで、買わせていただいた。ちなみに、ペンクリニックと言うと、手持ちの万年筆の調整というイメージがあるが、セーラーの新品を買って、調整をしてもらうという、もうひとつの愉しみ方もある。

ひと口に長刀研ぎの万年筆といっても長刀のペン先を持つ万年筆は、セーラーの中でもいろいろな種類がある。プロフィット21、プロフェッショナルギア、果ては大きなレアロなどなど。そうした中で、今回私は熟慮の末、プロフィット21梨地タイプを購入することにした。

梨地(なしじ)とは果物の梨のように表面がちょっとザラザラしているタイプだ。今回は、せっかくだから、セーラーの十八番である21金ペン先の24金仕上げにしてみた。24金ならではの、まさに黄金色がとても美しい。

セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ

この黄金色は、ペン先のみならず、クリップ、ボディ中央にあるリング、そして、インクを交換するときにはずすねじ込みの部分にまで及んでいる。

セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ

■ 梨地ボディは手になじむ

マットな梨地ボディに、黄金色がよく映えるのなんのって。。この梨地は、実用面では、手に馴染んで握りやすいという利点があるが、実は、もうひとつ、私がこの梨地を選ぶに至った大きな理由がある。セーラーの方にお聞きしたのだが、使い込む程に、艶消しの中にもいい感じの艶が出てくるのだそうだ。自分の道具が次第に味わい深いものになるというのは使い手にとって、とてもうれしいものだ。どんな味が出てくるか、今から愉しみでならない。

もうひとつだけ、このボディに関して触れておきたいことがある。それは、キャップを開け閉めするときの感触について。ちょっとこれまで味わったことがないくらいのスムースさがある。ふつうのネジ式キャップだと、開ける際に「カチッ」と音がしてはずれるものだが、これは、ほとんど無音のまま、滑らかに外れていく。

力のかかり具合も、いきなり軽くなるのではなく、じわりじわりと軽くとなるというもの。もちろん、キャップを閉める時も同じだ。この感触、言葉で言い表すのはなかなか難しいが、あえて言うならば、楽譜の記号にあるクレッシェンド(だんだん強く)、デクレッシェンド(だんだん弱く)といったらわかりやすいだろうか。

■ 見応えのあるペン先

ボディの話はこれくらいにして、本題の長刀に入ってみよう。その名前のとおり、ペン先は縦長に研ぎだされている。

セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ

セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ

このペン先の形により、ペンを縦に走らせると細い線が、そして、横に書くと幾分太い筆跡を生み出すことができる。この差は、カリグラフィーのように劇的に違うということではなく、あくまでも自然な違いになっている。しかし、長刀研ぎでずっと書き続けていて、普通の万年筆に持ち替えると、確かに横に引く線がとても細く感じられた。

この縦横の字幅の違いをうまく使うことで、筆跡に強弱がついて、表情豊かな文字を生み出すことができる。

セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ

トメ、ハネ、ハライも書けるようになるという。今回、ペン先を調整していただいた長原幸夫さんによると、こうした、縦長に研ぎだす手法は昔はよく見られたそうだ。それが、しだいに大量生産の時代へと突入し、手で研ぎだすこうしたペン先は姿を消していったのだという。長刀研ぎは、本来の日本の万年筆のかたちのひとつと言えるのだそうだ。

私はM(中字)を手に入れたのだが、書き味は、一般のペン先よりも紙に接する面が広いこともあり、とてもなめらさにあふれている。

セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ

時間と紙が許すのなら、いつまでも、どこまでも書いていたくなってしまう。この長刀研ぎを手にして、すぐさま魔法のようにトメ、ハネ、ハライが効いた美しい文字が私にも書けるかと期待したが、そう簡単にはいかなかった。

これは、私があまり字がきれいでないということが影響しているのだろう。しかし、試行錯誤を繰り返していく中で、あることに気づいた。ちょっと変な言い方かもしれないが、うまく書こうとしないということなのだ。肩の力をスウッと抜いて書いみると、とても自然な筆跡が書けるようになっていった。

どうやら、あまり筆圧をかけずに書いた方が、縦横の線の強弱もはっきり出せるようだ。万年筆で書いていて、気持ちよさに浸れるのは、書き心地の良さということもあるが、同時に、自分が書いた文字の美しさということも重要なポイントだ。

この長刀研ぎは、その両方を味あわせてくれるものだと思う。

セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ

*追記 2007年3月29日
当初、原稿では万年筆の裏面でも筆記できるように研いでいただいたとの記述をしておりましたが、その部分を削除いたしました。今回、私の書きぐせを見ていただき、研いでいただきましたが、セーラーさんによると、裏書きは一般的なことではなく(むしろお勧めはしていないそうです。)、ペン先の幅を狭めることにもつながり場合によってはインクの出が悪くなる恐れもあるそうです。

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