文具で楽しいひととき

今回のコラムは、いわゆる文具紹介ではなく、私なりの文具の使い方。つまりメソッドについて語ってみたい。この歳になると(最近この表現を使うことが増えていることに自分でも気づく)、いつも使う文具はほぼ固まっている。さて次のコラムは何を紹介しようかと考える時、正直あまり浮かばないことがよくある。紹介するために何か文具を買うというのは、全く気が進まない。文具は使うものだ。自分の仕事の中で本当に使っていくものだけを迎え入れたい。ならば文具をどう使っていくかの私なりの考え方を書いてみるのはどうだろうかと思い至った。これまでいろんな文具を紹介している中でそうした使い方も触れてきた。私の中でそのことはもうすでに書いたから、今更触れるべきではないと考えている節があった。でも文具をどう使っていくかはとても大事なことだと思う。それがなければ、文具は机の上に存在する物体にすぎない。文具を意味ある道具にしていくためにはメソッドが必要だ。ちょうどOSの入っていないパソコンが単なる箱でしかないのと同じように。
■ 考えるホームグラウンド
日々私は考えている。きっと多くの人もそうだろう。意識していなくても自然に何かしら考えていることはあるはずだ。以前の私は全くの無意識で頭の中だけで考えていた。それだと考えがあまり広がらないし、まとまりもつかないことが多かった。ある時、多分15年くらい前だったと思うが、ノートに向かって考えてみた。特にやり方もよく分からず、とにかく頭の中で考えたことをノートの上に書き出してみた。たったそれだけのことで私の何かが大きく変わった。頭の中だけで考えるのと、書いて考えるのとでは一体何が違うのか?
それは、「考えたことが見える」ことだ。
これが大きかった。頭の中はよく見えない。思い浮かべることはできるけど、それを広げていくことは私には難しかった。それが紙の上ではうまくいった。書くと頭の中で考えたことが紙の上に現れる。頭の中では主観だったものが私から引き剥がされ客観的存在になって冷静に見えてくる。それを見て「次の瞬間の私」がまた考える。つまりこういうサイクルだ。
書く → それを見る → 考える
そしてその考えたことをさらに「書く」というサイクル。
頭の中では窮屈でうまく思考を広げられなかったのが、紙の上では考えたことをその都度紙に書いていける。考えて書くことで頭の中に余白ができる。その余白でさらに考えるということが繰り返されていく。
■ 次の瞬間により伝わった方がいい
私が0.9mmペンシルや2.0mm芯ホルダーばかりを使う理由はこのサイクルに大きく関係している。頭の中で考えたことがどれくらいのニュアンスかを私は表現したかったのだろう。ボールペンでは常に一定の線になる。ましてやパソコンで打ったらさらに画一化される。考えている時に頭に浮かぶものには強弱がある。すごくいい考え、これはあんまり冴えないものといった具合に。それを私は書き分けたかった。黒鉛芯は薄くも濃くも自在に書き分けられる。それが心地よかった。脳で考えたことがその強弱も含めて書き表せることができるのだ。
■ 書くと動き出す
このノートに書いて考えるというのをはじめてから、企画を考えたりといった少し重めの仕事が少しずつではあるけれども、動き出していく実感があった。書くと動き出すことがわかった。なかなか進まないプロジェクトや懸案事項があったら私はA4のスナップパッドを広げ0.9mmペンシルを手に書いてみるようにしている。さすがにすぐ結論めいたことは出てこない。それでもわずかでも進んでこの方向もありかもくらいな光が見えてくることがある。そうした成功体験を少しずつ積み重ねていった。
すると「考える」ということが全然重い、面倒臭いことではなくなった。考えるときは書けばいいんだと思えるようになった。今では考えることが好きになれた。自分なりのメソッドと道具があるから大丈夫と思えるようになったことが大きい。
*
書くことって一体どういう意味があるのだろうか。ふと思うことがある。おそらくそこには色んな意味がある。私にとっては頭の中を見えるようにすることがメインだ。自分の頭のことは自分ではわかっているつもりでも、実際に書いてみると思わぬ発見があったりする。書くことで、そのことに気づける。
ポスタルコ スナップパッド A4
ぺんてる P209
関連コラム
「ブルー紙面のノート」ポスタルコ スナップパッド+青いコピー用紙
「書き回していくノート」ポスタルコ スナップパッド A4
「ライトな本格シャープペン」ぺんてるP207 P209
文具コラム ライブラリー
pen-info SHOP