2019.01.22(423)

「機能美 ロングセラー鉛筆削り」

カール事務器

エンゼル5 ロイヤル

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

そろそろ買うべきだと思った。

私はこれまで鉛筆削りは、いわゆる手持ち式の穴に鉛筆を入れてグリグリと回していくタイプばかりを買って使ってきた。心のどこかで鉛筆は私にとって「サブ筆記具」だと思っていたフシがあったのだろう。だからドシンと机の上に置く鉛筆削りではなく、引き出しやペンケースにそっと忍ばせられる、小さい方がいいと思っていた。でも、今は何かを考えようと白い紙に向かう時、鉛筆ばかりを使っている。たまにシャープペンも使っているが、鉛筆は私にとって、もはや「サブ筆記具」なんて呼んだら鉛筆に怒られてしまいそうなくらい、よく手にしている。あと、手持ち式の鉛筆削りばかりを使っていたもうひとつの理由がある。それは、外出先で鉛筆を削るかもしれないということがあったからなのだ。でも、ここ2年くらいを振り返ってみても外で鉛筆を削った記憶がない。削るのは自宅の書斎や事務所ばかりだった。膝の間にゴミ箱をはさんで削りカスをこぼさないようにグリグリと削っていた。この状況をふと考えて、自分のやっていることのバランスの悪さということにようやく気がついた。

そして、ずっと気になっていたカール事務器のエンゼル5 ロイヤルを迎え入れた。

■ 意外とコンパクト

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

「エンゼル5」は1963年の発売以降50年を超えるロングセラー。一時、日本では販売されず海外への輸出のみされていた時期もあった。その後2010年に日本での販売が再開され現在に至る。

大きいと思い込んでいたが、それほどでもなかった。しかし、手にするとメタルボディならではの重みがある。使う時はじっと動かさずにしておくものなので、この重みは安心感がある。

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り塗装がとても美しい

■ 新品の鉛筆を削ってみる

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

大きく上に張り出しているつまみをギュッとつまみ、鉛筆の穴を広げてさしこみつつ銀色のプレートをグイと引き出す。そして、ハンドルを握り回す。六角軸の角を削っているなというわずかな重みを感じながらガラガラと回し続けていく。数えてみたら15回転ほどでカラカラと回す感触が軽くなった。削れた合図だ。手持ち式の時よりも圧倒的に早く削れる。

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

■ 美しい削り仕上げ

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

削られた鉛筆はわずかに木軸のアウトラインが弓なり状に内側に反っている。これを「シャープライン」と呼ぶ。画数の多い日本語を書くのに適している。中でも私の目を捉えたのが、木軸の美しい削られ方。指をはわせるとうっとりするくらいスベスベとしている。

なお、エンゼル5 ロイヤルには2段階の削り仕上げが選べる。ハンドルの根元の黒いところで切り替えられる。あまり尖らせないモード(右側)も選べる。

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り2段階の削り仕上げはこのように違う

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り左が「エンゼル5 ロイヤル」で削ったもの。右がKUM「マスターピース」で削ったもの

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り細かな削りカス

取説にはメインテナンス方法として、刃を取り外して掃除する方法が紹介されている。それによると、ハンドルの根元のおよそ3時と9時のあたりに突起があり、そこに指をかけ時計と逆回転をさせていく。実際にやってみると簡単にハンドルもろとも外れて刃が出てきた。削りにくくなった時は、この方法で刃を出して、鉛筆の先端で削りくずや芯粉、折れた芯などを取り除くのだという。

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

メインテナンスに限らず、エンゼル5の心臓部である刃を拝めるのは楽しい。らせん状の刃が計10枚。円柱状のまわりに作られている。以前、カール事務器さんにお聞きしたところによると、棒状の鋼材をもとに刃を削りだしていくということだった。その刃を頑丈にするために焼き入れをしていく。焼き入れをすると頑丈にはなるが、多少変形をしてしまう。それを一枚一枚研磨して形を整えていく。そして表面には熱処理を加え摩耗に強くしていくという手の込んだ加工工程。刃の角度も削り仕上げということだけでなく、ハンドルを回す時に必要以上に重くならないように絶妙なバランスに設定されている。

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り



自分好みの削り仕上げが自由に作れるからと肥後守で削ってみたり、手持ち式も色々なタイプを使ってきた。そうした経験は決してムダではなく大切なステップだったと今も思う。それらの経験を踏まえて、今たどりついたエンゼル5。今の私にはこれがしっくりとくる。鉛筆をよく使うようになって削る時間がかからず書くことにたっぷりと時間を使えるところがいい。鉛筆ヘビーユーザーには頼もしい存在だ。でもまた、肥後守やKUMのマスターピースを使ったりもしていくことだろう。エンゼル5ロイヤルを使い「鉛筆削り心地」の新しい体験値がまた私の中にインストールされた。これしかない、などと堅苦しいことを考えずに大らかな気持ちでつきあっていけばいいのだと思う。

カール事務器 エンゼル5 ロイヤル 鉛筆削り

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