2009.07.28(185 - 1)

「ISOT2009 1」

ISOT2009

国際 文具・紙製品展レポート

ISOT2009 レポート

2009年7月8日から10日東京ビックサイトで開催されたISOT (国際文具・紙製品展)。

ISOT2009 レポート

今年でなんと20周年を迎えたという。人間で言えば、二十歳ということになる。私がISOT事務局に在籍していたのは第1回目から10回目。つまり、かれこれISOTから離れて10年という歳月が過ぎ去ったことになる。時の流れの早さともにISOTの成長ぶりをしみじみと感じてしまった。

ただ、ちょっと気になる点もなくはない。私が関わっていた時は ISOT 単独での開催だったが今やギフトやデザイン雑貨、オフィスセキュリティなどすそ野のぐっと広がってきている。色々な関連商品が見られるのはそれはそれでうれしい。ただ一方で、ISOTがその中の一部分と化してしまっているのはやや寂しい気もする。昔は、ISOTだけで結構な規模であった時代もあったので。

さて、今回私はスケジュールの関係で初日だけしか取材に行くことができなかった。その分、朝のオープン早々の10時から閉館ぎりぎりの夕方6時まで、お昼ご飯も十分そこそこでホットドックをパクついて済ませほどんどの時間をISOT会場を歩きまわるのにあてた。そんな中で気になったステーショナリーをいつものようにレポートしてみたいと思う。まずは、筆記具から。

と言っても、ISOT全体からすると筆記具メーカーの出展は、めっきりと少なくなっている。

■ トンボ鉛筆

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ISOTのメイン入口から入ると、目の前に大通りがまっすぐ伸びている。それを人垣をかき分けるように進んでいくと、ちょうど銀座4丁目交差点のような十字路に出くわす。その一角のいつもの位置にトンボ鉛筆のブースはあった。

トンボブースの中で私が最も引きつけられたのがこの「ONBOOK おんぶっく」というペン。

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これは手帳にピッタリとフィットさせて携帯できるという画期的なもの。これまでのペンも手帳にセットできることはできたが、今回のものはその「寄り添い具合」が並じゃない。

手帳の背の隙間に「ONBOOKおんぶっく」のクリップを差し込んで、本体は外側に出すという格好でセットする。

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セットしたところをご覧になれば、その隙間のないフィット具合がおわかりいただけると思う。その秘密は、ほぼまっすぐに伸びたクリップ、そしてクリップが付いているボディの面が窪んだような形になっているところだ。

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手帳の背というものは、大体において緩やかなカーブを描いている。先ほどの窪んだペン、ペンを上から見てみると、ちょうど豆のようなスタイルになっているのだが、そこにピッタリとセットできる。

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これにより、手帳の背にペンがまさに一体化されたようになる。そして、このペン差し心地がとてもスムーズで気持ちよい。それもそのはず、クリップの差し込み口は、ボディがまるでスキーの板のようになだらかな坂道になっている。

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手帳にペンをセットするといえば、これまで、ペンホルダーがあった。しかし、これだとペンがぐらぐらとやや不安定になることがある。しかしこれならそうしたことはない。

この「ONBOOKおんぶっく」にはボールペンタイプとシャープペンタイプが揃っている。

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シャープペンタイプはノックを押すだけでカチカチと芯が出てくるが、ボールペンは、ノックを押してペン先を出し、ペン先を引っ込めるには、ノックではなく先ほどのへっこんだボディにあるボタンを押すという方法。

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片側が窪んだ独特なボディはある意味徹底されていて、シャープペンのキャップを外すと、ほぼ同じような形をした消しゴムが出てくる。

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このスタイルの消しゴムは、ふつうの円柱型のものよりも細かい所を消すのに良いかもしれない。背に隙間さえあれば手帳だけでなく、本にセットすることも可能。

本を読みながら線を引いたり書き込むことが多い方には、うってつけのペンだ。手帳や本にまるで「おんぶ」されたような格好になるペン。「ONBOOKおんぶっく」というネーミングは実に的を得ている。

そして、これは御馴染みのコンパクトボールペン「Pfit ピーフィット」。

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ニューヨークと日本のMoMAショップで販売されたり、ヨーロッパのデザイン賞 red dot賞を受賞する等、多方面からそのデザイン性が高く評価されているペンだ。その透きとおったジュエルタイプが登場。

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透きとおっているのはクリップ。それにあわせて、本体の白さにもやや透明感が増している。

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涼しげなボディが、これからの夏の季節にピッタリとあいそうだ。

また、トンボ鉛筆の十八番である鉛筆でも新製品が展示されていた。それが、学童文具シリーズ「ippo! イッポ!」。例えば、この色鉛筆セットは、ケースを大幅に見直したもの。

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これまではフタを起こして開けるものだったが、これはスライド式で完全に蓋が取りはずせる。しかも外したフタは、ケースの底に敷くことで、机の上で必要以上にスペースを取らない。

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ふたの端っこにはカラーチャートのようなものがあり、その色に合わせて色順に片付けられるようになっている。確かに、文字で書かれているより、こうした色になっている方が、わかりやすい。

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それからこれは学童向けながら思わず私も、欲しくなってしまったものだ。「clipグリップ」といういわゆる鉛筆を握りやすくするためのもの。

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取りつけるにはちょうど洗濯ばさみのように広げてその間にスルスルと鉛筆を差し込んでいく。

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ラバーボディでしっかりと握れるようになっている。また、グリップとしてだけでなく、短くなった鉛筆の補助軸としても使える。

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新品の長い鉛筆のときから、短くなっていっても、ずっと使い続けられるのがいい。トンボデザインコレクションでは残念ながら今回は新作はなかった。

■ ぺんてる

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ぺんてるは、日本だけでなくアメリカ、ヨーロッパなど広く海外に筆記具を輸出していることでも知られている。そうした輸出用のペンはデザインが海外仕様になっていて、日本のペンにはない独特なカラーリングで個人的にはかねてより注目していた。しかし、日本では、そうしたペンは残念ながら手に入れることができず、指をくわえて見ているしかなかった。

そんな中、待ってました!というペンが発表された。それが「エナージェル ユーロ」だ。ぺんてるを代表するゲルインククボールペン「エナージェル」。

滑らかな書き味、そして水性でありながらインクの乾きがすこぶる速いという特徴で、日本のみならず、欧米でも人気を博しているペンだ。今回はユーロということでシックなダークブルーのボディ。「ユーロ」という雰囲気をボディ全身からみなぎらせている。そして、最大の特徴は、軸がこれまでよりもぐっと細くなっているところ。

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エナージェルの滑らかな書き味をより軽やかに楽しむことができる。

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エナージェルというと、これまでやや太めの字幅が多かったので、私は宛名書きなどでよく使っていた。

しかし今回の「エナージェル ユーロ」では日本人にはうれしい0.35mm の極細もラインナップ。これならノートなどの普段使いのペンとして楽しめる。もちろん、字幅には定番の0.5mm、0.7mm、1.0mmも揃っている。これは発売が待ち遠しい。

■ プラチナ萬年筆

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プラチナ萬年筆ブースで、万年筆の新作を発見した。ISOTで万年筆が見られるブースは数少ないので、これは貴重である。文具の展示会で、万年筆の展示が珍しいというのは、なんとも寂しい話である。

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さてさて、その新作の一つがセルロイドの万年筆。

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プラチナのセルロイド万年筆と言えば、赤を基調にした通称「金魚」がある。今回のものは、同じセルロイドでも違った色合い。鮮やかさの中にも大人の落ち着きがあるブルー。正式には「ミッドナイト オーシャンブルー」というそうだ。ショーケース越しで、手にとって見ることができなかったのだが、所々黒いマーブルらしき模様もちりばめられていた。

ボディの軸は緩やかな8角軸。14金ペン先がついて価格は50,000円+Tax。

そして、これはボディの中央にグルリと巻かれたリング部分を24金の象嵌(ぞうがん)で仕上げたモデル。

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象嵌とはその昔、侍の刀のつばの装飾でよく使われたものだという。書きながら純金の装飾が楽しめるというペンだ。14金ペン先がついて価格は30,000円+Tax。複合筆記具『ダブル3アクション』3機能(画像右)は20,000円+Tax。

そして万年筆のインクにも新製品があった。「本格ブルー文字用の PIGMENT INK」。すでに店頭での発売も始まっているようだ。これは顔料系のインクで、耐光性、耐水性に優れているというもの。インクボトル越しから見えるその色は紫に近いような、なんとも深いブルー。

先ほどの、ブルーボディの万年筆と合わせると良いかもしれない。

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このほか、万年筆のインク消しも登場していた。

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プラチナ萬年筆では、万年筆だけでなく、一般筆記具でも注目すべきものがあった。それが、「耐芯構造」という名のシャープペン。

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ご存知のようにプラチナ萬年筆では、これまで「プレスマン」、「ゼロシン」等数々の名作シャープペンをつくり出してきている。今回の「耐芯構造」はその集大成といっていい。「耐震」ではなく、「耐芯」であることに注目いただきたい。つまり、芯の折れをできるだけ防ぐというものである。

この「耐芯構造」というネーミングもユニークだが、その中心技術もさらにすごい名前が付けられている。「オ・レーヌガード」というのがそれだ。では、この「オ・レーヌガード」を私の理解している範囲でご紹介しよう。

シャープペンには芯をがっちりと抑える「チャック」と呼ばれるパーツが中に備わっている。ペン先のパーツを外すと、真鍮のような色をした3つのパーツで芯をつかんでいるアレだ。一般にはこれで芯をつかんで、あとは口金のガイドパイプだけで芯を支えるというものが多い。

今回のものでは、このむき出しになった部分の芯を全方位包囲から支えるようにしている。そのパーツが「オ・レーヌガード」というものだ。今回のシャープペンでは、その「オ・レーヌガード」構造が見えるようにペン先がスケルトン仕様になっている。

黄色と青のパーツがそうだ。いずれのパーツも樹脂製。

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これによりチャック以降で芯が折れるのをできるだけ防いでいるのだという。説明いただいた方は、このシャープペンを私の目の前でポロリと床に落として見せてくれた。

落としたペンを持ち上げ、カチカチとノックをしてみると、中の芯は折れずにちゃんと出てくる。なるほど、こういうメリットがあるのだ。

さらにこの「耐芯構造」には、プラチナ従来の「ゼロシン機構」そしてプレスマンで定評のある強い筆圧で書いても芯がクッションのように引っこむ「セーフティスライド機構」もあわせ持っている。こんな多機能でありながら200円+Taxというのだからアッパレだ!

そして、この同タイプのボディには、油性ボールペンタイプもある。さすがにこちらは耐芯では、ないのだが、インクがとても低粘度であるのが特徴。

どうぞ試し書きしてみてくださいと、さし出されたメモ用紙に書かせていただいた。立ったままの不安定な筆記ながら実にスムーズな書き心地だった。あまりにも気持ちよく書けたので小さなメモ用紙の紙面はほぼ真っ黒になってしまった程だ。

油性ボールペンにしては、結構な滑らかさがあるようだった。「耐芯構造」シャープペンの影に隠れてしまうのはもったいない油性ボールペンであった。

続いては、紙製品のご紹介を。

■ デザインフィル

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いつも、まるでテーマパークのような展示で私たちを楽しませてくれているデザインフィル ブース。今回のテーマはピクセル(画素)。ブースにはブラックをベースに画素をイメージした
四角い模様がちりばめられていた。

これはデザインフィルの一人一人がいろんな形で融合することで、あらたなプロダクトが作られる、ということも込められているのだという。

さて、今回もデザインフィル恒例の社内デザインコンペが開催されていた。今回のお題は、「色紙」。

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「デザインフィル」と「色紙」というとちょっと意外な感じがするかもしれない。しかし、実はデザインフィルでは「色紙」のメーカーとしてはとても有名。市場ではかなりのシェアを誇っている。特にデザイン性の高い色紙では定評がある。

色紙といえば四角いものという固定観念があったが、今回のコンペではそうした常識を覆してくれるユニークなものがいろいろと発表されていた。その中で気になったものを幾つか。

□「メッセージ バーガー」

四角い色紙にパンやハンバーガー、目玉焼きなどがあり、その裏面にメッセージが書き込めるようになっている。しかも、それぞれが切り抜けるようになっており、まさに、ハンバーガーのように重ね合わせてボックスに入れておける。ハンバーガー好きの人にはうってつけの色紙といえよう。

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こちらは、黒板スタイルの色紙。卒業の時に先生に送るのに相応しい色紙だ。

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今や懐かしい存在となりつつあるレコード。ジャケット(懐かしい表現だ、)もついていて思わず飾っておきたくなってしまう。

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色紙を書くときに意外と困るのが、それぞれが書き込むスペースだ。ケーキをカットする時のようにみんな均等にしてあげないといけない。これは、そんな書き込みスペースを確保した線でデザインしてしまったという一石2鳥的なアイデアだ。

凹凸で線を表現することで一人一人のメッセージが主役となって目立つのがいい。

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こちらは大学ノート風の色紙。拡げると、中は横罫線ノートになっている。いたずら書き風に書き込むと思い出深い色紙になりそうだ。

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ありそうでなかったホームベーススタイルの色紙。球児たちの思い出を書き込むのにピッタリだ。

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デザインフィルブースでは、こうしたコンペ以外にももちろん新作も発表されていた。

中でも注目したのがMD ノート用のカバー。

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MDノートは、ご存じのようにデザインリフィルが誇る MD 用紙(ミドリダイアリー用紙)を前面に打ち出したノートである。

このノートはその飾り気のないMD用紙だけの無垢らしがいいのだが、わざわざそのMDノートにカバーをかける必要があるのだろうかと、個人的には、この説明を受けつつも多少の違和感を覚えた。しかし、これは MDノートの無垢らしさにさらに輪をかけた無垢なカバーになっているので、先程の考えはスバヤク撤回した。

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カバーの素材は牛のキップ革。ヌメ革と言われるもので植物タンニンをする以外は余計な着色は行っていないという。そんなこともあり、本来の革が持つ風合いがそのまま残されている。開いた右上には「隠しペンホルダー」が備わっている。

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これは、まさに「隠し」であり使わないときは埋め込んでおくことができる。必要な時だけ起こして使えるのがいい。

しかも、ホルダーの向きが外側ではなく、あえて内側を向いているところも気に入った。これなら、ノートの携帯時にもペンが必要以上に飛び出さず邪魔にならない。

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使い込む程にどんどん色が変わり、愛着が増していく。
ノートのカバーも育てがいがあるというものだ。

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【左が新品、右が使用した状態】

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「和」のようで、それでいて「アジアン テイスト」も感じさせる「紙コモノ」の新作が発表されていた。「紙コモノ」とは、大人の女性をターゲットにした「手渡しのお付き合い」を提案するシリーズ。

これは伊予和紙を使い、紙にコシがありつつも独特な優しい風合いがある。

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かなりビビッドな色使いをしながらも、派手という言葉とはほど遠い上品さがある。金封やポチ袋は、閉じている時は、花がつぼみになっていて、封を広げると中から花が大きく開いた絵柄が出てくるという開ける楽しさが味わえるものになっている。

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金封には専用ケースも別売りされている。メッシュタイプで、中の絵柄がうっすらと垣間見える奥ゆかしさがある。

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