2007.12.18(145 - 1/2)

「PWチャイナ 2007 1」

ペーパーワールド チャイナ

2007 展示会レポート

ペーパーワールド チャイナ 2007 paperworld China 2007

2007年11月20日~23日の3日間、上海新国際エキスポセンターでペーパーワールド チャイナ(国際文具・オフィス機器展)が開催された。ペーパーワールドと言えば、ドイツ フランクフルトが有名だが、実は、アメリカをはじめ各国でも開催されている。その中のひとつ、成長著しい中国でも3年前から開催されはじめ、中国経済同様、展示会も年々成長をみせている。

今回のペーパーワールドチャイナでは、世界23カ国から総勢600社もの出展社が参加し、過去最大の規模だった。

ペーパーワールド チャイナ 2007 paperworld China 2007

23カ国とは言え、その大半は中国、台湾、香港などが中心。聞くところによれば、中国の文具マーケットは、例えば低価格の筆記具の中で国内シェアが最も多い大手メーカーでも、そのシェア、わずか10%にも満たないと言う。

これは何を意味するかというと、それだけ中国にはたくさんのメーカーが存在するということだ。この展示会には、まさにそのことを証明するかようにたくさんの中国メーカーが、それこそひしめくように出展していた。

出展社の数こそ中国が多いが、ヨーロッパのメーカーや日本のOA機器メーカーなどひときわ大きなブースを構えているところも見られた。たくさんの中国メーカーの中に、いくつかの海外メーカーがあるという、まさに今の中国の文具マーケットの縮図のような展示模様だった。

そんな中、キラリと光る個性を持った中国ステーショナリーをいくつか見つけることができた。今回のレポートでは、個人的に注目したそうした中国ステーショナリー、そして欧米や日本のメーカーが中国市場に向けてどんな商品を展示していたかについてもあわせてお届けしていきたい。

■ 環境に配慮したステーショナリー

中国というと、急発展の影で、環境破壊が大きな問題になっているという報道を日本でもよく耳にする。そういうイメージあったので、中国出展社の間から「環境」という言葉が聞こえてきたのにはちょっと意外だった。

例えば、この上海利明工芸品有限公司という出展社がそうだった。ここは再生紙を使ったファイルを作っている。

ペーパーワールド チャイナ 2007

中国では、生産コストという面で言うと木材を原料にしたバージンパルプで紙をつくる方が、再生紙を使うよりも安く作れるという。なのに、なぜ、わざわざ余計なコストをかけてまでこうした再生紙を使った商品を作っているのか、社長とおぼしき人に聞いてみた。

昨年、中国政府は、政府機関では、環境に配慮した備品を使うようにという決議がされたのだと言う。それを受けて、この会社ではいち早く取り組んだのだそうだ。再生紙というと、紙質やデザインなどで制約が多いと思っていたが、ここに並んでいたものは、再生紙と説明されなければそうとはわからないような見映えだった。

ペーパーワールド チャイナ 2007 paperworld China 2007

PEAK

PEAK

PEAK

表面にはまるで革のような凹凸感のあるエンボス加工が施されていた。単に再生紙を使っているということだけにとどまらず、付加価値があったのには、感心してしまった。これなら、進んで再生紙を使いたいという気持ちも起こってくるというものだ。こうした環境配慮の波は、紙だけでなく合成皮革の分野にも及んでいた。

手帳やノートなど合成皮革を使った商品を出展していたブースで「この製品には『PU』という素材を使っています。」という声がたびたび聞かれた。「PU」とは、樹脂の一種で合成皮革の材料としても使われている。以前よく使われていた「PCV」という素材よりも環境に優しい素材として、近年注目を集めているそうだ。

その「PU」の素材メーカー「GIANT GOAL」がオリジナルのステーショナリーを展示していた。

GIANT GOAL

「PU」と一口に言っても、色の数、表面にエンボスの入ったものまで、その品揃えは目を見張るものがあった。

GIANT GOAL

その「PU」を使ったステーショナリーの中に、クリップボードがあった。面白いのは、クリップは見あたらず、折り返しの部分に仕込まれたマグネットでパッドを固定できるようになっていた。カラーバリエーションもブラウン、ホワイトなどがあり、思わず欲しくなってしまういいデザインをしていた。

GIANT GOAL

ペーパーワールド チャイナ 2007 paperworld China 2007

GIANT GOAL

また、ドキュメントケースや壁などに掛けられるようフックのついたタイプなど、デザイン・アイデアともにオリジナリティにあふれていた。

GIANT GOAL

GIANT GOAL

ペーパーワールド チャイナ 2007 paperworld China 2007

聞けば、日本の文具メーカーともすでに取引をしているという。先ほどの再生紙を使ったステーショナリーでもそうだったが、環境への配慮ということだけでは差別化が難しいからなのだろうデザイン面で、各社しのぎを削っているようだった。

■ デザイン性の高いノート

中国出展社の多いエリアを歩いていて、これは、ヨーロッパの出展社ではないだろうか、と思ってしまう洗練された商品を並べているブースがあった。

香港の「GOODVIEW ENT. CHINA LTD.」というメーカーだ。「nought & crosses」というオリジナルブランドを展開しており、主にハードカバーのノートやアルバムなどが展示されていた。ちなみに「nought & crosses」は日本で言うところの線を縦横2本ずつ引いて行う○×ゲームのことだそうだ。

nought & crosses

nought & crosses

中でも、目を引いたのは、開催を目前に控えている北京オリンピックをデザインモチーフにしたノート。五輪にちなんで、5冊セットになっていた。この表紙もやはり「PU」製だった。

nought & crosses

nought & crosses

この他、本革を使ったものなど、どれもデザインがとてもシンプルで日本でも十分売れそうなものばかりだった。

nought & crosses

nought & crosses

nought & crosses

nought & crosses

価格は、ものにもよるが、大体8ユーロ~10ユーロと、決して安いとは言えない。そのため、中国市場ではほとんど販売されておらず、彼らは欧米市場をメインと捉え、デザイン・クオリティにもこだわって商品づくりを行っているだそうだ。

洗練された印象を受けたのは、当然と言えば当然。日本にはまだ進出していないという。

■ 本格万年筆

今回の展示会で、個人的に楽しみにしていたのが、万年筆。きっと中国ならではの面白いものがみられるのだろうと期待に胸をふくらませていた。しかし、いくら会場を探しても万年筆はほとんど見あたらなかった。あるのは、ボールペンばかり。

気になって、今回通訳をお願いした上海在住の大学院生にそのことを尋ねてみた。彼女は、私をまるで不思議な生き物でも見るように、こう話してくれた。「万年筆はインクをいれなくてはいけませんし、不便じゃないですか。中国では万年筆はほとんど使われていませんよ。」

これが中国の人全ての意見ではないと思うが、すくなくとも若い世代はそうなのだろう。中国の人の間では、もっぱらボールペン、とりわけゲルインクボールペンが好まれているとのことだった。

これはきっと、漢字という細かな文字を書くのに、油性よりもゲルの方が都合がよいからなのだろう。特に中国は日本のようにひらがながなく、一文字一文字が漢字なので、細く書けることが重要なのだろう。実際、ゲルペンの中でも細字が人気だという。中国らしい万年筆を取材するという当初の私の目論見はもろくも崩れ去りそうに見えた。

そんな、ほぼあきらめかけたところで、不意に「GOLD PEN 」という看板が目に飛び込んできた。GOLD PENと言えば、金ペンのことではないか。もしやと思って駆けつけてみると、そこには万年筆が展示されていた。

HAOLILAI GOLD PEN

HAOLILAI GOLD PEN という会社で、8年前から万年筆を作っている上海のメーカー。中国では、英雄(HERO)という老舗万年筆ブランドが70年もの歴史があるので、このHAOLILAIはかなり後発ということになる。しかし、万年筆の輸出高という面では、中国の万年筆メーカーの中でトップなのだそうだ。

「HAOLILAI」というオリジナルブランドの万年筆は、どことなくヨーロッパを思わせるデザインの中にも、金や銀をふんだんに使っていて中国らしい絢爛豪華さも併せ持っている。GOLD PENという社名に相応しく、ペン先は14金製。

HAOLILAI GOLD PEN

ペン先も含めて全て自社の工場で作られている。ものにもよるが、 価格は、大体1,000元だと言う。現地中国の人たちからすると、かなり高額なペンということになる。

何百社も出展している展示会で万年筆にほとんど出会えなかったということが、先ほど通訳の人も言っていた中国の万年筆事情を如実に物語っているようだ。

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