2025.04.29(581)

「普段着の文字で書いていける」

満寿屋

pen-info 原稿用紙

pen-info 原稿用紙

10年以上はおそらく使っていると思う。草稿を書くときのホームグラウンドとなっている。原稿用紙というよりも草稿用紙、もっというなら殴り書き用紙でもある。これに向かってパイロット カスタム743 ウェーバリー、カスタム823 B、ペリカン M800 Bあたりを手にすると、頭の中に浮かんでいることがスルスルと文字として出てくる。この紙はその出しやすさが格別。

■ ユルユルとしたマス目

pen-info 原稿用紙

サイズはほぼB5版。ヘッダーにpen-info のロゴ、右下には私の名前を入れている。ルビ罫のない「障子マス」と呼ばれる長方形のマス目。そのマス目の線がユルユルして所々途切れている。不完全な儚さがある。

pen-info 原稿用紙

ふつうマス目はまっすぐな線で形づくられているものである。それをあえてユルユル途切れ途切れに特注の時にしてもらった。もともと満寿屋さんの既製品の102という原稿用紙があり、それをベースに作ってもらっている。

ユルユルとしたマス目に向かうと綺麗に書かなければという気持ちはハナから起こらず、自然と緊張もほどけていく。私が原稿用紙に求めることはキレイに書くことではなく、頭の中にある考えをスムーズに出していくことである。キレイにまとめるのはパソコンの仕事である。であるならば、肩の力を抜いて書けるようにすべきだと考え、こういうマス目にした。それが私にはとても合っているようで10年以上も使い続けている。

紙面にはマス目があるが、私はそこに一文字ずつ書いていない。横の線だけはギリギリ意識しているくらいだ。ならば縦の線はなくても良いと思うかもしれないが、やはりマス目になっている方が書いていて落ち着く。

■ 自然な書き味

pen-info 原稿用紙

私はこれまでどれだけのペンや紙の書き味を言葉にしてきたことだろう。21年くらいそうしたことを続けている。そのスイッチを入れて表現してみる。ずっと愛用している紙なので改めて書き味を言葉にするのは実はなかなか難しかったりする。今私が手にしている万年筆はパイロット カスタム743 ウェーバリー。上に少し向いたペン先の腹のあたりを走らせていく。細かな紙の繊維を捉える。サラサラと気持ちよく走っていく中に書きごたえの粒みたいなものがペン先から手に伝わってくる。私は普段黒鉛芯で書いている。それに少し似たものがあるのかもしれない。そうか、そういうこともあって私にしっくりとくるんだ。

pen-info 原稿用紙

書かれた筆跡は引き締まっている。インクの吸い込みがよく、にじみが少ない。なめらかな書き味ばかりが良い書き味とも言えないと私は思う。この程よい書き味が「書いている」と一筆ごとに実感させてくれる。



いつもの万年筆でこの原稿用紙に書いていると、あれ?今日はいつもと書き味が違うな、などと万年筆の調子のわずかな変化も感じ取れるようになっている。それくらい私のホームグラウンドな紙と言える。

pen-info 原稿用紙

pen-info オリジナル原稿用紙

関連コラム
「私の愛用原稿用紙」満寿屋 原稿用紙 102
「反りのあるペン先」パイロット カスタム743 ウェーバリー
「私の定番インク ブルー」パイロット、ペリカン、プラチナ万年筆など ブルーインク

文具コラム ライブラリー
pen-info SHOP