文具で楽しいひととき
■ 「見慣れたノートフォーマットに新たな価値」 インスパイラ ”書くための方眼ノート”
                                        ”とことん書き込むノート”


□このインスパイラという会社は、
 中国の文具メーカー。

 数年前に中国上海で開催されたペーパーワールドチャイナで
 取材したのがこのメーカーとの初めての出会いだった。

 ペーパーワールドチャイナは、
 ここ3年ほど毎年取材に行っているので、
 取材した会社は、おそらくゆうに100社を超えていると思う。

 そんな中でこのインスパイラは
 私にとっては
 とても印象深い会社だった。

 それは、ブースに日本人の方がいたというのがまずある。

 ペーパーワールドチャイナの出展社のほとんどが
 中国メーカー。

 当然、そのブースにいる方々も中国人で
 取材の中で話されるのも
 もちろん中国語。

 中華料理は、慣れている私でも
 ずっと、中国語ばかりだと
 だんだん心細くなってくる。

 そんな中、日本語がしゃべれる方、
 しかも日本人がいると
 もう無条件で嬉しくなってしまう。

 そして、
 このインスパイラ ブースで、
 「三つ折りノート」というユニークなノートを取材したのも
 印象的だった。

 ご記憶の方も多いかもしれないが
 これは、A5スリムサイズのノートで
 表紙を広げると、紙面がキレイに3つに折りたたまれていて
 広げると、A4になるというもの。

 携帯性がよく、
 使う時に A4いっぱいに書くことができる。

 私はこのノートをいたく気に入ってしまって
 発売前だというのに
 無理をお願いして
 先日出版した「仕事にすぐ効く 魔法の文房具」でも
 紹介させていただいたほどだ。


□そのインスパイラ社が
 先月開催されたISOTに出展するということで
 ブースに伺ってみることにした。


  


 今回のブースでは
 「三つ折りノート」に新たに
 ブラック表紙タイプが加わっていた。


  


 ブラックになったことで
 よりシックになり、ビジネスシーンでも使いやすくなっている。

 その三つ折りノートを眺めていると、
 インスパイラの野口さんがやってきた。

 一年ぶりの再会である。

 そして、野口さんから、
 これは自信作なんです!と言って2種類のノートを差し出された。

 これがまた
 「三つ折りノート」に負けず劣らず
 興味深いものだった。


□その一つは、「書くための方眼ノート」というもの。

 もともと方眼ノートは書くためのものである。

 しかし、これまではどちらかというと
 図が描けて、文字も書けるという感じで
 やや図にシフトした印象が強かったように思う。

 今回のものは、
 文字に特化している。

 ここがちょっと面白い。


  


 A5サイズでブラック表紙というシンプルなデザインのノート。

 ページ数は40ページと
 外観からはさほど目新しさというものは感じられない。


   


 最大の特徴は、
 中の紙面が、2.5mm 方眼になっているところ。


  


 方眼といえば5mmが中心、
 たまに3mm や1mm あたりもあるが、
 この2.5mm というのはちょっと珍しいかもしれない。

 その紙面をさらに顔近づけてみてみると、
 5mm 間隔でドットも付いている。


  


 つまり、2.5mm 方眼でありながら、
 使おうと思えば5mm 方眼の様にも書くことができる。

 それだけではない。

 このノートを企画した野口さんによると、
 この2.5mm方眼フォーマットは、
 文字を綺麗に書くということを強く意識して作られている、とのことだった。

 詳しくご説明しよう。

 文字を綺麗に書くには、
 まず一文字一文字を綺麗に書くことが、
 当たり前であるが重要である。

 このフォーマットだと、
 日本語そして英語や数字も綺麗に書けるという。

 たとえば日本語の場合は
 一文字を4マス、つまり5mm方眼の中に書いていく。

 これなら以前の5mm方眼ノートと変わらないじゃないかと思うところだが、
 実はちょっと違う。


  


 日本語の漢字には、へんと部首の大きく二つで形づくられていることが多い。

 それを、幅に5ミリずつに書いていける訳だ。


  
         【 私は根っから字が汚いので、これでも実はキレイに書けているのです。。。。】


 こうするとバランスの良い日本語を書くことができる。

 また、英語や数字の場合は、
 先程の日本語を全角とすれば
 こんどは半角で書いていける。


  


 つまり2.5mm 幅の中に書くと、ちょうどよく収まる。

 インスパイラ本社は中国にあり、
 野口さんは日々の仕事で漢字と英語、そして数字を書くことが多く、
 これまでのノートだと、どうしてもそれらが綺麗に書けずに困っていたという。


  


 それを解決しようと考えたのが今回のノートだったのだ。

 几帳面にキレイに書きたいという方には
 いいと思う。


□それから綺麗に文字を書くということでいえば、
 もう一つある。

 それは、行間という存在。

 先ほどのように縦方向5mmの中に一文字書いていく。

 そして、一行書き終わったら、2.5mm 分だけ行間をあける。


  


 これだけで文字の読みやすさは
 格段に違ってくる。

 さすがにこれは
 5mm方眼や罫線タイプではちょっとできない。

 これまでのノートで行間を空けようとすると
 どうしても一行おきに書くという
 ちょっと間延びした感じになってしまう。


  


 ワープロの書式設定をうまい具合にノートに取り入れたという感じである。

 方眼は、淡いグリーンで印刷されていて
 コピーをとるとその罫線はほとんど映らないという。


  


□そして、もう一種類のノートが、
 「とことん書き込むノート」というもの。


  


 先ほどもそうだったが、
 ネーミングがなんともユニークだ。

 「とことん」となっているが、
 どこらへんが「とことん」なのか
 気になるところだ。

 こちらは
 先ほどの方眼フォーマットと打って変わって
 ベースは7mm の横罫線になっている。


  


 ただ、一般的な横罫線と違うのは、
 一行ごとに2.5mm の行間が設けられている。


  


 先程と同じように行間をあけることで綺麗に書ける、
 ということももちろんあるが、
 やはりこのノートもそれだけではない。

 この行間のスペースには
 いろいろなインデックスを入れることができるようになっているのだ。

 これも野口さんの自らのノート活用術から生まれたもの。

 野口さんはノートの1ページ1ページにいろんな事を書き込んでいくという。

 すると、関連するアイデアやメモが
 ノートのあちらこちらのページにまたがってしまう。

 これは私たちでもよくあることかもしれない。

 そこで、
 その情報を書いたすぐ下の行間に
 それ関連するページは、 ●ページという注釈としてのページ番号を記しておく。


  


  


 それをふまえて
 各ページにはページ番号を書き込める専用の欄が設けられている。


  


 こうしておけば散らばったアイデアも
 後で簡単に関連づけられるようになる。

 より確実に行うには
 「この情報の詳細は●ページ」とそのスタート地点に注釈を付けるだけでなく
 ゴールにあたるところにも
 「この元情報は●ページ」としておくといいかもしれない。

 これまでもノートにインデックスを付けるということは私もよく行っていた。

 しかし、それらは
 このページをあとで見ようという最終的に見るべきページに印を付けるというものだった。

 そこに行き着くまでの前段階の情報には
 あまりインデックスを付けていなかった。

 今回のノートでは
 ノートに点在するアイデアや情報を結びつけられるようになる。

 ここが面白い。

 しかも、一行単位でインデックスを付けることができる。

 こうしたインデックスだけでなく、
 純粋に注釈だけを書き込むのにもいい。


  


 なにしろすべての行という行の間には
 予め注釈スペースが用意されているので、
 一行単位でインデックスや注釈が付けられる。

 しかし、よくよく考えてみると、
 これは原稿用紙のルビにも似ているようにも感じる。

 一見すると、横書きの原稿用紙の紙面のようだが、
 実は検索性も考えられた現代的なノートだったのだ。

 今回のノートは、ISOTが初お披露目ということで、
 まだ発売時期などは決まっていないという。

 今のノートブームの中で、
 一つこれは注目しておきたいノートだ。

 個人的にも発売が待ち遠しい。


  


 (2010年8月31日作成)





 □ 関連リンク

 インスパイラを紹介したペーパーワールドチャイナレポート

 ■ 「ペーパーワールドチャイナ2009 レポート」

 ■ 「ペーパーワールド・チャイナ2008 レポート」


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