文具で楽しいひととき
■ 「わびさびが感じられるペン」
   カランダッシュ エクリドール シェブロン ペンシル 0.7mm


 


□仕事でいつも持ち歩いている
 ポスタルコのリーガルエンベロープ。
 
 その中に
 一本だけペンを忍ばせている。

 カランダッシュ エクリドール シェブロン ペンシル 0.7mm。


 


 外出先などで
 万が一手元にペンがないときのために
 使っている。

 使用頻度はあまり高くはないが
 私にとっていざというとき活躍してくれる
 懐刀のような存在。

 頼りにしているペンだ。

 ついこの間も
 外出先のカフェで
 このカランダッシュを握り
 企画のアイデアをスケッチブックに
 描きなぐっていた。

 ふとペンを走らせるのを止めて
 そう言えば、
 このペン、いつ買ったんだっけ?
 なんでこのペンを買ったんだっけ?
 ということが頭をよぎった。

 考えてみると
 私はペンを買うときには
 それなりの理由やきっかけがある。

 もちろん衝動買いすることもあった。
 でも、
 それも衝動というきっかけである。

 はて、
 このカランダッシュは
 どんなきっかけだったのだろうか??

 カランダッシュのペン先を紙から離し
 コロコロと人力クルトガのように
 転がしながら
 頭の中の引き出しをあちこち引っ張り出してみた。

 だんだん
 思い出されてきた。

 そうだあの人だ、あの時だ。


□だぶん、
 20年以上前のことだと思う。

 まだ、私が会社に勤めていた時。

 先輩社員の方が
 当時、独身だった私を捕まえて
 そろそろ保険に入ってみたらと
 外資系の営業の方を紹介してくれた。

 まぁ、話だけでも聞いてみるかと
 会ってみることにした。

 待ち合わせ場所に現れたのは
 私より10歳くらい年上の男性だった。

 話だけ、と軽い気持ちで会ってはみたが
 保険の話しは、その方には悪いが
 全然興味が持てるものではなかった。

 早く終わらないかなぁと思いつつ
 一応聞くふりだけはしていた。

 すると
 その人がスーツの胸ポケットから
 1本のボールペンを取り出して
 紙の上になにやらグラフみたいなものを
 書いて説明をはじめた。

 私の目は
 だぶんいきなり輝いたのだと思う。

 私が保険の話に興味が出てきたと思い込んで
 その人は俄然やる気を出して説明に力を込めた。

 もちろん
 私は保険の話しではなく
 ペンに興味を持ったのだ。

 使い込んだことがひと目でわかる
 シルバーらしきボールペンだった。

 もともとは銀色をしていたのが
 すっかりと黒ずんでいる様子だった。

 でも、
 いわゆるブラックボディとは違う、
 所々に銀色が見える黒ずみだった。

 カランダッシュのエクリドールかな
 それにしては、少し軸が太い感じだな。。
 
 と、首をかしげている様子が
 これまた保険を真剣に悩んでいるように
 見えていたようだ。

 「っで、どうされます?」という声で
 現実に世界に戻された。

 保険については
 まだ結婚もしていないんで、今はいいです。。と
 断った。

 百戦錬磨の保険セールスの彼にとって
 そんなどこでも聞くような断り文句の切り返しは
 何十通りも持っているようで、
 それからさんざん説得を繰り返された。

 でも、
 私も譲らなかった。

 そんなことより
 私には聞きたいことがあった。

 それは、
 あのボールペンの名前を確認することだ。

 これ以上保険の説明をしてもムダだと
 判断してくれたようで
 資料をトントンテーブルの上で揃えて
 カバンにしまいはじめた。

 今がチャンスと
 「そのペンは、なんていうんですか?」と
 聞いてみた。

 スーツのポケットにそのペンをしまいながら
 「これはレミニッセンスです」と教えてくれた。

 そうか、「レミニッセンス」かぁ。

 その時に見た
 シルバー(銀製)のペンがすっかり黒ずんでいる
 「わびさび」のような美しさに惹かれてしまった。


□どうして「レミニッセンス」を買わなかったかは
 今となってはよく覚えていないが
 たぶん、価格が高かったから
 あきらめたのだと思う。

 その代わりとして
 数年後にカランダッシュ エクリドール シェブロンのペンシルを買った。


 


 買ったのは
 その当時よく通っていたアメ横のペンショップ。

 当時は、
 今のように黒鉛芯にこだわっていた訳ではない。

 むしろ、
 仕事ではボールペンの方をよく使っていた。

 それなのに
 ボールペンではなく、あえてシャープペンを買ったのだ。


 


 その理由も覚えていないが、
 シャープペンを買った当時の自分を
 でかしたぞ!と褒めてあげたい。

 ただひとつだけ
 このペンを買った時のことで
 ハッキリと覚えていることがある。

 それは店のおばさんが
 ロジウムメッキされているのにする?
 それともされていないほう?と聞いたことだ。

 おばさんは、
 ロジウムメッキされていると
 シルバーによくある黒ずみが起こりにくいから
 いいよと勧めてくれた。

 私は、
 キッパリとロジウムメッキでないタイプ!と
 言い切った。


 


□それから何年もの月日が流れた。

 私のカランダッシュの黒ずみは
 あの人のと比べると
 まだまだである。


 


 (2015年5月12日作成)


 ■ カランダッシュ エクリドール シェブロンシャープペンシル(現行品)は、こちらで販売されています。
   現行のものが黒ずみが出るタイプであるかは不明です。。



 



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