2011.10.25(241-2)

「PWチャイナ2011 2」

ペーパーワールド チャイナ

2011 展示会レポート

■ 思わず触りたくなる手帳

展示会を取材する時に私がいつも心がけているのは「全身を目にする」ということ。なにも、鬼太郎の目玉親父になるとか、360度、常にキョロキョロするという訳ではない。全身に意識を集中して展示会場を回るということだ。あとは自分の肌感覚に任せる。こうすると不思議と面白い商品を見つけることができる。

考えてみると、これは私がいつも文具店を見る時にもやってることだ。そんな感じで展示会場の通路を歩いているとある手帳が目にとまった。これを見た途端思わず近寄って手にとってその表紙を触ってしまった。

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ベースとしては MOLESKINE のような手帳。ただ大きく違うのは、表紙に立体感溢れるデザインが施されているところ。切り絵のように貼り付けられているその部分を触ってみると、フエルトのような、それでいて少しベルベットのようなフワフワとした感触がある。

ペーパーワールド チャイナ 2011 展示会レポート

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私がその表紙を気持ち良さそうに撫でていると、担当の人が「こうしてごらん」と、ノートのそのフエルトみたいなところを爪でゴシゴシと擦り始めた。いやそれはまずいでしょうと 心配をしたが全く問題はなかった。聞けば、この立体的なデザインは表紙に貼り付けているのではなく、表紙を作る時に一緒に加工しているのだという。

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手触り、そして見た目も楽しめる手帳だ。

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■ 合成皮革の進化

通路を歩いていると様々な看板を目にする。日本の展示会などではブースの正面に普通に社名の看板などを掲げているが、アピール精神旺盛の中国では、それに飽き足らず正面の看板に加え、通路を歩いている私たちの目にもすぐ見えるようにブースから突き出した様な看板もあちらこちらで見かける。

そういえば横浜中華街を歩いていると、こういう突き出し看板のオンパレードだ。これは中国の伝統なのだろうか。そんな突き出し看板の中で気になる言葉があった。そこには、「変色PU革」とあった。

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「PU」とは、確か「ポリウレタン」というしなやかさに富んだ合成皮革のことだ。ブースに入ってみると色とりどりのPUのサンプルがあった。

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通訳の方を介して、変色とはどういう意味かと聞いてみると、160°~170°の熱を与えるとPUの表面が変色するのだという。見せてもらうと確かに色が変わっている。

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ちょうど革に焼き印を入れたような感じだ。手にした印象としては、全くもって革っぽさに溢れている。裏返すと、布のような繊維があり、それを見てこれは本革ではないのだと我に返る。

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この技術は4~5年前からイタリアで使われるようになったものだという。この会社では、こうした変色PUを手帳メーカーなどに加工して納めている。

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■ お国柄が現れるノート罫線

ペーパーワールド・チャイナでは、中国のメーカーの出展が多い。その中には、中国市場向けに文具を作っているところと、一方、中国市場よりもく、海外輸出に重きを置いているところもある。ここは、後者のノートメーカー。

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カラフルなデザインの表紙を見ていると、ブースの人が、うちの売りは、表紙よりも中の紙ですと、説明してくれた。

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なるほど、表紙をめくってみると、様々な罫線のものがあった。そのひとつ、横罫線が細かく引かれたものはフランス語用。フランスをはじめ、フランス語を使うアフリカなどにも輸出しているという。

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その中にあまり見慣れない罫線があった。基本は横罫線だが、赤と青が交互に引かれている。これは、フィリピン用だそうだ。

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この他、ヨーロッパ用の5mm方眼や中国語用の横罫線などもあった。書く文字が違えば、それにあわせてノートの罫線も違ってくる。当たり前といえば当たり前だが、ノート紙面から世界が見えてくるようで面白かった。

■ インスパイラ

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このペーパーワールド・チャイナ レポートではすっかりおなじみの中国のノートメーカー、インスパイラ。今回の新製品は?とお聞きすると、新製品はあまりないとのことだった。グルリとブースを見回してみると、一つのメモブロックが目にとまった。

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これはずいぶん前からヨーロッパを中心に販売されているものだという。メモブロックというものは、メモが積層されていてビシッと「気を付け!」をしたかのような直立不動スタイルをしているものだ。

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しかし、これは「休め!」を通り越して、ゆったりと「リラックス」してしまっているようである。商品名は「ツイストテッド メモ」。

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メモブロックなので、メモの一辺はしっかりと糊付けされている。

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担当の人に、当初は直立したメモブロックを機械かなんかでグニュッとねじっているんですか?と冗談半分で訊ねると意外にも「そのとおり」という答えが返ってきた。

■ 細かなところまで考えられた修正テープ

韓国エリアで修正テープを専門にしているブースがあった。

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修正テープを展示しているところは会場にもたくさんあったが、ここのものはオッと思わせるものがあった。それは、そのずば抜けた小ささ。

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ペンを一回り太くさくらいの細さ、そして短いボディの中に修正テープのロールがしっかりと収められている。社長いわく、これは世界で最も小さい修正テープのロールだという。確かに小さい。しかも、これが面白いのは、その反対側には消しゴムが付いているところ。

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消し具の両刀使いという訳だ。実は、この商品は日本でもすでに販売されているという。今回の展示会では、これをさらにブラッシュアップした新作が発表されていた。先程の小さいタイプは、修正テープ長さが3.2メートルとやや短め。そして、修正テープのロールは使いきりタイプとなる。

対して新作は、ややボディは大きくなっているもののテープの長さが6m、そしてロールはリフィラブルになっている。

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もちろん反対側には消しゴムもある。さらに、この新作では二つの特許を新たに取得しているという。まず一つ目は修正テープのキャップ。これまでのキャップは、取り外すタイプや修正テープのブレードと呼ばれる先端部分を引っ込ませるというものだった。これは全く新しい方式。

キャップの上下を親指と人差し指でつまんで手前にスライドさせると、キャップがボディから離れずにスライドして開いていく。

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これならキャップをなくす心配もない。このキャップは「ドームキャップ」と呼ぶらしい。そして、もう一つの特許は内部の構造なので、肉眼では確認出来ないものだった。それは、本体の中でロールを回転させる時に一緒に動くオーベルトという部分。

そもそも修正テープ中には二つのロールがある。

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ひとつには未使用のテープが巻かれていて、もう一つには使用済みの透明フィルムが巻き取られていく。この2つは、テープを引くときに常に同時に回転する。それを司っているのは、その二つのロールの根元に巻かれているオーベルト。これはシリコンで出来ているという。そのオーベルトの内側にギアのようなギザギザを付けたというのが、今回の新たな特許。

従来のものは、輪ゴムのようにただの平面なオーベルトが使われていたという。ギア方式になったことで、よりスムーズに回転するようになる。そのため、テープが残り少なくなっても引く時に重くなりにくいという。

そもそも、このテープが残り少なくなった時に従来のものだと紙の上にテープを引いて、最後にテープの先端を紙から離す時にその引きの重さのためにテープが多少戻ってしまうのだという。つまり、次に使う時にテープが先端より少し戻った状態になってしまう。

この状態だと次に使うときに引き始めにテープのない空白地帯が出来てしまう。ギア方式にすることで、引く時の重さが軽減されるので、先程のようなテープの先端の空白が出来にくくなるのだという。また、修正テープの使い勝手がまた一つ向上したという訳だ。

■ 高級ステーショナリーも登場

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発展著しい中国を象徴するようなメーカーも出展していた。それはスペインのエルカスコ。半年ほど前に中国の代理店が立ち上がったばかりだという。エルカスコのステーショナリーの歴史は古く、ピストルの技術を活かして作っているものもあるという。

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今もスペインでは一つ一つ職人の手で作られている。日本でエルカスコというと、鏡のように磨き上げられたシルバータイプを思い浮かべるが、ブースには、そのシルバータイプよりゴールドタイプの方がメインにディスプレイされていた。

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中国では、「金色」は皇帝の色と言われ、大変好まれているという。このエルカスコは現在、北京の高級百貨店で販売されている。やはり、こういう高級なものを買うのは中国の一部の富裕層だけなのだろうと、担当に人に聞いてみると必ずしもそうでないとのことだった。

確かに富裕層の人達がワンセットすべてを買うということもあるというが、一般の人たちが買っていくこともあるという。彼らは家の中にそうしたアイテムを飾って眺めたり触ったりして楽しむのだそうだ。

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【特に人気が高いのは、この葉巻をカットするアイテム】

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【亀の置物のようなこのアイテムは、頭を押すとベルが鳴る、いわゆる呼び鈴。 大きな邸宅などでは、これを鳴らして人を呼ぶのだろうか。亀なので、てっきり中国市場向けに作ったものかと思いきや、これは1920年から販売しており、ヨーロッパでも人気を博しているアイテムだという】

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