2025.07.08(586)

「新旧の鉛筆を使う」

三菱鉛筆

8800 鉛筆など

鉛筆

今、鉛筆の沼に一人静かにはまっている。インクの沼の方は大変に賑わいを見せているが、こちら鉛筆の方は人もまばら。その分ズブズブとはまり放題である。クロールでスイスイ泳げるほどだ。

鉛筆についてはすでに私は軸足をトンボMONO100に決めている。でも年を重ねるほどに筆圧が弱くなり、書き味の好みにも少しだけ変化が現れてきた。なめらかさだけでなく、硬さのある書き味も好きもいいではないかと思ってきた。そう言えば、万年筆もずっとBやMばかりを使っていたが、今はFの心地よさも好きなってきた。書き味のストライクゾーンが少し広がってきている。そのストライクゾーンに入る鉛筆を古いものから現行のものまで色々と使っている。

鉛筆

■ 少し古いトンボ鉛筆8900 HARD BLACK(HB)

トンボ鉛筆 8900

鉛筆はいくら古くても芯さえ残っていれば、ふつうに書いていける。他の筆記具ではなかなかこうはいかない。鉛筆ならではの良さだとつくづく思う。しかもその当時の書き味が今も味わえてしまうのだから。硬い黒鉛芯の中にその書き味が長い年月封じ込められている、という風にも見えてくる。

トンボのロングセラー鉛筆8900。現在も販売されている鉛筆だ。これはいつのものかはよくわからないが、少し古いもののようだ。JISマークがあって、トンボマークが下を向いている。そして「For  Drafting and Retouching」とある。Retouchingとは写真修整用というものだ。現行の8900にこの表記はない。

トンボ鉛筆 8900

書いてみると、とてもなめらか。古くてもこんなになめらかなのかと驚く。HARD BLACKの程よい硬さはベースにあるものの、芯のなめらかさが手に伝わってくる。8900特有のふつうの心地よさがある。この頃の8900の書き心地を大いに見直した。HARD(しっかり感)とBLACK(黒さとやわらかさ)のバランスがとても良い。今、デスクの横に常備して日々の仕事で使っている。フト目に入るクラシカルな刻印で、これは古い鉛筆なんだと気づく。ただ書き味に古さは全く感じない。

トンボ鉛筆 8900

軸に「Micro Crystallite」とある。微結晶という意味で、これも現行の8900にはない刻印だ。
その言葉の通り黒鉛の粒の細かいなめらかさを書いていて感じる。

トンボ鉛筆 8900

 

■ 少し古い三菱鉛筆8800 HARD BLACK

三菱鉛筆 8800

この8800という鉛筆は現在の三菱鉛筆にはラインナップされていない。淡いオリーブグリーン。JISマーク、そしてHBの硬度が丸く囲われている。書いてみると、ごくわずかだがドライなタッチがある。少しカサカサとした書き味だ。その当時の書き味が今もこうして紙の上で味わえるのが嬉しい。なめらかさもしっかりあって、カサカサがわずかに顔を出すといった感じだ。筆跡もやや薄めな印象。これはこれで8800の個性として私は静かに受け止めている。先日イベントでこの8800を販売したところ、箱買いされた方がいた。好きな方にはハマる書き味なんだと思う。私も好きだ。

三菱鉛筆 8800

■ 少し古いコーリン鉛筆3030 HARD(H)

コーリン鉛筆 3030

今はもうないコーリン鉛筆社。三角形の横顔が当時を少しだけ知る私には懐かしく映る。渋めのオリーブグリーンに硬度のところだけブラックになっている。落ち着きのあるカラーリングだ。JISマーク、Retouching useとある。

コーリン鉛筆 3030

HARDらしい確かな硬さがある。筆圧が弱くなった私にはこれはこれでいいではないかと思える。昔の私ならカリカリでダメだと思っていたことだろう。書き味としては、例えるなら0.5mmペンシルでひたすら書いているような感じを受ける。細かく書き込む時に使っている。

コーリン鉛筆 3030

■ 少し古いトンボ鉛筆MONO R FIRM(F)

トンボ鉛筆 MONO R

今も販売されているトンボMONO R。ただ現行のものと比べると少し違う。後ろ側の硬度表記があるところのリングが白い。現行のものはここがゴールドになっている。トンボマークも下を向いている。そして現行のMONO RにはFIRM(F)の硬度はなくなっている。少し古いもののようだ。書き味はFIRMらしいしっかりとした芯の硬さがある。その硬さの中にもなめらかさも併せ持っている。芯の減りがゆっくりな印象があり、細目の筆跡を長く楽しめる。

トンボ鉛筆 MONO R

■ 現行品 トンボ鉛筆MONO HARD BLACK

トンボ鉛筆 MONO

MONO100ばかりをこれまで使ってきたが、このMONOもずっと気になっていた。まとめ買いして今本格的に使っている。書いてみると、私の好きなちょうど良いなめらかさがあった。なめらか過ぎない適切さを感じる。このMONOもいいではないかと、今私の中で存在感が大きくなっている。MONO100のHARD BLACKと比べると、気持ちMONO100の方が粒の細かさと言おうか、なめらかさを感じる。私の手はMONOが好きなんだと思った。

トンボ鉛筆 MONO

■ 現行品 三菱鉛筆9000 HARD BLACK

三菱鉛筆 9000

今もふつうに売っている現行品鉛筆だ。ただ私はこの鉛筆を通り過ぎずにこの歳になってしまった。明るいグリーンに濃いグリーンの組み合わせが個性的。カール事務器 エンゼル5で削った時の木肌がとても白い。書いてみるとふつうさのど真ん中にある書き味だった。特徴があまりないと言ってしまうとそれまでだが、ちょうど良いスタンダード鉛筆といった感じだ。少しだけドライなタッチがあるように感じられた。普段使いにちょうど良い。

三菱鉛筆 9000

HARD BLACKを中心に色々な鉛筆を年代をまたいで書いてみた。国産の中でもそれぞれ微妙な違いがあった。

鉛筆



という感じで古いものから現行品まで国産鉛筆を色々と使っている。ノートに書いたり、ToDoリストに書いたりと仕事の中でじゃんじゃん使っている。鉛筆はたとえ古くてもあまり気にせず使っていける気軽さがある。

少し薄いグレーの鉛筆ならではの筆跡でノートの紙面を埋め尽くしていくと、内側から満足感が沸き起こってくる。

トンボ鉛筆 8900

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