2005.11.08(93)

「吉祥寺の古くて新しいお店」

36 Sublo

サブロ 36

吉祥寺駅の北口を出て、アーケードを通りぬけると車がたくさん行き交う五日市街道に出る。そこを右に曲り、しばらく道なりに行くと、右手に花屋さんが見えてくる。その角を右に曲がったところに、今回ご紹介するショップがある。吉祥寺の繁華街からちょっと離れているのでとても落ち着いた中にある。

36 Subloと書いて「サブロ」と読む。お店のコンセプトは「懐かしい、愛らしいものを詰め込んだお道具箱」道具箱という言葉に象徴されるように、かわいらしい雑貨というよりもしっかりと使える文房具が所狭しと並んでいる。

サブロ 36

■ 店名はおじいさんの名前から

この、ユニークなサブロという店名はオーナーである村上さんのおじいさんの名前、三郎さんからとったものだと言う。では、なぜ、おじいさんの名前をとったかと言うと、これには、ちょっとしたいきさつがあった。村上さんのおじいさんは、以前から京都で文房具屋さんを営んでおられ、村上さんは、子供の頃から文房具に囲まれて育った。

大人になるにつれ村上さんの興味は、他の女の子と同じように文房具からしだいに、おしゃれな雑貨へと変わっていき、おじいさんの文具店をそうしたおしゃれな雑貨屋さんにリニューアルしようと思うようになっていった。

■ 古めかしい文具が逆に新鮮に

そう決意をした村上さんは、早速修行のためにと東京の色々な雑貨屋さんで働きはじめた。そんな中で、村上さんが意外だったのは、子供の頃から慣れ親しんだおじいさんの文具屋さんでの知識が、そうした雑貨屋での仕事仲間から、新鮮に受け止められ、重宝がられたということ。

古めかしいと思い込んでいた文房具がと、戸惑いつつも、改めてそうした昔の文房具を見てみると確かに、とても味わい深いものに感じるようになっていったという。おしゃれな雑貨の修行に行ったつもりが、逆に昔ながらの文房具のよさを再発見する結果となったのだ。新しきを訪ね、古きを知る といったところだろうか。

当初のおしゃれは雑貨屋さん計画は、いつしか、昔懐かしい文具店を東京に作ることへ変わったいった。そして、そのきっかけをくれたおじいさんの名前を店名につけることになったのだ。

サブロ 36

店内には、懐かしい古いものと新しいものが程よく混在している。ちょっと見ただけは、どれが新しく、どれが古いのかがわからないくらいすっかりと溶け込んでしまっている。古そうに見えたものが、実は現行品で、今でも手に入ると聞かされて私は少々驚いてしまった。

あまり知られていない、こうした名品を掘り出してくる村上さんの確かな目利き力は凄いものがある。やはり、子供時代から文具に囲まれて育った経験が生かされているのだろう。

このテープディスペンサーも古そうに見えて実は、現行品だという、そのひとつ。南部鉄を使った、見るからに重そうなずしりとしたものだ。いくら勢いよくテープを引っ張ろうが、びくともしなさそうな安定感がある。

ニチバン 南部鉄製 テープカッター 小
【ニチバン 南部鉄製 テープカッター 小】

新品の状態なのに、すでに古さが出ている。植木等が出てくる昔の映画なんかに出てきそうだ。

ガラスケースの中を覗いてみると、セルロイド製の万年筆があった。これも、プラチナ万年筆の現行品。赤いタイプは「キンギョ」というそうだ。見るからにキンギョといった感じ。手にさせてもらうと、意外と軽い。プラスチックにはないセルロイドならではの暖かみが伝わってきた。

サブロ 36
【プラチナ万年筆 Platinum #3776 セルロイド #24 キンギョ】

とても古そうな木のケースには、筆記具がきれいに入っている。このケースは昔のお店で絵の具筆を入れて使っていたものだ。こうした古いケースに入っていると、新しいペンまで年代モノに見えてしまう。

サブロ 36

この中に、面白いペンを発見した。

三菱鉛筆 証券細字用ボールペン

その名も、証券用細字のボールペン。以前にご紹介した「測量野帳」のようなシチュエーションを限定した文具のひとつだ。証券用というところがとても面白い。クリップなどないシンプルな6角軸ボディ。鉛筆感覚でガシガシと使えそうだ。書き味は、驚くほど滑らか。いまだに売られ続けている理由が分かった気がした。ちなみにこれも、もちろん現行品。

三菱鉛筆 証券細字用ボールペン
【三菱鉛筆 証券細字用ボールペン】

ノートコーナーを眺めていたら「萬年筆物語」という小さなメモ帳が目に入ってきた。これは、丸善のオリジナル原稿用紙のデザインをそのまま小さくしたものだ。

丸善 万年筆物語メモ帳

歴史を感じさせる龍の絵や、手書きのようなまっすぐではない、ゆらゆらとしたマス目の線がとてもいい雰囲気をかもし出している。この原稿用紙は、そもそも夏目漱石が愛用していたデザインを元に作られたものだという。このメモ帳、殴り書きではなく、ひと文字ひと文字ちゃんと書かねばと、
思わせる風格がある。

丸善 万年筆物語メモ帳
【丸善 万年筆物語メモ帳】

このようにサブロさんには、古くて素敵な文房具がたくさん集められている。この他に、実は個人的にとても気に入ってしまった商品があった。

今回はちょっと長くなってしまったし、これは、じっくりとご紹介したいので、次回につづくということで、今回はひとまずここでおしまいとしたい。

■ 36 Subloさんのサイト
現在は、同じ吉祥寺ですが場所がもっと駅よりになっています。

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