2016.06.07(357)

「最高峰の#3776センチュリー」

プラチナ万年筆

#3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆のフラッグシップ万年筆「#3776センチュリー」。2010年のリニューアル発売を記念してスタートした限定シリーズ「富士五湖」。いよいよその最後を飾るモデルが2016年7月1日に発売される。これまでの限定モデルでは、透明ボディをベースに様々な工夫を凝らしていた。最後は一体どんな透明になるのだろうと期待をしている方も多いと思う。今回も発売前に特別に見せていただく機会を得た。その魅力をご紹介したいと思う。モデル名は「河口」だ。

■ 夜明けを待つ湖の美しさ

プラチナ万年筆で万年筆をはじめ筆記具全般の企画開発の責任者をされている柳迫隆司さん。「#3776センチュリー富士五湖」シリーズも全て柳迫さんが企画をしてきた。これまでの5本(ニースを含む)で万年筆の中で出来うることはおおかたやりきったという印象を柳迫さんはすでに持っていた。今回の「河口」を企画するにあたり、まずは河口湖の特長を調べることからはじめたという。河口湖は他の富士五湖の中で湖面の周囲が最も長いということがわかった。ちょうどリアス式海岸のようにいりくんでいる。しかし、その点を万年筆に取り入れるのは難しいと判断した。河口湖のどんな魅力を今回の万年筆に取り入れるべきか。今回ばかりは柳迫さんも相当に悩んだという。およそ1年間あった「河口」の開発期間のうち、半分近くはこのどんな万年筆にするかという企画で費やされた。実際に、河口湖に足を運んだりなど色々調べていく中で、ようやくひとつの魅力にたどり着いた。それは、夜明け前の湖の美しさだった。静まりかえった真っ暗な夜からしだいに朝日が出てきて、その光が湖面にあたる。湖面が深いブルーをたたえる瞬間だ。

河口湖

ボディに採用された色は、ディープブルー。紺と言った方が近いかもしれない。湖の透明感を表現するためスケルトン仕様にもなっている。ブルー系スケルトンというと「シャルトルブルー」がある。比べてみるとわかるが、同じブルーでもかなり違う。「シャルトルブルー」はやや紫がかっているが、「河口」は純粋なブルーだ。色味も違えば、スケルトン具合も微妙に違う。個人的な印象では「河口」の方がほんのわずかなレベルだが透け感が強い。とは言え、これまでの「富士五湖シリーズ」よりかなり濃い目の透明ボディだ。室内だとソリッドボディのようにも見え、あくまでもさりげないスケルトンになっている。柳迫さんは、この色を「ドーンブルー」と名付けた。「ドーン」とは夜明けという意味だ。

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

■ 湖面を表現したボディ

その深みのあるスケルトンブルーには幾重もの細かなラインがある。夜明けを待つ河口湖は、2つの表情があるという。まず、静寂な状態。まるで鏡のようにピーンと湖面が張りつめた様子。そしてもう一方では、風がわずかに出てきて湖面の一部に波紋が生まれている。この夜と朝のふたつが共存している状態だ。ボディの線は途中で途切れているところがある。また、あるところは密集して、またあるところは空間を持たせ、湖面の静寂と波紋がうまく表現されている。ボディにちりばめられた線は光線彫りという手法で作られた溝になっている。光があたると、それらの線だけが反射してキラキラとまさに湖面のような表情を浮かべる。

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

■ 隠れ富士が・・・

「#3776」という数字は、富士山の標高を表している。それを象徴すようにペン先の先端には「#3776」の数字とともに富士山をかたどった刻印がある。今回の「河口」では、もうひとつの富士山が楽しめる。よく目を凝らさないと見えないくらいのさりげなさで。天冠をじっくりと見つめてみると、中に小さな富士山があるのだ。小さいながらも力強さのあるどっしりとした富士山が内側に埋め込まれている。透明ボディの「富士五湖シリーズ」のいずれかをお持ちの方は確認されると分かるが、この部分はもともとビスになっている。実は、ここは「#3776センチュリー」の要とも言える「スリップシール機構」のインナーキャップを支えるパーツである。「河口」では、この部分を富士山にしている。「富士五湖シリーズ」で富士山が取り入れられるのは今回が初めてだ。

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

■ 立体的なリング

そうそう、紹介が遅れてしまったが、今回の「河口」の価格は25,000円+Tax。これまでの「富士五湖シリーズ」の中でも一番高いモデルということになる。柳迫さんいわく「河口」の企画にあたっては、「#3776センチュリー」の最高峰モデルを作るというのをコンセプトにしたという。富士山がはじめて取りいれているのもそのためだ。そして、もうひとつこのモデルならではのこだわりがある。ボディの中央を飾るリングパーツだ。この「#3776 CENTURY」という文字が立体になっている。これはエッチングという手法で作られている。立体にしたところだけマスキングして、エッチング液に浸すとそれ以外のところだけ溶けて文字が立体的に仕上がる。見た目にも、手触り的にも楽しめる。

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

■ 普段使いが楽しめる最高峰

最後に筆記インプレッションを。ボディをゆっくりとクルクルと回してキャップを外す。万年筆で書きはじめる時にいつもやっている作業だが、「河口」では、ボディのいくつものラインによるきらめきが楽しめる。キャップをカプリと尻軸にセットして握ってみる。湖面デザインの細かな線がちょうどよいグリップアシストをしてくれる。ペン先を紙の上に添えてペン先のたわみを感じながら走らせる。いつもの#3776センチュリーの安心感のある書き味だ。文字を書いてみて気づいたのは、プラチナ万年筆のブルーブラックインクとボディがほぼ同じ色合いだったこと。なるほど、このボディは夜の黒と夜明け前のブルーが混ざりあったブルーブラックでもあるのだ。ボディとほぼ同じ色のインクが出てくるのは面白い。

あまり装飾的過ぎず、日々の道具として使える「河口」。それでいて書いていて手を休めてふと万年筆に目をやると、ボディには湖面、そして天冠にはうっすらと富士山が見える。まさに、「#3776センチュリー」の最高峰モデルであると思う。

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口

プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口(ペン先はF、M、B)限定2,500本  25,000円+Tax
こちらで販売されています。

*今回で「#3776 センチュリー 富士五湖シリーズ」が完結を迎えるのにあたり、特製のスノードームが作られ、販売店でディスプレイされるそうです。試作段階のものを拝見しましたが、「富士五湖シリーズ」らしさ満載です。スノードームの内側には富士山がそびえ、その前には、歴代のミニチュア「#3776 センチュリー 富士五湖シリーズ」5本が立っています。雪が舞い降りてくる富士山と「富士五湖シリーズ」が楽しめます。「河口」販売開始と同時に店頭でご覧になれるそうです。ちなみに非売品。

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