2008.06.24(159)

「反りのあるペン先」

パイロット

カスタム743 ウェーバリー

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

次に買いたい万年筆は? と聞かれれば、私は迷うことなく、すぐさま数本の万年筆がアタマに鮮明に浮かぶ。この手の引き出しだけは、自分でも感心してしまうほど多く、しかも、ビシッと整理されている。机の引き出しもこうだといいのですけどね。

そうした万年筆ではあるが、私はそれらを次々に買うということをあえてしない。そもそも、財力が物欲に追いつかないという根本的な問題はさておき、万年筆を買うという一大イベントには、それに相応しい理由というものが必要だと思っているから。

ここ最近の理由を挙げれば、「40歳になったという記念に1本」「大きな仕事が無事成功裏に終わった後に1本」というそれなりの理由もあるが、中には、「春が来たので1本」なんていうのもあったりする。

つまりは、万年筆を買うということを自分の中で正当化したいということなんですね。折しも、先日知人の文具店がリニューアルオープンした。それを記念して、そのショップで万年筆を1本新調してみることにした。

アサヒヤ紙文具店

■ 今回手に入れたのはパイロットカスタム743

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

以前ご紹介した742よりもやや大きめなボディ、そしてペン先を備えている。パイロットでは、F(細字)、M(中字)、B(太字)などの一般的なペン先の他、特殊なものもラインナップされている。

ペン先の両端を半円状にカットした「フォルカン」やペン先を下に向けた「ポスティング」など、個性的なものが多い。色々なペン先がある中で、今回の743には「ウェーバリー」というペン先を選んでみることにした。

ペン先を見てみると、肉眼でもしっかりと確認できるくらいにペン先が上にしなっている。

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

そのしなり具合があまり大げさでなく、実に自然で見ていて気持ちいい。美しいとさえ思ってしまう。

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

本来まっすぐであるべきものがしなっているのに何故美しいと思うのか。考えてみれば、まっすぐのものは、どちらかと言えば「正しい」と感じ、緩やかな曲線をたたえたものを「美しい」と感じることが多いような気がする。

そういえば、インダストリアルデザイナーのルイジ・コラーニ氏は、自然界には、直線は存在せず、全てが曲線だと言っている。もともと自然界に存在するそうした曲線を見ると人は落ち着くのかも知れない。

■ 常に一定の線が書ける

さて、こうした上を向いたペン先と言えば、セーラー万年筆に「ふでDEまんねん」というものがある。これは、その名前のように筆のような筆跡が書けるものだ。今回のウェーバリーは、そうした特殊な文字ではなく、ごくごく普通の線が書ける。

では何故、このようにペンをそらせているのだろうか。

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

これについて、パイロット社に問い合わせてみた。それによると、筆記時のペン先角度を問わずに、どのような方にも対応できるようにするためとのことだった。実際に、色々な角度で書いてみた。

ボールペンを書くときのようにペン先を立てた時、そして一般的な角度、さらには思いっきり寝かせると言う具合に。

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

それぞれの角度でも、ペン先が紙に進んでいくタッチは確かにそれほど変わらない。さらに言えば、どの角度でも筆跡の太さにも、それほどの差は見られなかった。なるほど、こういうことだったのか。それから、これは個人的に感じたことだがこのペン先はどの方向に走らせてスムーズに進んでいくような印象があった。

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

左から右、上から下であれば、一般のペン先でも全く問題はない。

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

しかし、下から上のようなペン先にとってはちょっとつらい逆書きのような時でも、この反りのあるペン先ならスムーズに走ってくれる。ちょうど、先端が上を向いているスキーの板と、思っていただければわかりやすいかも知れない。

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

このウェーバリーの字幅にはM(中字)の一種類しか用意されていない。

パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

■ タッチの優しさがある

書き味としては、このしなったペン先により弾力のある柔らかな書き味楽しめる。柔らかいとは言っても、ペン先のしなりをたっぷりと味わえるというタイプのペン先ではないようだ。と言うのも、ペン先はあらかじめしなっているので、その分だけしなりの許容範囲と言うか、「しなりしろ」と言うべきか、そうしたものがやや狭いからだろう。

そうした柔らかさよりも、むしろこのペン先ならではの味わいとして感じたのが、さぁ、これから書くぞ、と紙の上にペン先を置いたときのタッチの優しさ。

ペン先が紙にあたるときの衝撃を弓なりのペン先がほどよく吸収してくれているように感じる。優しい気分で書き始められる万年筆だと思う。

* パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆 30,000円+Tax
■ 私はこのパイロットカスタム743 ウェーバリーをアサヒヤ紙文具店さんで買いました
■ こちらのページでは、ウェーバリーで書いている動画をみることができます。
■ アサヒヤ紙文具店さんでは、プランジャー式カスタム823のウェーバリータイプも販売しています。

こちらのお店では、試し書き用のウェーバリーが用意されています。特に店長の萩原さんが個人的にお使いのものは、とても書き味が良いです。その書き味にイチコロになってしまいました。私は、萩原さんにウェーバリーのペン先を私の好みの書き味に微調整を施してもらいました。

*関連コラム
■「美しい細字を書きたい。」パイロット カスタム743 フォルカン
■「飲みっぷりのいい万年筆」パイロット カスタム823 プランジャー
■「ほどよい重量感の万年筆」パイロット カスタム823 B
□ アサヒヤ紙文具店 リニューアル店舗のレポート記事(オールアバウト)