2010.09.14(213)

「梱包作業がアートになる」

マコト・オリサキインターワークス研究所

or-ita

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita|オリタ Mother-model type

おそらく、今から申し上げることは、誰しも一度や二度経験したことがあると思う。それは、何かを発送する際の梱包作業。梱包作業をするには、まずは段ボールを用意しなくてはならない。

できるだけサイズがピッタリとくるダンボールを探す訳だが、ピッタリなんてことはまずなく、帯に短しタスキに長しで少し大きかったり小さかったりする。小さいとそもそも入らないので、少し大きいものを選ぶことになる。その中に送るべきものを入れる。

箱は少し大きいので、どうしても隙間が出てきてしまう。こうした時の対処法としては、二つの方法がある。一つ目はその隙間を何かで埋めてしまうというもの。これは簡単に出来てとても楽。しかし、配送料金という問題がでてくる。配送料金は、その容積によって決まるので、できるだけ小さいに越したことはない。

そこで、もう一つの方法になるわけだが、中に入れるものに合わせてダンボールを加工してしまうという方法。ダンボールは、基本は紙ではあるのだが、そう簡単には、折り曲げられなかったりする。そこで、私たちは折り目の部分にほんの少しばかり切れ目を入れてあげたりする。この時、カッターを使うのだが、これが結構難しい。

というのも、ついついダンボール全部を切ってしまうからだ。ここでは折り目だけが必要なので切りとってはいけない。あくまでも、折り目として少しだけ切らなくてはならない。

長くなってしまったが、とまぁ、そんなことが。

この微妙なカットをものの見事に実現してくれるカッターがある。厳密にいうと、これは「刃」がある、というべきかもしれない。この「刃」を創りだしたのは、織咲 誠さん。織咲さんは、多摩美術大学その他数校でも教鞭を執られているインターデザイン アーティスト。

では、この刃の特長から見ていきましょう。刃は円形をしていて、その円周すべてが歯になっているのではなく、等間隔に刃がついている。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

その刃を数は、全部で12個。一つ一つの刃には、ご丁寧に1~12まで番号がふられている。一体なにゆえ刃に番号があるのだろう。私なりにその理由を考えてみた。たとえば、こういう可能性はないだろうか。人は、こうしたものを見ると、どうしても何個あるのだろうかと、ついつい数えたくなってしまうものだ。そして、人はものを数える時には、「ひとつ、ふたつ。。」という具合にそれを指で触れる。

実は、この刃は恐ろしく切れ味がいい。そんな事をされては危ないということでいちいち数えなくてもいいようにこの様に予め番号をふったのではと、私は勝手に考えてみた。

さて、その一つ一つの刃は、ほぼ正方形になっていて、その先端は美しく研ぎあげられ、見るからによく切れそうだ。その正方形の刃の根元には、こんもりと盛り上がった丘のようになっている。この刃単体では危ないので、ホルダーにセットして使う。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

織咲さんのところでは、現段階、そのホルダーまでは作っていないので、市販のオルファまたは NT カッターのものをセットして使う。

ちなみに織咲さんのサイトでは、これらのホルダーをセットした状態でも「おすそ分け・販売」してくれる。私は使いやすそうで、安全性もよさそうなのでオルファタイプを選んでみた。これはハンドルの黒い部分を握った時だけ刃が出てくる。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

そして本体中程にある赤いポッチを押し込めば、先程のハンドルにロックがかかって、刃は出てこない安全な機構にもなっている。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

■ プチプチと音をたてて転がっていく

では、次にこの使い心地を。ダンボールを1枚用意してハンドル優しく握りしめ鋭い刃を出し、ダンボールの上に添えてコロコロと転がしてみた。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

「コロコロ」と表現したが、これはその動きを言ったまでであって、実際には、「コロコロ」という音にまじって所々で「プチプチ」という音もする。それは、ちょうど緩衝材のあのプチプチを潰した時のような音。この転がり具合、そしてプチプチという音がなんとも心地良い。

いつもまでも、どこまでも転がしていたくなってしまう。「コロプチ」したあとのダンボールの表面を見ると、ミシン目のような跡が作られている。これを折り目にしてダンボールを折ってみると、なるほどたしかに気持ちよく折ることができる。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

ここで、おそらく多くの人がいくつか気になる点が思い浮かんだのではないだろうか。それを一つ一つを検証してみよう。まず裏面はどうなっているのか。これが不思議とミシン目状の切れ目は一切裏面には至っていない。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

試しに結構力を入れて、盛大に「ゴロブチ!」と、転がしてみたが、私が試した段ボールではやはり結果は同じだった。

■ ミシン目カッターで同じことはできるか?

次に、こうしたミシン目状にカットするツールには、いわゆるにミシン目カッターというものがある。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

それでも同じようにできないだろうか。実際にやってみると、同じようにコロコロと転がっていくのだが、そこに出来上がった跡を見てみると、一見するとミシン目のようだが、ミシン目のようにとぎれておらず、ほぼ一直線の切れ目になってしまっている。18mm と28mmの両方のタイプでも試したが、いずれも同じだった。

これでも折れないことはないが、表面が完全に切れてしまっているので、折った時に、パックリと割れてしまいちょっと強度面で不満を感じる。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

刃を比べると「or-ita」の方がよっぽど先端が尖っているのに、このような違いになっている。これはどうしてなのだろう?

そこで、「or-ita」で切っているところを横からじっくりと観察してみた。一つ一つの刃は確かに深くダンボールにスッと入っていくのだが、次の瞬間にはその刃は、すぐに引き抜かれていく。このひとつひとつの刃の間隔が絶妙なのだろう。ミシン目カッターの方は、この感覚がとても狭い。加えて、「or-ita」の場合は、正方形の刃の下にある長方形の丘の部分も有効に作用しているようだ。

これがあることで必要以上にダンボールに深く入りこまないようになっていた。こうした微妙なあんばいによりダンボールを完全に切りとらず、折り目としての点線だけを作っていくことができる。これはとっても面白い。

ネットショップを運営されている方や、ネットオークションなどで日々梱包作業をされている方にはまさに最適なツールではないだろうか。また、ダンボール工作が大好きという方にとっても頼もしいツールだ。

*記事作成後記

今回ご紹介した「or-ita」は、残念ながらまだ商品化はされていません。ただ、織咲さんのご好意で試作品をおすそ分けとして販売していただくことが出来ます。私もそのサービスを使って今回購入しました。

マコト・オリサキインターワークス研究所 or-ita

【これは「or-ita」が届けられた時の荷姿です。「or-ita」を駆使して作られた美しい梱包です。】

試作品とは言っても、そのクオリティはかなり高くむしろ、今後商品化されるものよりも切れ味はいいそうです。いわばオーバークオリティ。

* or-ita

*関連コラム
■「鉛筆の削り仕上げを自分好みにする」肥後守
■「切る、ときどき計る定規」 クツワ アルミ定規
■「空気も切れそう」アドラー 洋鋏 285-5