文具で楽しいひととき
■ 「ひと味違う透明感」 プラチナ万年筆 #3776 センチュリー ニース 20,000円+Tax


 


□プラチナ万年筆のフラッグシップ「#3776」。

 その33年ぶりのフルリニューアルモデルとして生まれた
 「#3776センチュリー」。

 それを記念して
 毎年限定モデルが発売されている。

 そもそも「3776」という数字は、
 富士山の標高を表し、
 美しい日本語が書ける日本最高峰の
 万年筆を作りたいという想いが込められている。

 はやいもので、
 その限定版も4年目を迎える。

 その第4弾が
 いよいよ2014年7月20日から発売される。

 #3776が富士山にちなんでいるということもあり、
 これまでの限定版は、「本栖」、「精進」、「西」と
 富士五湖の名前が付けられてきた。

 その流れで言えば当然、
 第4弾は
 「河口湖」もしくは「山中湖」である。

 ところが、
 今回は富士五湖ではない。

 それどころか日本から一挙に離れている。

 その離れ具合が半端でない。

 飛行機に乗って海を渡り
 フランスまで行ってしまっているのだ。

 第4弾には、
 フランスの高級リゾート地
 「NICE(ニース)」の名が付けられている。

 なにゆえ富士五湖から離れて、
 フランスになったのか、
 企画担当の方にお聞きしてみると、
 期待を裏切るものを作りたかったからだという。

 次は自分だと思っていた
 山中湖や川口湖の気持ちを考えると
 個人的にちょっと複雑な心境になる。

 これまでの第3弾までは、
 どちらかというと男性向けであったので、
 今回は女性を意識した商品にしていきたいという
 狙いがあったという。

 このあとタップリとご紹介するが、
 たしかに優しい雰囲気のボディで、
 まるでやわらかな太陽の光が降り注いでいるような
 仕上がりになっている。


□では、そのボディをじっくりと見ていこう。

 まずなんと言っても
 このボディがいい。

 うっすらと透明度が残るすりガラス仕様だ。


 


 メタルパーツには、
 ピンクゴールドが使われている。

 透明ボディと言うと、
 スッキリとすきわたったものが多い中、
 こうしたすりガラスのものは珍しい。

 しかし、
 これも大いにアリだなと感じさせる
 説得力みたいなものがあった。

 一般にすりガラスというと、
 少々暗いイメージがあるが、
 なぜかこの「ニース」からはそうした感じは受けない。


 


 このすりガラスボディ、
 かなり手をかけて作られている。

 もともとのボディは、
 これまでの「本栖」などに使われている純粋な透明ボディ。

 そこに「ブラスト」という加工をしている。

 これは、小さな砂粒をたくさんぶつけて
 表面に凹凸を付けるというもの。

 一口に砂粒をぶつけると言っても、
 どんな砂の種類にするのか、
 ひとつひとつの砂粒の大きさであったり、
 その数、ぶつける時の強さなどによって、
 出来上がってくるすりガラスの具合は全く違ってくるという。

 当初は、
 やや尖った砂粒をあててみたが、
 表面には鋭角なギザギザがついて
 思っていたすりガラス状ならず、
 逆に透明度の高いものになってしまった。

 もう少しやわらかさのあるすりガラスにすべく、
 こんどは丸い砂粒をあててみた。

 すると、
 ボディ表面は緩やかな波状の凹凸になって、
 ほのかに内側の様子が見えるいい感じの
 曇り具合に仕上がった。

 また細かな点では、
 ベースに使う透明ボディに、
 ほんのわずかだけブルーの色味を混ぜている。

 無色透明のボディの時よりも、
 ブラスト加工をした後に、明るい表情になるという。

 ニースのすりガラスは、
 実は微妙なさじ加減で作り上げられている。


 


□今回の「ニース」がひと味違う
 すりガラスになっているのには、
 もうひとつの立役者の存在がある。

 それは、
 ボディにスパッと入ったライン。


 


 このラインはグルリとボディ全体に入っていて、
 これにより16面体になっている。

 このラインは
 「ダイヤ シェーパーカット」という加工法で作られている。

 簡単に言ってしまうと、
 彫刻刀の角刀で溝を彫っているイメージ。

 この溝ひとつにも試行錯誤があった。

 当初は、
 溝の角度をやや大きめにした。

 この方が、
 ラインがハッキリしてキレイになるだろうと思っていた。

 ところが、
 そのラインから内側がそのままよく見えすぎてしまい、
 あまり美しくなかった。

 そこで、
 角度を少し狭めてみた。

 すると、
 光の屈折がうまい具合に作用して、
 軸をクルクルと回すとキラキラと輝くようになった。

 マットなすりガラスボディの中で
 キラキラとした幾重ものラインが
 美しいコントラストを生み出している。

 ここまでボディの細かな仕上がりにこだわったのは、
 開発当初にCGで作った
 完成イメージがあったからだという。


 


 最近の文具企画では、
 こうしたCG画像を設計CADデータを元に
 色々とシミュレーションしながら作っているそうだ。

 「ニース」のCG画像を見せていただいたが、
 ほのかな光の透け具合など、
 完成版は、
 細かな点まで忠実に再現されている。


□このやさしいすりガラスボディに
 ピンクゴールドのメタルパーツがよく似合っている。


 


 どちらかというとピンクゴールドは、
 女性のアクセサリーというイメージが強い。

 しかし、
 今回の 「ニース」では、
 あくまでも要所要所だけピンクゴールドをあしらっているので、
 女性だけでなく男性でも手にしやすい。

 ペン先も14金にピンクゴールドメッキ仕上げ。


 


 ピンクとはいっているが、
 それほどピンク色は強くなく、自然な色あい。


 


 唯一メタルパーツの中で
 ピンクゴールド仕上げになっていないのが、
 スリップシール機構を支える内蔵スプリング部分。


 


 当初はここも
 ピンクゴールド仕上げにしようと計画されていた。

 しかし、
 実際に作ってみると
 キャップ越しから見たときに、
 主役のペン先よりもスプリングの方が
 目立ってしまったという。

 言われてみればたしかに、
 スプリングだけはそのままの方が
 キャップ越しから見える
 ピンクゴールドのペン先が美しく映えている。


 


□最後に書き心地インプレッションを。

 ボディの握り心地は、
 すりガラスならではのサラサラとした感触。

 透明ボディの時は、
 指先全てがボディにピタリと接している感じだったが、
 この「ニース」は細かな凹凸の凸だけが、
 私の指の腹部分を迎えてくれている。

 「シェーパーカット」も指先からしっかりと感じられ、
 単調になりがちなマットな質感の中で、
 変化というかほどよい刺激を与えてくれる。


 


 ギュッと握りしめた時に
 この溝がいいグリップ効果も生み出してくれる。

 グリップポジションも変えやすく、
 いい感じだ。

 副次的効果として、
 この「ダイヤ シェーパーカット」の溝により、
 ギャザードボディとまではいかないが、
 指先の熱を放熱してくれる効果も期待できそうだ。

 ピンクゴールドになったペン先は、
 これまでのものとしなりなどは
 全く変わっていないという。


 


 少しばかり筆圧をかけると、
 ペン先の先端だけが気持ちよくしなる。

 サラサラとした質感のグリップに歩調をあわせて、
 ペン先もサラサラ進んでいくのを感じる。


 


 そして、
 書いている時に見える
 ピンクゴールドのペン先の眺めが実にいい。


 


(2014年6月24日作成)


 * まずは、
   シリアルナンバー入りで2,000本が発売され、
   うれしいことに今回のモデルは
   その後定番商品として販売されていくそうです。

 * ペン先は、F(細字)、M(中字)、B(太字)の3種類。


 ■ プラチナ万年筆 #3776 センチュリー ニース


 



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