文具で楽しいひととき
■その194  「ドイツデザイン 万年筆」  Düller 万年筆 By ディートリッヒ・ルブス 5,250円


  


□久しぶりに、
 デザインにいちころになってしまった。

 第一印象もとてもグッときたのだが、
 そのデザイナーが誰であるかを知ると
 もうこうしてはいられないという状態になってしまった。


□そのペンとは「Düller」の万年筆。

 これは「デューラー」と読む。

 「Düller」は
 イデアインターナショナルが展開するステーショナリーブランド。

 コンセプトはドイツのバウハウス。

 これまで、ボールペンやシャープペン、ノート、筆ペンなどを
 送り出している。

 余計なものをそぎ落とし、
 機能美を追求したデザインが全てに貫かれている。

 また、この「Düller」では、
 これまでステッドラーとコラボしたモデルを出すなど、
 本国ドイツとの取り組みも積極的に行っている。

 そして、
 今回のペンでもドイツとのコラボが実現している。

 ドイツを代表するデザイナー、
 ディートリッヒ・ルブス氏とのコラボだ。

 この方の名前をもし、ご存知ないという方でも、
 デザインされたプロダクトなら
 きっと目にされたことがあると思う。

 ルブス氏は1962年にブラウンに入社し、
 数々のプロダクトデザインを手がけてこられた方だ。

 代表的なものは、
 電卓そして、今も販売されている A B 1等のクロックシリーズである。

 ちなみに、
 電卓の方は大変残念ながら現在は廃盤となってしまっている。


    


 御年71歳となるディートリッヒ氏は
 すでにブラウンを定年退職されている。

 現在はブラウンのアドバイザーを務めておられるが、
 実際のデザインは、今は行っていないという。

 ちなみに、
 ルブス氏は、これまでブラウン社以外の仕事をしたことがなく、
 今回のDüllerのペンシリーズがはじめてとなる。

 海外メディアでは、
 「ルブス氏復活!」と取り上げているところもあるという。


  


□ペンの話しに入る前に、
 まずは、パッケージから説明しなくてはならない。

 それほどに
 こだわったパッケージになっているのだ。

 このパッケージ、
 見てのとおり、ノートブックスタイルをしている。


  


 ハードカバーで、見るからにしっかりとした作り込み。

 そして、期待を裏切らないのが、
 表紙を開けると、中身もちゃんとノートになっているところだ。


  


 1ページ目には、このペンをデザインしたルブス氏による
 メッセージがドイツ語で綴られている。

 内容をかいつまんでご紹介すると、

 「Düllerは、世界に通用する新しいデザイン手法に一貫して則っています。
 
 これにより、カラフルなプラスチックや行き過ぎた高級筆記用品などの世界と離れ、
 Düllerの筆記用品を機能的にデザインすることが可能となりました。

 味のあるデザインや独創性、そして高度な製造品質が特徴です。」



 ということが書かれている。


□そして、すでに皆さんの目にも入っていることだろう、
 ペンがノートの中に埋め込まれている。

 このペンの為に、特別に誂えられたかのように
 ピッタリと万年筆が収まっている。


  


 これはもう
 「セミオーダー」ではなく、「フルオーダー」と言うべき
 ピッタリ具合である。

 あまりにも、ピッタリと収まっているので、
 このペンをどうやって取り出せばいいのか
 あたふたと、してしまった。

 隙間がないので、指をいれようにも
 無理なのだ。


  


 なんのことはない。
 上からほじくり返さなくても、
 ページをめくればいいのだ。


  


 全てのページには、このペンの為にキッチリとくりぬかれている。

 がさっとページをつかみ、それを拡げれば、
 目的のペンを手にすることができる。


□では、
 いよいよ、ルブス氏がデザインした
 この万年筆を見てみることにしよう。


  


 「ブレットペンシル」と呼ばれる弾丸のようなスタイルのペンがあるが、
 この万年筆はちょうどそれくらいの短さ。


  


 おもわず「ブレッドペンシル」と言ってしまったが、
 私がそう思ったのは、この短さのせいだけではない。

 ボディの後ろ側が、
 やや細くなっているということもあったため。

 短いうえに、ボディもそれほど太くない。


  


 スペック上で見たら「コンパクト」なペンということになるだろう。

 しかしながら第一印象としては
 「コンパクト」という形容よりは、
 むしろ「存在感」という言葉の方がしっくりとくる。

 ディテールにこだわり抜いたデザインになっているのだ。

 ボディの材質は、アルミニウム。

 手に取るとアルミらしいざらざら感の代わりに、
 サラサラとした質感が指先にやってくる。

 表面にはブラックのマット塗装がされているからだろう。


  


 当然アルミということで軽い。

 日々の実用道具として気軽に使えそうな
 親しみのようなものを感じる。

 全面マットブラックの中で
 要所要所にシックなグリーンが使われている。

 イデアの方によると、
 このグリーンは、ルブス氏がブラウン時代にデザインした
 電卓にあったボタンのグリーン、そして
 クロック(AB1A、AB5など)の頭についている
 アラームボタンのグリーンがベースになっているという。


    


 ちなみに同じデザインのボールペンとシャープペンもあるのだが、
 それらのグリップにあるギザギザ加工では、
 当初、ルブス氏から
 ブラウンのオーディオに使われていたボリュームのつまみの
 ギザギザと同じスタイルにしてほしいというオーダーがあったそうだ。

 今回のペンでは、残念ながらそこまでの作り込みは
 出来なかったという。

 いずれにしもて
 ブラウン好きには、なんともたまらないディテールだ。


□ペンの中で顔というべきクリップに目を凝らしてみると、
 シンプルながらオリジナリティあふれるフォルムをしている。

 クリップを上から見ると、端から端まで実直に伸びている。


  


 クリップには先ほどのグリーンが使われていて、
 ボディに配置されたグリーンのアクセントと
 ピッタリと息を合わせるかのようだ。

 今度はそのクリップをやや横から眺めてみる。


  


 特長的なのは、
 クリップの先端の形。

 先端がスプーンのようにカーブを描いている。


  


 新しいデザインのようにも、
 古くから伝わる何かの道具のようにも見えてくる。

 いずれにしても美しさを感じる。

 クリップの厚みは約1.1mm と、クリップにしてはやや厚めの部類に入る。

 一般的なクリップと違うところは
 クリップの両端を折り返すという加工はあえてとらず、
 細いながらも鉄板のままになっている点。

 それにより、
 厚みのあるクリップであることが一目でわかるので、
 クリップの頑丈さというものがとても伝わってくる。

 このクリップもボディと同じアルミ製なのだろうか。

 どことなく真鍮製のようにも感じる。


□マットブラックのボディの中で1ヶ所だけ、
 「Düller」のロゴマークがある。

 そこだけは
 ツヤツヤとした加工になっている。

 その奥ゆかしさがいい。


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 (心の中のつぶやき)
 あぁ、キャップを開ける前だというのに
 もう、こんなに書いてしまった・・・。
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□では、いよいよキャップを外してみる。

 一瞬、どこからキャップを引き抜いていいのやら戸惑ってしまう。

 それくらいボディは一体感があるとも言える。

 目印は、後軸にあるグリーンのアクセント。


  


 精密に作られたそのつなぎ目をまっすぐ引っ張ると、
 「シュッ。。」という小さな音とともに外れる。


  


 キャップを外した状態では到底筆記出来ないので、
 キャップを後軸にセットすることになる。


  


 このキャップをセットするのが実に気持ちいい。


  


 ペンの後軸は、一段細くなっており、
 それまで全く気づかなかったのだが、
 その段差には、とても狭い隙間がある。


  


 そこにキャップの口がスウ〜ピタッとはまる。

  ちょうど
 パズルで最後のワンピースをパチリと
 はめこんだ時のようなピッタリ感に包まれる。

 すると、
 そのつなぎめはほぼフラットになる。

 この状態で、ペンを机の上に置いてしばし眺めてみる。


  


 全体のバランスがとてもとれている。

 キャップからボディ中央までは、
 やや太めのラインになっているが、
 手にするグリップの所へくると、
 あくまでも自然に細くなっている。

 そして、
 先端には「私は万年筆です」と
 誇らしげに金色のペン先がついている。

 先程まで短かったボディとは
 うって変わって書くためのフォルムへと変身を遂げている。


  


□インクはカートリッジのみの対応。

 カートリッジは小さいタイプ。


  


 さて肝心の書き味は、どうだろうか。

 ボディが長くなり、
 すっかり筆記体勢になっているそのペンを手にとり、
 こちらも筆記体勢へと入る。

 スチール製ということもあってか硬めなタッチ。


  


 日頃ボールペンに馴染んでる方にも
 おそらくすんなりと手にすることができるだろう。

 ペン先にはドイツのシュミット製のものが使われており、
 私の手にしているFはヨーロッパのものにしては、
 やや細い印象。


  

  


 インクフローは、すこぶるいいとまではいかないが、
 まずまずといったところ。


  


 このペンの良さは、
 ペン先というよりも、アルミで作られた静かなる美しさをたたえたボディ、
 そしてその軽快さにあると思う。

 ブラウンの電卓やクロックも日々の生活の中で使うものである。
 これもやはりそんな使い手に必要以上にデザインを意識させない配慮を感じる。

 しかし、フト見た時に「あぁ美しい。。」とも感じられる。

 そんな万年筆である。


  


■記事作成後記

 コラムの中でもご紹介しましたが
 万年筆以外に
 キャップ式のシャープペン、そしてやはりキャップ式のボールペンもあります。

 各3,675円。

(2009年12月8日作成)


 ■ Duller 万年筆byディートリッヒルブスは、こちらで販売されてます。

 ■ こちらでも販売されています。





□関連リンク

 □ 「イデアが考える文具の新しいカタチ」(オールアバウトで書いたDüllerの記事)

 ■ 「日本の心を持ったラミーペン」 ラミー ノト (noto)

 ■ 「地球に優しいスリムボディ」 ラミー スピリット ペンシル (パラジュームコート) 

 ■ 「使うほどにわかる計算しつくされたデザイン」 ラミー2000 ペンシル



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