文具で楽しいひととき
■ その111 「スリムになったキャプレス」 パイロット キャップレス デシモ 15,000円+Tax
                                            

  パイロット キャップレスデシモ 万年筆


□昨年の年末、本を出版させていただいた時に、
 妻がお祝いに好きな万年筆を1本プレゼントしてくれるということになった。

 これは、めったにないチャンスだぞ、と思い
 いつも以上に頭をフル回転させて、どの万年筆にしようかとあれこれと
 想いをめぐらせた。

 そして、最終的に絞ったのが、ラミー2000とキャップレスのデシモ。
 この2本のどちらにしようかと想い悩むよりも、
 あとは実際に手にして決めればいい、と思い
 善は急げとばかりに、その日のうちに横浜ロフトに家族揃って出かけることにした。
 
 普段、万年筆売り場を見るときは、
 「今日は特に買う予定がない」という引け目からか
 どこか遠慮がちになってしまい、
 店員さんとは、できるだけ目を合わせないように
 そそくさと見ていた。

 でも、その日は違った。
 「今日は、万年筆を1本買う。」
 なんと素敵な響きの言葉だろう。。。

 いつもよりもこころなしか堂々とした立ち振る舞いで
 万年筆売り場をじっくりと、そして、店員さんにこちらから笑みなどを送りながら
 見ていたのであった。

 「さぁ、例の2本を見せてもらおうか」と、心の中で紳士風に呟きながら
 ちょっと腰をかがめてショーケースを見てみると、
 キャップレス デシモは並んでいたのだが、
 ラミー2000の姿がどこにも見当たらない。

 あわてふためいて、店員さんに聞けば
 在庫が切れて取り寄せになるという。

 なんということか。。。

 ラミー2000を取り寄せてもらい、改めて2本を吟味しながら
 決めるということもできたのだが、
 すでに、私は、すっかり「万年筆を買う」モードに突入していたので
 もうあとには引き返せない。

 ということで、キャップレス デシモを買うことにした。 


□大変、前置きが長くなってしまったが
 今回はキャップレス デシモをご紹介。


  


 キャップレスは、キャップのない万年筆として1963年の発売以来、
 世界でも人気を博しているペンだ。

 「デシモ」はスペンイン語で10番目という意味。
 今回のデシモは発売から数々のモデルチェンジを重ね、まさに10番目となる。

 シリーズ最新作となる今回の最大の特徴は、ボディがスリムになり、
 軽量化されたこと。一つ前のモデルより太さにして約1mm、重さも9gも軽くなり
 コンパクト化に成功している。


  
     【 上がデシモ、 下がひとつ前のモデル 】

 コンパクトになったということで、単なる外観の変更と思う方もいるかも知れないが、
 これが違うのだ。

 ペンの先端の中には、シャッターと呼ばれるフタがあり、
 これが、ノックするたび開閉している。
 この複雑な機構をよりスリムになった中で実現させるというのは
 並大抵なものではない。

 外観だけでなく、外から見えない内部の機構にもしっかりと手が加わっているのだ。


  


□長めのノックボタンをグイーッと重みを感じながら押し込むと、
 カチッとメカニカルな音をたてながら、
 万年筆のペン先が遠慮がちにちょこんと出てくる。

 このノックの押しごこちがなんとも気持ちいい。
 手の感触と耳で愉しむことができる。
 特にペン先を引っ込めるときのノック音がたまらない。
 「シュポッ」というボールペンではちょっと味わえないいい音がする。
 これは、きっとペン先内部で繰り広げられている
 シャッターが閉じる音なのだと思う。

 この音からも、そのシャッターの機密性の高さが伺い知れる。

 
□ちょこんとしか出ていないペン先の書き味は、
 前回のセーラープロフェッショナルギアに比べて
 紙にペン先をあてたときのタッチに多少の硬さはあるものの、
 ペン先のしなやかさは気持ちよく味わえる。

 ペン先が少ししか出ていないのに、
 このしなやかさは、一体どうしてだろうと思ってしまうほど。

 実は、外から見えていないのだが、ボディの内部にはペン先が隠れているのだ。

 ボディを分解してみると、
 万年筆のペン先らしからぬ、スラッと細いペン先が現れる。


  


 なるほど、この細長いペン先と18金ということで、
 先ほどのしなやかな書き味が生み出されていたのだろう。


  


□ペン先側についているクリップは、一般のペンのそれと比べてかなり
 長めになっている。


  


 これは、シャツのポケットなどに挟むということに加えて
 もうひとつキャップレスならではの大きな役割があるからなのだ。

 それは、握るときのガイド役ということ。
 そもそも、万年筆は筆記時にペン先と紙が正しい向きになっていないと
 うまく書くことができない。
 以前にご紹介したパーカー45でもそうだったが、
 ペン先が少ししか出ていないと、その向きがちょっとわかりづらい。

 キャップレスについているクリップを親指とひさし指でつまむように
 握ってあげれば、自然と正しい向きになる。


  


 しかも、このクリップが前述のように長いことで、
 ペンの先端を握ったり、中央をゆったりと持ったりと
 グリップの位置が好みに応じて決められるのだ。


  


□机の上でじっくりと使う万年筆と違って
 外出先でもサッと取り出してワンノックで使えるのが
 このキャップレスのいいところだが、今回のスリム&軽量化は
 まさに、キャップレスらしさをより味わえる改良といえるだろう。

 記念すべき10番目に相応しい、キャップレスのひとつの完成形だと思う。
 私の出版記念の祝いペンとしても大満足の1本だった。


(2006年7月18日作成)


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