文具で楽しいひととき
■ 「ペーパーワールド・チャイナ2012 レポート!」

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□成田空港には
 朝8:30に着いた。

 成田エクスプレスの車窓から見た時は
 スカッとした青空だったのに
 なんだか私の気分を表すように
 今の空はどんよりした雲が垂れ込めている。

 上海に出発する日は
 タイミング悪く満州事変の9月18日。

 折しも中国各地で反日デモが行われている
 最中だ。

 上海行き搭乗口にある待合スペースには
 ビジネスマンらしき人たちが何人かいた。

 彼らも私と一緒で
 こうした中、中国に行くようだ。

 一様に不安な表情がある。

 その中の何人もの人たちが
 会社からの電話を受けている。
 どうやら現地の最新情報を聞きいているようだ。

 「十分に気をつけて行ってきます」と
 あまり元気のない声で
 答えてるのが聞こえくる。

 また、こんな人もいた。

 やはり会社からの電話なのだろう。
 開口一番「中止になりましたか?」と
 聞いていた。

 できれば
 行きたくないのだろう。

 そのすぐ後
 「はぁ、わかりました。気をつけて行ってきます」と
 がっくりと肩を落としている様子が、
 背中越しに聞いているだけでも
 十分伝わってくる。

 いつもなら
 搭乗10分前にもなると
 長い列ができるが、
 今回ばかりは
 列を作ることなくスイスイと飛行機に乗り込んでいけた。

 機内には
 観光客らしき人は一人もいない。

 きっと今回の状況を見てキャンセルしたのだろう。


□実は私も
 今回の上海出張は
 行くべきかどうか正直迷った。

 TVの報道だけを見ていると
 これは行かない方がいいのでは、、、
 という思いが強くなってくる。

 しかし、
 実際のところはどうなのだろうと、
 知り合いを通じて
 現地の状況を聞いてみた。

 それによると
 上海の町中では
 特に混乱はなく、
 日本人観光客らしき人も見かけたとのことだった。

 デモが行われている
 日本領事館のエリアに近づかなければ
 まず問題はないだろうという。

 TVの報道と
 知り合いを通じて聞いた現地の情報とを
 総合して
 最終的に私は行ってみようと決心した。

 ただ、
 十分に自分の身を守る対策はとろうと
 同時にこちらも決心した。

 飛行機に乗り込むと、
 やはり空席が目立つ。

 私の隣も空席だった。

 満席ではないのに
 機内には、
 「不安」という空気で充満していた。


□飛行機を降り
 入国審査を受ける。

 今回の上海出張で
 ここが初めて接する中国人となる。

 入国審査官にありがちな
 淡々とした中にも
 少しばかり優しさみたいなものを
 私は感じた。

 パスポートにポンとスタンプをおしてくれ
 手渡すときにかすかに笑顔を浮かべ
 「バーイ」と言ってくれた。

 パスポートを出しているので
 当然、私が日本人であることは
 わかっている。

 なんだか
 すこしうれしくなった。

 旅行というものは
 最後に思い出した時
 「よかったこと」そして「ちょっと嫌だった」ことを
 総合評価して、「よかったこと」の方が多かったら
 その旅行は楽しかったものになる。

 まずは出だしで
 「よかったこと貯金」がすこしだけできた気がした。


□スーツケースを受け取り
 それを転がしながら
 出口を出ると
 「TADASHI TSUCHIHASHI」というプレートを持った
 男性が待っていてくれた。

 実は出発の前日に
 ペーパーワールド・チャイナの主催者から電話があった。

 この時期に
 日本人が一人タクシーに乗るのは
 ちょっと危険なので
 空港からホテルまでは
 車を用意してくれたという。

 いつもは、
 リニアモーターカー、そしてタクシーと乗り継いで
 ホテルに向かっていた。

 私も
 タクシーで乗車拒否されたら、
 どうしようと思っていたので
 この申し出は大変うれしかった。

 用意された車に乗り込み
 一路ホテルへ。

 30分ほど走ると
 窓を流れる景色が
 ビル群にだんだんと変わっていく。

 てっきり
 中国の町中のあちこちで
 反日デモが行われていると思っていたが、
 ホテルへの移動中
 一度も目にすることはなかった。

 道路には
 トヨタ、日産、中にはレクサスなど
 日本の車も平然と走っている。

 ちなみに
 私を迎えにきてくれた車は
 気を利かせたのか
 ドイツのアウディだった。


□ホテルでチェックインしていると、
 私の後ろには日本人らしい4~5人のグループが
 これからチェックインするために待っている。

 なんだか自分が一人だけでないという
 安心感を覚えた。

 よっぽど話しかけようかと
 思ったが、やめておくことにした。

 まだまだ上海出張は始まったばかり、
 一人でやらなくてはならないことは多い。

 里心ではないが、
 そういうものは断ち切っておいた方がいい。

 いつもなら
 ホテルに着くやいなや
 上海の中心街「南京東路」に行き
 「福州路」という文具街にいくのだが、
 今回はさすがに控えることにした。

 18日は、
 上海でも人民広場でデモが行われているという
 人民広場は南京東路と目の鼻の先。

 しかも
 一人で動くのはちょっと危険かもしれない。

 おとなしく、ホテルにこもることにした。

 夕食もホテルで済ますつもりでいた。

 ホテルの窓から
 外を眺めてみると
 反日デモはまったくなく、
 平穏な中国生活がながれているだけだった。


 


 部屋で、
 いたずらに時間だけ過ごしても
 不安ばかり募ってしまうので
 気晴らしに
 一階ロビーのラウンジでコーヒーをのみながら
 原稿チェックをすることにした。


 


 一階ロビーということで
 ガラス越しに
 外の様子がよく見える。

 道路にはタクシーやバスなどが
 ひっきりなしに走り、
 私の知っているいつもの中国の風景があった。


 


 道路の向こうには
 「ファミリーマート」があるではないか。

 中国では
 「ファミリーマート」と「ローソン」が
 幅をきかせている。

 後でミネラルウォーターでも買いに行こう。

 一人で町中を歩くのは危険とは言え、
 歩道橋を渡ったところに行くだけなら
 問題はないだろう。

 原稿チェックも一段落して、
 コンビニに向かうことにした。

 歩道橋を上ろうとした瞬間、
 ふと反対側を見ると
 大きなショッピングモールがあった。

 距離にして300mといったところ。

 これくらいの距離なら大丈夫なのではと思い、
 コンビニに行く前に行ってみることにした。

 はじめはコンビニだけと思っていただけなのに
 もう少し足を伸ばし、
 今はショッピングモールに向かっている。

 調子に乗って、こんどは地下鉄にでも
 乗ってとなっていきそうな自分を
 思いっきり押さえ込み
 今日はショッピングモールだけと
 言い聞かせた。

 ショッピングモールは
 若者向けに出来ているようで
 女性・男性の洋服やアクセサリーのショップ
 色々と入っていた。

 地下にはフードコートがあったので
 降りてみた。

 そこには
 中国のレストランの他
 日本系の牛丼の「すき家」や
 ラーメン屋さんの「味千」などもあった。

 フードコートというところは
 作っているところと食べるところに
 ほとんど仕切りがないので
 歩いているだけで
 いいにおいがしてくる。

 当初はホテルで
 食べようと思っていたが、
 いかんせん、ホテルは高い。

 さっきのコーヒーだって
 1杯600円もした。

 夕ご飯をたべたら
 4~5,000円くらいは平気でするだろう。

 まだ4:30と時間的はかなり早かったが
 逆に中国の人たちで混んでいる時よりも
 むしろいいだろうと、
 ラーメン屋さんの「味千」で食べることにした。

 「味千」は
 日本の熊本が本拠のラーメン屋さん。

 メニューには日本語も併記されている。

 考えてみたら
 この時期に日本系レストランに
 日本人一人で入るのは
 かなり危険かもしれなかった。

 店内をぐるりと見回すと
 中国の人たちが
 黙々と自分のラーメンを食べている。

 ふと入り口の壁を見ると、
 そこにはA5サイズくらいの小さな中国国旗が
 掲げられていた。

 反日デモ対策なのかしれない。

 今回の出張で初めて目にする
 反日デモ系のものがそれだった。

 チャーシュー麺、餃子、
 さらにはビール(キリン一番絞り瓶)
 という、
 もうこれは間違いなく
 日本的なセットを注文してしまった。

 店員さんは
 中国語で話しかけてくれたので
 どうやら雰囲気に馴染んでいたようだと
 少しばかり安心した。

 「日本人ほろ酔いセット」(私が勝手に名付けたものです)は、
 しめて49元。

 つまり590円くらいといったところ。

 さっきのホテルのコーヒー1杯より
 安いではないか。。

 トラブルもなく
 ホテルに帰り、
 明日から始まる展示会出張の準備をして
 早々に床についた。

 こうして、
 今回6年目となる上海出張は
 いつもと違う趣でスタートしていった。





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