2019.07.23(436)

「一体何本のペンを持ったらいいのだろうか」

ボールペン

私はたくさんのペンを持っている。

万年筆は40本以上、ボールペンは数えたことがない。シャープペンは最近増殖を続けているし、多機能ペンは今ではほとんど買わなくなったが、以前に入手したものが結構ある。もう残りの筆記人生を考えれば、今所有しているペンで十分やっていける。なのに、また買ってしまう。これでは増える一方だ。一体は私は何本のペンを持ったらいいのだろうか。。

万年筆

シャープペン

■ 書き味をインプット

白いペン

おびただしい数のペンを前に自己嫌悪に陥りそうなところだが、最近はそうでもないぞ、これはこれで大いに意味あることなのだ!と思えるようになってきた。決して負け惜しみなんかではない。それはこういうことなのだ。少し声を大にして言おう。

「ペンとの出会いは新しい書き味との出会いなのだ!!」

ズラリと並んだペンを前にして、このペンはこんな書き味で、これはこんな感じだったなぁと目に浮かび、手にその感触がじわじわと蘇ってくる。たくさんのペンを使ってきたことで、それだけ豊富な書き味が私の中にインストールされてきたのだ。これは私にとって「書き味財産」と呼んでもいい。

筆記具ごとに書き味は違う

■ 自分だけの書き味基準を作っていく

普段使いのペン

たくさんの書き味が私の中に蓄積されたことで私の内側で何が起こったのか。たくさんのペンと出会う前にはなかった変化が起きている。私はこういう書き味が好きだという好みのゾーンみたいなもの、言わば自分の好きな書き味ベンチマークというひとつの基準が次第次第にあぶり出されてきたのだ。書き味とは、言葉では表しにくくあくまでも感性の世界に属するものだ。でもたくさんのペンを所有し書いてきたことでそうしたことが少しずつ分かってきた。

同じことは、たとえばワインや日本酒などでもあると思う。一番最初に出会ったもので、これが私の好みだと感じられるものではない。はじめはこういうものか、、くらいからスタートし、その後いくつもの味を経験することで自分の中のマッピングのようなことが構築されていくように思う。

このベンチマークが出来てくると、新しい書き味に出会っても自分の中の基準よりもどうであるかと位置づけられる。なんとなく受け入れるのではなく、自分のしかるべき引き出しにいったん入れておくようなイメージだ。

ぺんてる グラフ1000 シャープペン

■ そうは言っても一度に一本のペンしか使えない

万年筆

たくさんのペンを所有しはじめた時、それらを机の上にどうだ!とばかりにズラリと並べて誰に自慢するでもなくウンウンと満足げに頷きながら過ごしていたこともあった。しかし、次第に窮屈さを感じるようになってきた。たくさんのペンたちに対し平等使ってあげなくてはと思うようになり、あれも使ってあげなくっちゃ、たまにはこっちのペンも使わないと、などとあちらこちらのペンに目移りして落ち着かない状況に陥ってしまった。そんなある時ふと思った。もっとひとつのペンにしっかりと向き合うべきではないかと。そして、数あるペンの中から今本当に使いたいものを選び抜いた。それ以外のペンは大切にケースなどに収納して、いったん視界から姿を消してみることにした。

万年筆

そうすると、今選んだペンと真正面からじっくりと向き合っていけるようになった。そして、ペンを静かな気持ちで味わうということができるようになっていった。以前のようなあれも使わなくっちゃというペンに追い立てられるという感覚もすっかりなくなった。たまに、気分が変わりストックしているものから選んで活用しているペンと入れ替えることもあったりする。常にあれもこれもと選ぶのではなく、必要になったらその時はストックのペンケースをよっこらしょと出して選んでいく。「使う」と「選ぶ」をいったん切り離したような格好だ。たくさんのペンを持っているが、日常は少数にしてたまに入れ替えるという筆記生活だ。今はこのスタイルが私にはあっているように思う。



ペンにこだわりはじめた頃は、まだそれほどペンを持っていなかったので、たくさんのペンに囲まれた生活はさぞ素晴らしいものなんだろうと夢見ていた。そして、いつしかそれがある程度実現して、たくさんのペンに囲まれるようになった。すると私の心境は変化してきた。こんどは究極の数本だけに絞りたいと考えるようになった。ペンをまだそれほど持っていない時はたくさん持ちたいと考え、たくさん持ってみると今度は少なくしたいと、なぜか現状とは逆のことを望んでしまうという摩訶不思議な状況。

でも、考えてみると必ずしも現状の逆を望んでいるだけではないということも分かってきた。今減らしたいと思うのは、実はこういう心境なのだろう。たくさんの書き味を自分の中に取り入れた上で、その中で究極の4本ないし5本を選びたいということなのだ。はじめから4本・5本にするというのとは違い、色々な書き味を経験した上での4本・5本なのだ。

いつの日か、そういう状態になってみたいものだ。

筆記具

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