2016.03.29(352)

「スムーズに削れる訳」

KUM

鉛筆削り 300-1

KUM 鉛筆削り シャープナー 300-1

私はなにかモノを買う時に意識していることがある。それは、その専門メーカーが作っているところから買いたいということ。そのモノを作り続けて何十年というところのモノを好んで買っている。一見すると他のものと同じに見えても、その道をひたむきに歩み続けているので、実は細かなところに長年積み重ねられた技が血液のように流れていると思っているからだ。私はモノを使うとき、そうした技も味わいたいと考えている。手を伸ばせば50才がそこにあるという年代にさしかかると、特にこうした考えは強くなってくる。私はこのさきあと何文字書けるのだろうか、何本の鉛筆を削れるのか、などと考えてしまう。

■ 現存する手動鉛筆削り最古のメーカー

ドイツの鉛筆削り専門メーカーのKUM。KUMは手持ちタイプの鉛筆削りを専門としている。日本ではハンドルを回すタイプが主流だが、欧米では手持ちタイプの方が多いようだ。1919年にドイツ バイエルン州エルランゲンで創業。90年以上の歴史がある。このエルランゲンという地は、ニュルンベルグにほど近いということで、鉛筆削り作りをスタートしたといういきさつがある。というのもニュルンベルグはステッドラー、ファーバーカステル、リラやスタビロといった名だたる鉛筆メーカーが集まった場所なのだ。

■ 小さな金属のかたまり

KUM 鉛筆削り シャープナー 300-1

私が愛用しているのは、「300-1」というタイプ。指の第一関節ほどしかない小さな本体だが、手にするとズシリとくる。本体は真鍮の塊から削り出して作られている。削る道具が削り出されて作られているというのは、考えてみると面白い。

言ってしまえば、この真鍮の本体に刃とそれをとめるネジだけと、わずか3つのパーツだけで出来ている。実にシンプルな構成だ。それのどこに長年の技があるのかと思われることだろう。

KUM 鉛筆削り シャープナー 300-1

■ たわませている刃

一番の技は刃にある。ネジを緩めて刃単体を取り出してみる。テーブルの上にのせて目線をグッと下げてじっくりと見てみる。ほんのわずかだが、刃の中央がゆるやかなカーブを描くようにたわんでいる。刃をたわませるなど、あまり聞いたことがない。しかも、このたわみは本体にネジどめする際に、あえてまっすぐにせずにわずかにたわんだままにしておくのだという。

KUM 鉛筆削り シャープナー 300-1

これはKUM独自の技術「DTA (Dynamic Torsion Action)加工」というものだ。たわみがわずかにあることで、鉛筆を削る時にその刃が微妙に振動して木の繊維にほどよくフィットして美しく削れるというのだ。どうだ!まいったか!ハイまいりましたという技である。

では、この「DTA加工」とやらを確かめるべく削ってみる。鉛筆を穴に入れて、深呼吸を一度して、目をつぶり鉛筆をまわしてみる。

KUM 鉛筆削り シャープナー 300-1

「・・・・・」

正直なところ振動は私の手には感じられなかった。むしろ私が感じたのはひっかかりがなくスムーズにスルスルと削れていく感触だった。一番大切なのは、美しく削れること。そのための手段としての振動である。振動が前面に出てくる必要はないのである。

ちなみに、鉛筆をさし込む穴をよく見てみると、こまかなヘアライン加工の線が幾重にもある。これも鉛筆がスムーズに回せるようにするためだという。

KUM 鉛筆削り シャープナー 300-1

削り仕上げは、芯も短めで少々ずんぐりとしたフォルム。日本の鉛筆削りで削った細く尖った芯先とは趣がかなり違う。欧米ではアルファベット文化なので、そもそもあまり細く尖らせる必要がないのだろう。ヨーロッパの文具店にいくと鉛筆は削られた状態で売っているが、まさにその鉛筆の芯先のフォルムだ。

KUM 鉛筆削り シャープナー 300-1

私たち日本人がこの芯先で書くと、結構すぐに芯が丸くなってしまうので、頻繁に削らなくてはならない。まぁそれも考えようによっては、あのスムーズな削り心地が味わえると思えば楽しいではないか。

KUM 鉛筆削り シャープナー 300-1

* KUM 鉛筆削り 300−1は、品番が「KM6」(300円+Tax)に変わりました。

関連リンク
■「鉛筆を自分好みに削る」肥後守
■「鉛筆の個性」トンボ鉛筆 MONO100
■「空気も切れそう」アドラー 洋鋏 285-5