文具で楽しいひととき
■ 「『太』は『細』を兼ねるペンシル」  ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル 6,000円+Tax


 


□食わず嫌いというものは誰しもある。

 食べもしないのに、
 自分の口にあいそうにないと
 勝手に思いこんで、
 なんとなく食べないというもの。

 私の場合は柿。

 たぶん生まれてから
 ほとんど食べたことはないと思う。

 果物なのか野菜なのか、
 微妙な感じがして
 食べる機会を失い続け今に至っている。

 ペンにも「書かず嫌い」というのもある。

 これもちょっと私に合いそうもないだろうと
 なんとなく敬遠し続けているペン。

 私の場合
 ラミーのスクリブル3.15mm 芯が
 それにあたる。


 


 どうだ参ったか!というくらいに太い
 3.15mm 芯に
 私は怖じ気づいてしまっていた。

 ラミーらしいデザインには
 惹かれるものの、
 その太い芯を使いこなせる自信がなかった。

 私の中には
 「太い芯=太い筆跡」という
 確固たる公式がある。

 しかし、
 とある文具ユーザー会(文房具朝食会)で
 このラミー スクリブル 3.15mm を使ってる人がいて、
 ものは試しと書かせていただいた。

 すると、
 これはいいじゃないか…、
 すごくいいじゃないか、
 私にも十分使いこなせそうだと、
 手の平をクルリと返して気に入ってしまった。

 ということで、
 今回はラミー スクリブル3.15mm ペンシルのお話。


□スクリブルは0.7mm シャープペンを、
 私はかねてより愛用している。


 


 同じスクリブル兄弟でありながら、
 この3.15mm はいろんな意味で別物。

 もちろんベースとなるものは同じだが、
 細かな点で大きく違っている。

 まずボディデザインで目を引くのは、
 クルリと3ヶ所、
 ボディがそぎ落とされているところ。


 


 まるでナイフでも使って
 スパッとカットしたような
 削ぎたてホヤホヤ感がある。

 この「スパッとカット」、
 なぜ3.15mmタイプだけにあって、
 0.7mmにはないのだろうと
 以前から不思議だった。

 このことは
 後でわかることになる。

 ノックボタンはすり鉢状に優しく凹んでいて
 そこに親指を添えて押し込む。


  


 すると
 獲物でも捕らえようとするかの様に、
 ペン先が前に飛び出しつつ
 口がグワッと大きく広がる。


  


 その中央から3.15mm の芯が
 スルスルと出てくる。


 


 シャープペンの様にカチカチと出てくるのではなく、
 一気にスルリと出てきてしまうので注意が必要だ。

 おっっとっと、、
 と親指を添えて芯を止める。


 


 頃合いのいいところで
 芯を固定する訳だが、
 どこらへんにすべきか悩むところだ。

 短め、長めと色々と試してみたが、
 私の場合は芯を6mmくらい出したあたりが
 ベストポジションだった。


 


 このくらいに芯を出し
 ペン先を眺めてみると、
 ペン先から芯先へとつながるラインが
 ほぼ一本の線でビシッと結ばれる。

 つまり、
 見た目が美しく、
 見ていてバランスがいい。

 書いている時は、
 このペン先の部分が常に視界に入ってくる。


 


 心地よい眺めで
 気分がよくなり、
 それによって
 心地よい文字を生み出され、
 ひいてはいいアウトプットが作り出される、
 そんな効果があると
 私は信じている。


□次に
 この3.15mm 芯を書いてみよう。

 自分の中にある「ペンモード」を
 3.15mm 芯モードに
 カチカチと、まぁここらへんだろうと切り換える。

 そして、
 紙の上に芯先を滑らせる。

 私としては
 太い3.15mm 芯モードのはずなのに、
 出来上がっていく筆跡は
 それよりもずっと細い。

 まるで
 2mm芯のふつうの鉛筆で書いているようだ。


 


 このラミー スクリブルに搭載されている
 3.15mm 芯は
 硬度は4B となっている。

 なのに、
 濃さも書いた時のタッチも
 4Bらしくない。

 感覚的には
 HB くらいだろうか。

 つまり、
 普通に使えるというペンなのである。

 太い芯先から
 思っていたよりも細い筆跡が
 生み出されるというのは
 書いていてちょっと落ち着かない。

 私の中の「ペンモード」も
 どうしていいかわからず困ってしまっている。

 ただ、
 しばらくすると、
 これはこれで普通に書けていいじゃないか、
 難しく考えることはないと、
 しだいに思うようになってくる。

 しかも、
 このやや硬めの太い芯は
 芸達者な一面も併せ持っている。

 たとえば、
 より細い筆跡にしたい場合は
 グリップの先端を握って
 ペン先をやや立てて書けばいい。

 ふつうのポジションでは
 中字くらいが書け、
 7〜8mmの極太の筆跡にしたいなら
 軸の中央あたりを握って
 思いっきりペンを寝かせる。


  

 


 この様に
 グリップの位置、そして
 芯の寝かせ具合を変えることで
 一本で細字から中字、太字、
 さらには極太まで書ける、
 実は多機能ペンでもあったのだ。

 もちろん
 鉛筆でも同じようにできるが、
 3.15mmの硬めの芯というのが
 より表現力を豊かにしてくれる。


 

 


 私のベストポジションは、
 カットされた部分のややペン先側を
 握るというものだ。


 

 


 そもそもこの独特なグリップは、
 あくまでフラットになっているだけ。

 つまり、
 ラミー サファリの様に深く凹んでいる訳ではない。

 これにより
 グリップのいろんなところが自由に握れ、
 微調整が効きやすい。

 スクリブル3.15mm芯タイプにだけ
 この「スパッとカット」があるのは、
 この太い芯を操りやすくするためなのだろう。


□硬めの芯とは言っても
 芯先はずっと同じ向きで書いていると
 片側だけ減ってしまうので、
 さながら「人力クルトガ」の様に
 自ら軸を回転させてあげる必要がある。

 この時に
 クリップが邪魔になると思いきや
 そうでもなかった。

 そのため
 スクリブルはクリップを
 とり外せるようになっている。

 しかし、
 私の握り方でいくと
 特にクリップをはずす必要は感じなかった。

 はじめはクリップを
 上向きにして書く。

 次に
 グリップをひとカット分だけ回転させる。

 すると
 うまい具合に
 ひと差し指のつけ根にクリップが接する。


 


 クリップの先端は
 緩やかにカーブを描いていて、
 そのカーブが人差し指のつけ根に
 ピッタリと優しくフィットしてくれる。

 さらに
 回転させると
 今度はクリップが完全に下側を向く。


 


 この繰り返しなので、
 クリップは意外と邪魔にならない。

 ただ芯先については、
 いずれは丸くなっていってしまう。


 


 つまり
 芯を削らなくてはならない。

 このスクリブルには
 芯研器は付属されていない

 実は昨年ドイツに出張した時に、
 「ラミーABC」用の芯研器を偶然買っておいた。


  


 これがうまい具合に
 このラミー スクリブル3.15mmにも使える。

 スクリブルの芯を少し長めに繰り出し、
 サイコロ状の芯研器にさして
 クルクルと回していくと削れていく。


 


 このラミー スクリブルの場合は、
 あまりキリリと尖らせず7〜8割くらいで
 とどめておくのが合っている。


 


□そうそう
 このスクリブル3.15mm は
 ノックボタンが外れない。

 つまり、
 消しゴムは付属されていない。

 「スクリブル」とは
 「落書き」という意味だ。

 落書きは
 消したりしないということなのだろう。

 書かず嫌いだったラミー スクリブル3.15mm 、
 すっかりお気に入りのペンになってしまった。

 この勢いで
 食べず嫌いだった「柿」にも
 チャレンジしてみようかなぁとも思っている。



(2013年1月8日作成)





■記事作成後記

 ラミーにはこのスクリブル用の替え芯も
 別途販売されています。

 太い芯のため
 1ケースに3本しか入っていません。


 



 ■ ラミー スクリブル ペンシル 3.15mmは、こちらで販売されています。


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