文具で楽しいひととき
■ 遅ればせの ISOT 2010 レポート!


  


□今年も7月の第2週に ISOT 国際文具・紙製品展が開催された。

 私は初日七夕の日に丸1日かけて取材をしてきた。

 展示会場がオープンするのは、朝10時。
 私がまず訪れたのは、プレスルーム。

 ここで「プレスバッジ」そして「報道」と大きく印刷された腕章を
 受け取らねばならない。

 腕章なので、正式には腕にグルリと巻き付けるものなのだが、
 ちょっと気恥ずかしいので、
 持っていた鞄の取っ手に巻き付けた。

 これがないことには
 会場での撮影ができないので、
 私にとっては必須アイテム。。

 ふと、
 プレスルームを見ると、
 そこはまるで夜逃げの直後のように
 もぬけのから。

 いつもなら、知り合いのプレスの人たちが
 一人か二人くらいはいて、
 世間話をするのだが、誰もいなかった。

 プレスの人たちは早速取材活動をしているのだろう。

 私も遅れをとってはいけないので、
 すぐにプレスルームをあとにした。

 予めISOT取材準備として
 愛用の取材手帳
 (MOLESKINE ソフトカバー+オーセンティクス ペンクリップ+プレスマン)
 に縮小コピーした会場図面を貼ってある。


  


 そこには予めチェックしておいたブースが赤鉛筆でマークしてある。


  


 それに従い早速回ってみることにした。

 ところで、
 私のこのISOTレポートを楽しみにしている、という
 嬉しいお声を結構いただくようになった。

 以前と違いISOTが平日開催となったので
 一般のユーザーの方にとっては、
 なかなか来場できないという事情があるからだろう。

 それから、ちょっと意外なところでは
 文具メーカー、しかもISOTに出展している方からも
 楽しみにしているというお話をいただくこともある。

 それは、自分のところが紹介されるということではなく、
 むしろ、別な会社のレポート。

 と言うのも、
 ISOTに出展している方々は、
 会期中は自分のブースでの活動で手一杯で
 なかなか他のブースまで見ることができないという理由があるからだそうだ。

 そうした方々のご期待にお応えすべく
 私が気になったブースのレポートをお届けしたいと思う。


 今回のレポートもいつもの様に長編になっていますので、
 どうぞ休み休みご覧くださいませ。


■ 「万年筆の弱点を克服」 プラチナ萬年筆


  


 すでに発売が開始されているが、
 その詳しい説明を改めて今回お聞きし、
 なるほど、これはすごいと感心してしまった万年筆「プレジール」(1,050円)。


  


 これは1年間キャップを閉めたまま放置しておき、
 1年後にキャップを外して書き始めても
 インクが中で固まることなく、サラサラと書けるというスグレモノ。

 年末に年賀状書くときに、
 引き出しの奥から一年ぶりに万年筆を発掘し、
 さて、書き始めるとインクが出ない…。

 そんな経験をしたことは誰しも一度や2度あると思う。

 プラチナ萬年筆では、
 こうしたことが万年筆離れに繋がっていたのではと考え、
 この「プレジール」 を発売した。

 そのインクの渇きを防ぐ秘密は、
 キャップの構造に隠されている。

 キャップの中にはもう一つのインナーキャップがついている。

 これだけなら他の万年筆でも見かけるものだ。

 「プレジール」にはそのインナーキャップの奧側にバネが仕込まれていて、
 そのバネの力でインナーキャップを押して、
 常に密閉できるようになっている。

 ちょっと例えは悪いが、
 単にフタをかぶせるのではなく、
 漬け物石で上からガッチリとおさえているというイメージ。


  


 ここからはちょっと興味深い話。

 実は、このバネを使ったインナーキャップ機構は
 この「プレジール」 が最初ではない。

 210円万年筆の「プレピー」の時から使われているものだ。


  


 「プレピー」 発売当時は、
 1年間という期間にわたって
 インクがドライアップしないという検証も当然出来ていなかったので、
 その時点ではあえてパンフレットなどでは
 そのことをうたってはいなかった。


  


 プラチナ萬年筆で
 実際に検証をしてみると、
 1年間はインクが乾いてしまうことはなく、
 サラサラと書けるということがわかり、
 今回の「プレジール」発売となった。

 当然、「プレピー」でも1年間同じようにキャップをした状態であれば
 インクのドライアップは起きないという。

 つくづく、この210円の「プレピー」は
 優秀な万年筆であると思ってしまった。

 ちなみにプレジールは、「プレピー」 と同じペン先となっている。
 ボディは、軽量で傷が付きにくいアルマイト加工。


      

  


□万年筆関連で新商品がもう一つ。

 それが「万年筆インククリーナーセット」(1,260円)というもの。


  


 溶液とプラチナ萬年筆専用のスポイトがセットされている。

 使い方はコップ半分ぐらいに水を入れて
 そこに溶液を一袋分入れて混ぜる。

 まず、万年筆のペン先ユニットだけにし、
 後方にスポイトをセットし、
 ペン先を浸しシュポシュポとクリーニングする。

 汚れがひどい場合は、
 ペン先ユニットだけをさらに1昼夜浸して、
 再びシュポシュポすればいいという。

 通常使いの万年筆クリーニングはもちろん
 プラチナ萬年筆が発売している顔料インクにも良いという。

 ただし、この顔料インクの場合は
 インク入れて1週間以内であることが条件だという。


□万年筆以外で
 一つ待ってました!というペンが発表されていた。

 商品名は、「ダブル3アクションポケット」。


  


 「ダブル」と「3」が一緒になっていて、
 なにやら不思議なネーミングである。

 これは軸が伸び縮みするコンパクトなペン。


    


 この伸び縮みペンに多機能を搭載したというスグレモノ。

 しかも、しかもである。

 そこにはシャープペンもあるというのだから驚きだ。

 まず軸を引っ張る、
 そしてボディをツイストすると、
 黒ボールペン、赤ボールペンそして0.5mm シャープペンが繰り出されてくる。

 シャープペンにはノックが必要である。

 普通に考えれば伸ばしたものをノックしたら
 そのまま引っ込んでしまいそうだ。

 しかし今回のものは、
 そこがちゃんと出来ていて、
 シャープペンの時はボディが縮まずに
 しっかりとカチカチとノックできるようになっている。


  


 「多機能ペンのコンパクト化」が今後の市場で
 一つの流れになると個人的には考えていたので、
 まさに待ってました!というペンである。



■ 「価値あるカラーバリエーション」 トンボ鉛筆


 毎回 ISOT レポートで
 トンボ鉛筆ブースを紹介する際
 枕言葉のように、
 会場の銀座4丁目交差点にあると書いているが、
 今回もやはり同じ場所にトンボブースはあった。


  


 今回のトンボブースの中で
 個人的にちょっとワクワクしてしまったのが「エアプレス」の新色。


  


 「エアプレス」といえば、
 通常のボールペンリフィルを使いながらも
 ノックを押すことで内部が加圧され、
 上向き筆記も可能とするヘビーデューティなペンである。

 この「エアプレス」に3色の新色ボディが追加されていた。

 透明、フルブラック、ホワイトの3色。

 その中で何といってもスケルトンがいい。


  


 先程も触れたように「エアプレス」には
 リフィルの内部を加圧する特殊な機構が内蔵されている。

 今回、スケルトンになったことで、
 その様子がたっぷりと拝むことができる。

 これは大変に意味あるスケルトン化である。

 これまでの「エアプレス」ボディは
 全面エラストマーというフィット感のあるゴム状の素材が使われている。

 さすがにそのエラストマーで透明にはできないので、
 代わりに軟質樹脂というものが使われている。

 手にしてみると、
 なるほど普通のプラスチックよりもわずかに弾力性とマット感がある。

 そして、ブラックとホワイト。


    


 厳密には従来品にもブラックタイプはあった。

 しかし、今回のものはノックボタン、クリップ、ペン先にいたるまで
 すべて黒で統一されているのが特徴。

 今回のブラックは、まさにオールブラック。

 細かなこだわりとして、
 グリップの窓からわずかに見えるスプリングがレッドに塗装されている。


  


 これにはちょっとグッときてしまった。

 実はこのスプリングを塗装するというのは
 かなり手間のかかることらしい。

 スプリングは伸び縮みを繰り返す可動部分。

 その動きによって塗装がはがれてしまうというリスクが
 どうしても伴う。

 今回はその問題を晴れて解決し、
 あえてレッド塗装に踏み切ったという。

 ブラックボディホワイトボディから
 垣間見えるレッドスプリングはとても格好いい。


  * 「エアプレス」 新色 各 630円
    従来品と同価格なのがまた嬉しい。



■ 「これ以上、塊感のあるペンはない」 MUCU


  


 限りなくシンプルで無垢なダイアリーやノートなどを送り出している MUCU。

 その MUCUから
 もうこれ以上の無垢はないだろうというくらいのボールペンが発表されていた。

 無垢の鉄の棒から作られた油性ボールペン。


  


 素材は真鍮、鉄の2種類。

 軸の直径は8mm 。

 鉛筆が7mm 弱なので、ほぼ同じぐらいだ。

 聞くところによると、
 この8mm 径の棒は既存の材料として存在しているものらしい。

 それを活用して、今回のペンは作られている。

 MUCU のオーナーであり、デザイナーのK-DESIGN WORKS 榎本さんから
 その1本をちょっと持ってみてくださいと、手渡された。


  


 手にしてみると、無垢であることが瞬時にわかる
 ほどよい重量感がある。

 「ペン先を出してみてください」と榎本さん。

 私はこのボディの繋ぎ目を探してみた。

 まるでもともとの鉄の棒を渡されたようで、
 どこからペン先を出したらいいのかわからない。

 さらに目を近づけてようやく端の方に
 つなぎめらしきものが見えた。

 そこをねじるとキャップが外れる。


  

  


 実に見事な加工精度だ。

 あくまでもこの無垢なフォルムも大切にするため
 尻軸には特別な加工はなく、
 両端とも全く同じ作りになっている。

 従って、外したキャップは尻軸にはセット出来ない。


  


 程よいショートサイズボディて書いてみると、
 重さもうまく作用してなかなかの書き心地。

 それぞれの素材は使い込むほどに表面に味わいも出てくるという。

 受注生産で10月頃から販売される予定。


    

  


 * 真鍮タイプ 6,090円。鉄タイプ 6.090円。



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