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■「美しい細字を書きたい。」
 パイロット カスタム743 フォルカン
 31,500円





自分の持っている万年筆を改めて見てみると、明らかに一つの傾向があることに気づいた。

それは、ペン先がM (中字)やB (太字)ばかりだということ。ただ、MやBが多いということではない。

万年筆の価格が、30,000円以上するものに特にその傾向が顕著に表れている。

10,000円かそれより低価格の万年筆では、F (細字)やEF (極細)が多い。

自分で買っておきながらではあるが、これは一体どうしてだろうと、首をかしげてしまった。


自分が万年筆を買うときのことを思い返してみる。

例えば30,000円以上のものを買う時は、私の場合、店に行く前にあらかじめこのメーカーのこのタイプと決め込んでいる。

しかしこの段階では、ペン先の字幅までは決めていない。

店頭で色々なペン先を試し書きをさせてもらっていると、やはり、 MやB は書いていても気持ちがいい。

たっぷりとインクが出て紙の上をペン先かことの他スムーズに進んでいく。この気持ちよさにひかれてということがまずあるだろう。

いや、待てよ。
だとしたら、10,000円以下のものでもMやBにすべきではないか。

この価格帯では私は、そういった太字よりもむしろ、細字系を多く選んでいる。


実は今から申し上げる理由が、とても大きいと思う。

それはせっかく高い万年筆を買うなら、ペン先についているイリジウムも大きい方がいいという考え方。

私の中では「イリジウム=すごく高価な物質」と思い込んでる節があるようだ。

だから、高い万年筆を買うのに、イリジウムが小さい細字系を買ってしまうのは、なんともったいないと思ってしまうからなのだろう。

これは私の根っからの貧乏性によるものだ。

こう考えてみると、先程の傾向もなるほど合点がいく。


そんな中ある方から、細字の万年筆で書くと日本語が美しく書ける。しかも、しっかりとした太軸の方が、手の力がうまく抜けて、バランスがよいという話を伺ったことがある。

これは私はこれまで続けてきた万年筆購入と全く逆をいくものだ。

万年筆の太字だけしか味わっていないというのは、これはもう万年筆の楽しみの半分をみすみす投げ出してしまっているのでないだろうか。

そこで太軸の細字ペン先を持つ万年筆を1本持ってみることにした。


早速、行きつけのアサヒヤ文具店の店長萩原さんにメールで相談してみた。

すると萩原さんからは、思わぬペンをご提案いただいた。

それはパイロットの「ポスティング」というペン先だった。

以前このコラムでも紹介した「ウェーバリー」という特殊ペン先があったが、これもその仲間のひとつ。

「ウェーバリー」では、ペン先が緩やかに上をむいていたが、今回の「ポスティング」は、逆に下を向いている。

萩原さんによると、このポスティングは極細ペン先になっていて、筆圧をかけても、ペン先の切り割りが開きにくくなっている。

つまり、どんなに力をかけても、細い文字がしっかりと書けるらしい。

ウーン。。これはなかなか面白そうだ。


早速、そのポスティングとやらを試し書きせてもらうためにアサヒヤさんへと出かけて行った。

はやる気持ちを抑えて試し書き用の席につき、その「ポスティング」にご対面。

「はじめまして、」と私が心の中で言う前から先方の「ポスティング」はすでに優しくペン先がお辞儀をしている。





その「ポスティング」は今回の私の希望であるやや太軸のカスタム743についている。

それを手の中に収め、一回深呼吸をして心と手を落ち着かせてから、自分で持ってきた満寿屋の原稿用紙102の上で、ペン先を優しく走らせてみた。

極細独特のややカリカリとした感触が手に残る。筆跡は紛れもなく極細のそのそれだった。

こんどはやや筆圧をかけてみる。するとお辞儀したペンの先端側が気持ちよくしなる。





これはちょっと極細のペン先では味わったことない感触だった。

なるほど、確かにペン先の切り割りも開いたりしていない。

ウンウン。。こういうことかと納得し、ひたすら自分の名前と住所を書き続けてみる。


しばらく私を原稿用紙で自由に泳がせてくれていた萩原さんが、これはそれよりちょっと太い、細字ですが、と言って別の万年筆を差し出してくれた。

それが「フォルカン」だった。全く予期せぬ出会いだった。




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