
■「私の愛用原稿用紙」
満寿屋 原稿用紙
102 420円
私はコラムなどの原稿を書くときは、原稿用紙と万年筆と決めている。
こう言うと、
「え!パソコンじゃないの?」と多くの人に驚かれる。
特に雑誌社の編集者といった方々は目を丸くする。まるで電気を使わない生活をしている人でも見るようなまなざしで私のことを見る。
逆に編集の方が、原稿用紙を使わない事のほうが私には新鮮に感じたりするのだが。。
確かに最終的には手書き原稿をPCで入力するが、はじめは原稿用紙と万年筆という組み合わせにこだわっている。
その理由は、いつくかある。
せっかくお気に入りの万年筆を持っているのだから、その活躍の場として最高な舞台である原稿を書くというチャンスを逃してなるものか、というのがまず一つ。
それから、これは色んなところで言っていることなのだが、頭に浮かんだことを素早く紙に落とし込むには、キーボードを打つよりも、私の場合ペンと紙の方がいい。
なにしろ、ペンを握るようになって、私の場合でも、かれこれ30年以上も経っており、キーボードとは年季が全然違うのだ。
特にたくさんの文字をスムーズに筆圧も少なく書くには、万年筆ほど最適な筆記具はないと思っている。
というのが、私が万年筆と原稿用紙にこだわっている理由。
そして、今私が最も信頼を寄せているのが、満寿屋の原稿用紙である。
満寿屋と言えば、川端康成、三島由紀夫などそうそうたる文豪が愛した原稿用紙メーカー。
そうした文豪の方々は、自分好みのマス目の大きさや、罫線の色などを指定して特注してきた。
マス目などは、一般に400字詰めというイメージがあるが、300字や200字めなど色々なバリエーションがある。
そうした特注製作で培ったきたことを活かして、満寿屋には現在、定番として28種類もの原稿用紙が揃っている。
その中で、私が特に気に入っているのが「102」というタイプ。
サイズは、一般的な原稿用紙の半分にあたるB5サイズという小ぶりなもの。
そもそも、これは旅先でも原稿が書けるよう携帯性もいい原稿用紙が欲しいというある作家の要望から生まれたもの。
このサイズもさることながらこれがユニークなのは、ルビ用の罫線ががないこと。
一つ一つのマス目は横長の長方形をしている。
この形が障子の格子に似ていることから「障子マス」とも呼ばれている。
ルビ罫がないことで、ゆったりとしていて、心おおらかな気分で書けるのがよい。
原稿用紙は、
というよりも日本語は本来縦に書いていくものである。
多くの作家の生原稿を見てもどれも縦に書かれている。
しかし、しかしである。
私は横書きになってしまう。
と言うのも、学生時代からノートは横罫線ばかり、当然、その罫線に従って横書きばかりをしてきた。
原稿用紙といえども、いきなり縦に書いてみろ、と言われても手がなかなか言うことを聞いてくれない。
例えて言うなら、
これまでずっと横歩きしかしてこなかった蟹に「おい、まっすぐ歩いてみろ!」と言うようなものである。
きっと蟹は、つぶらな瞳に涙を浮かべてとまどってしまうことだろう。そんな蟹の気持ちが私には痛いほどよくわかる。
という訳で、邪道だが、この102に横書きをしている。
しかも一マスごとに一文字ずつ書き込むということもしない。横ラインだけを多少気にして、書くくらいだ。
頭に浮かんだものをすぐさま紙の上に落とし込んでいくことで精一杯なので、そこまで気が回らないというのが正直なところだ。
この旅先用原稿用紙サイズは、現代のデスク事情にも都合がいい。例えば、PCなどが置いてある机の上でも広げることができるし、ちょっと気分転換してスターバックスなどで仕事という時にも、場所をとらずに書けるのがいい。