文具で楽しいひととき
■ 「しゃべって文字を入力」   アドバンスト・メディア AmiVoice アミボイス Es2008  26,040円 


  


□私は、もはやこれなしでは
 日々の仕事が出来ない体になってしまった。

 今の仕事を大きく分けると
 文具メーカーのコンサルティング、
 そして、私が7年間ずっと続けている文具コラムを書くという仕事。

 その後者を進めていく上で
 この アミボイス がなければ
 きっと、今よりドタバタ、アタフタと、
 忙しい日々を送っていたに違いない。


□ひとくちに「文具コラム」を書くと言っても、
 実はいろいろな工程がある。

 まずは書くべき文具を選び、
 それを日々の生活で使い倒し、あーだ、こーだと
 独り言を言いながら、いろいろな角度から文具と相対する。

 そして、このあたりで
 おもむろに万年筆を手に取り原稿用紙に向かう。


  


 いきなりパソコンに向かえばいいのにと
 多くの方がきっと、そう思うことだろう。

 確かに書いたものをパソコンに再び打つのは二度手間である。

 しかし、私にとっては
 このせっかくの万年筆が使える機会を
 みすみす逃してなるものか、という想いがある。

 それから、こうした一見二度手間とも思えることを
 あえて行うことこそが
 大切なんだと最近常々感じている。

 どこかの本に書いてあったが、
 仕事というものは一つの大きな塊としてとらえるのではなく、
 できるだけ一つ一つに分解してあげると
 ぐっと敷居が下がって取り組みやすくなることがある。

 例えば、
 何かの企画を考えるというのも
 まずは、
  ・過去の実績を調べる、
  ・関連書籍・雑誌をリストアップする。
  ・それを買いに行く。
  ・それらをじっくりと見る。
  ・一人ブレストをする。
  ・ラフ案をリストアップする。
  ・社内でヒアリングしてみる。
 などといった具合に、
 細かく分解することで、
 そのひとつひとつは、すごく取っつきやすくなる。
 
 私の文具コラムで言えば、
 パソコンにいきなり向かってしまうと、
 「文章を考える」+「キーボードを打つ」という
 二つのことを同時に行わなくてはならなくなる。

 キーボードを打つのが得意な人ならきっと
 この二つをまとめても十分にこなせることだろう。
 つまり、意識をキーボードではなく、
 考えることだけに集中できる。

 しかし、私は、キーボードがあまり得意でないので、
 二つのことを一緒にやるという
 感じになってしまう。

 私のわずかな脳みそをそれぞれに分けて
 使うということになってしまう。

 当然、はかどりは悪くなる。

 一方、
 万年筆を手にして書くというのであれば、
 考えずともそれこそ無意識に万年筆を走らせることができるので、
 考えることだけに集中できる訳だ。


  


 書くときは、書く、
 そしてキーボードを打つ時は打つだけに
 集中特化したほうがいい。

 そして、書いた原稿をパソコンに打ち込む仕事を
 以前は黙々とやっていたのだが、
 だんだんと気の重くなる仕事になっていた。

 一度は、この打ち込む作業をアウトソーシングする事も
 真剣に考えたこともあった。

 しかし、これは無理だとすぐにあきらめざるを得なかった。

 というのも、私の草稿は家族でも読めない代物。

 たまに私自身でも、一体これはなんて書いてあるのだろうと、
 首をかしげてしまうこともあったりする。

 そんな時に、
 勝間和代さんの何かの本で、
 ご本人は音声入力をしていると紹介されていた。

 しらべてみると価格も3万円くらいであるということがわかった。

 そうか、この手があったかと
 いつものように善は急げと走ってヨドバシカメラに向かった。

 以来、愛用しているのがこのアミボイス。
 ちなみに、勝間さんが使っているのは、別のメーカーのもの。


  


□ところで音声入力って本当に使えるの?
 と思われるかもしれない。

 かくいう私も当初はかなり懐疑的だった。

 しかし、使ってみると完璧とまではいかないが、
 かなりの実用レベルにはあるということがわかった。

 使い方は、
 まず専用ソフトをパソコンにインストールし、
 アミボイスを起動する。

 そして、付属のインカムマイクを頭にセットし、
 あとは話すだけで OK 。

 気分は、なんだかコールセンターの人になったような感じだ。


  
  〔ソフトをインストールするとデスクトップに表示されるアイコン。
   使うときは、これをクリックする。〕


 聞くところによれば、
 以前のものは初めに自分の声の登録が
 必要なものもあったという。

 このアミボイスでは、そうしたことは不要。
 基本すぐに使い始めることができる。

 しかも、
 使えば使うほど、アミボイス側が私の声をどんどんと学習していってくれる。


  
           〔これが、アミボイスのツールバー〕
 

□実際に、やりはじめてみるとわかるが、
 誰に話しかけるでもなく、一人でパソコンの画面に向かって
 話すというのは、かなり勇気がいるものだ。

 私の場合あらかじめ書いておいた草稿があったので
 どうにか話すことができた。

 そうは言っても、
 ご存じのように私の文具コラムは、
 「心のつぶやき。。」や、
 「私はすっかり『貼る貼る人間』と化し、
 他のものでも貼ってみたくなってしまった。」など、
 たとえ家族と言えども
 あまり聞かせたくないものだ。

 なので、誰もいなくなったところで
 一人こっそりと、それでいてハキハキとパソコンに向かって
 しゃべっている。

 という訳で、
 インカムマイクをセットして話すのには
 少々の場数が必要かも知れない。


□インカムマイクに向かってしゃべりはじめると、
 1秒ぐらい間をおいて、
 メモ帳のようなソフトが自動でパソコン上に立ち上がり、
 私のしゃべった言葉が次々と文字に変換されていく。

 これが実に気持ちいい。

 うっかり「あ!間違えた」と言おうものなら、
 それまでしっかりと認識してしまうほどだ。

 これには驚く。

 一つ一つの単語を区切ってしゃべるよりも
 一つの文章を一気に読み上げた方が認識率は高まる。

 さすがに文具メーカー名や商品名等の固有名詞は
 誤変換されることがあるが、それ以外は概ね認識されていく。

 ちなみによく使う固有名詞は別途登録することも可能。

 私が感じたところでは認識としては70〜80%くらいといったところ。
 実際にこの原稿ももちろん アミボイス で音声入力している。


  


 ちなみに誤変換されたものは アミボイス ソフト上であれば、
 マウスでその文字をかざすと他の変換候補を示してくれる。

 さらに、ちなみに
 このメーカーさんであるアドバンストメディア社は
 音声入力技術の専門の会社で、
 コールセンターや会議の議事録、医療現場の電子カルテなど
 様々な分野で使われてきた音声入力技術を持っている。

 このアミボイスEs2008でも、それがベースとなっている。

 認識率が高いのも頷ける話しだ。


□しゃべるだけで文字がどんどんテキスト化されていくのだから、
 私のようなあまりキータッチが得意でない人間には、夢のような話である。

 汚い原稿をにらめっこしながらキーを打つよりも、
 話すだけなので、作業時間も半分以下にはなったと思う。

 効果は時間短縮だけではなかった。

 声に出して読むというのが思いのほかよかった。

 どういうことかというと、
 草稿を書いてるときには気づかなかった表現が
 声に出して読むことであらわになってくるのだ。

 ちょっとおかしいという表現も文字を書くときは、
 それほど気にならないが、
 いざ声に出して読んでみると、とても違和感がでてくる。

 それを草稿を読みながら修正できるのは、
 音声入力ならではのメリットだ。

 また、
 キーボードから解放されたことで、
 肩凝りも幾分和らいだ気がする。


□ただ気になる点もなくはない。

 ただ読むだけと申し上げたが、
 唯一違うのは文字を改行するときには、「改行!」
 とハキハキとした口調で言わなくてはならない。

 私の文具コラムは、ほぼ一文一文ごとに改行されているので、
 適宜「改行」と元気よく言わなくてはならない。

 これがやや煩わしい。

 最近は右手をキーボードの「エンターキー」に予め添えて
 ここだけはキーを打つというスタイルとっている。

 また、句読点の「。」や「、」についても同じだ。

 基本は、アミボイス側で適宜、
 句読点を入れてくれる。

 これはどうやら読み上げる際の文と文の空き具合等から、
 自動判別しているようだ。

 たまに入るべきところに入らない時などは
 みずからが「マル!」、「テン!」と、やはり言わなくてはならない。

 そして、
 この音声入力作業は周りが静かな空間で
 一人で行わなければならないということもある。


□とまぁ、冒頭で申し上げたように
 完璧とは言えないがかなり実用的に使えるレベルになっている。

 万年筆は書けば書き込むほどにペン先が馴染んでいくように、
 このアミボイスもよく使う固有名詞を登録していたり
 学習機能が向上して行き、どんどんと使いやすくなっていく。

 これも一つ文具の仲間入りをさせてあげてもいいのではないだろうか。


(2010年2月9日作成)



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